4月も2日になってようやくソメイヨシノが3分咲き、世田谷美術館の『花森安治の仕事』もあと残り少なく会期が9日までになりました。美術館催事としてはやや異色といえるかもしれませんが、いい展覧会でした。
NHKの朝ドラ「とと姉ちゃん」が評判でしたが、たしかに、テレビでは、あの『暮らしの手帖』の花森安治のマルチな仕事を紹介するわけにはいきませんでした。写真・イラスト・文章・エディトリアル・ファッションありとあらゆる領域で編集長として腕をふるった彼の仕事ぷりに≪デザインする手、編集長の眼≫なるサブタイトルがつけられているのも納得でした。
『暮らしの手帖』の描きだす世界が戦中・戦後の日本人の手近な願望や憧憬と重なったこともあってかとくに高年齢の方々が興味深く観ておられるようでした。会場では時間的制約があるので、花森の仕事をじっくり見ようというのか、会場で売られてい。る「図録」に手を伸ばす人も多いようでした。
しかし、私にはひとつだけ不満が残りました、花森安治ほど印刷を愛し、印刷を知ろうとし、印刷を試した人はいないと思います。今度の展覧会で印刷をテーマにしたコーナーはありませんでしたし、図録でも安治と印刷を論じたページはありませんでした。暮らしの手帖と親戚づきあいをさせてもらってていたDNPに身をおいていたひとりとして寂しい思いです。