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活版印刷紀行

いまはほとんど姿を消した「活版印刷」ゆかりの地をゆっくり探訪したり、印刷がらみの話題を提供します。

アズレージョに描かれた天正少年使節

2011-08-30 12:21:10 | 活版印刷のふるさと紀行


 ポルトガルの絵タイル「アズレージョ」はご存知だと思います。
 
 神田川大曲塾で講演していただいた小佐々 学さんから送っていただいた
『大村史談第59号』の抜刷を拝見してのことです。
 ここにご紹介するアズレージョはポルトガルの旧ペニャロンガ修道院の庭
から見つかったもので、一部が剥落して粘土が露出していますが、よく見る
と、右の方、海に浮かんだ船の甲板に4人の人の上半身が認められます。

 なんと、この4人が伊東マンショ・千々石ミゲル・原マルチノ・中浦ジュ
リアン、天正遣欧使節だというのです。ジュリアンの子孫であられる小佐々
さんとしてはこのアズレージョ発見がどんなにうれしかったこでしょうか。

 ペニャロンガ修道院はリスボン郊外、シントラの近くにあって、14世紀
に建てられ、16世紀になって造営された庭園を囲む塀にこのアズレージョ
飾られていたらしいというのが小佐々さんの想像で実際には4人の旅を何枚か
で表現するれんさくではなかったかと。賛成です。

 このアズレージョは縦14センチ、横28センチで横に2枚並んでいます。
絵柄の人物が4人、ハイカラーの南蛮服ではなく、いかにも着物ふう、十字架
をかけていること、さらには 使節一行が現在はシーザーパークホテルになっ
ているこの地に宿泊していること、さらに当時、彼らが滞在中世話になったで
あろうレイ・エンリケ枢機卿の庭園だったから鑑定は正しいと思われます。


 話は飛びますが、ポルトガルのアズレージョには私も惹かれます。アズレー
ジョの美しさで評判の宮殿、駅などを訪ね歩きました。紹介写真の大小が逆に
なりましたが、大きい方は私がシントラで買い求めたお土産絵タイルです。
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電子書籍のこと 4

2011-08-29 13:38:21 | 活版印刷のふるさと紀行
 早稲田学報の特集紹介の続きですが、津野海太郎さんはいつもの主張
通り生まれたばかりの未熟な電子本がこの先どんどん力をつけて行っても
印刷本は消えることはないと力説してます。5千年の歴史のある書物史
が二分されただけであると冷静です。

 すでに19年間電子出版に携わってきた荻野正昭さんは本を時間・空間
を超えた記憶装置とするならばという仮定から、独自の電子出版哲学を論
じておられて興味深く思いました。

 また、三田誠広さんは書き手の立場から電子書籍の著作権とか印税とか
身近な懸念をとりあげておられましたが、一方で、日本語の場合の「漢字
」の問題にも触れておられる点、さすが表現者と感じました。

 いずれにしても競合説を打ち出されている人がいなかったのは何よりの感
がありますが、実際に自分がiPadで本を読んでみていちばん感じるのは充電
の面倒さです。本体はもちろん、ポケットWiFiもありますから、旅行のときも
充電用のコードを持ち歩かねばなりません。たしかに文庫本をポケットにしの
ばせて出かける手軽さは無理です。

 とにかく、iPadに限らず、いまは充電に追われる毎日ですから。携帯を
筆頭にデジカメ、掃除機つねに気を配らねばならないのですから。
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電子書籍のこと 3

2011-08-29 09:36:37 | 活版印刷のふるさと紀行
 昨年、2010年を「電子書籍元年」とするのが常識だそうです。
iPhoneがひっぱりだこになり、iPadのデビュー、海の向こうではア
マゾンドッドコムのキンドルの台頭、グーグルの世界図書館計画など
がその証左とされています。

 私自身の体験からいえば、もう10年以上前、NECやソニーが読
書用の端末を出したときが「元年」だったと思うのですが。

 それはともかく電子書籍が売れ始め、出版社がつぎつぎに電子本出
版に乗り出しているのは事実です。そうすると私が大事にしている活
版印>刷どころか「印刷本」の存在がどうなるのか気になります。

 最近では大学の校友会誌までその問題をとりあげています。早稲田大
学の『早稲田学報』6月号がそれです。特集タイトルは「本の未来、読書
の形」でした。青山 南・永江 朗・小峰紀雄氏の座談会も津野梅太郎・
荻野正飯島昇蔵・三田誠広三氏の電子書籍論も大変興味深いものでした。

 乱暴に紹介しますと青山教授のメキシコではそこいらじゅうにWi-Fi
が飛んでいて喫茶店やレストランで誰でも自由に利用できるという電子
環境の進んでいる話、永江教授の電子書籍のノンブル運命論、そういえば
電子本ではノンブルが消えています。また、小峰さんの出版社社長らしい
「版元の基本は紙でしっかりしたものを作り、読んでもらって、読者を育
んでいく観点が大事。印刷本を選ぶか、電子本を選ぶか、最後に選ぶのは
読者というのが印象的でした。(この項続く)

 
http://blog.goo.ne.jp/admin/editentry?eid=2ad8e5191da390fe647d9c03a758bd00#
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電子書籍のこと 2

2011-08-28 11:56:32 | 活版印刷のふるさと紀行
 DNP,大日本印刷の北島義俊社長の意見はこうでした。
《ニューメディアに対して私は従来の紙への印刷を伝統的メディアあ
るいは基本的メディアと呼ぶべきだと思う。
 ベーシックメディアとニューメディアは対立、競合するメディアで
はなく、印刷情報のもつ高品質性、経済性、利便性、一般性、広域性
などと、ニューメディアのもつ即時性、双方向性とはお互いに、代替、
補完、相乗という3つの機能を持つ》

 《だから、われわれ印刷会社は長く携わってきた情報処理技術、情
報加工技術をデジタル化やエレクトロニクス化に活かして世の中に貢
献していくべきだ》というのでした。
 その後香港での世界印刷会議やNHKテレビの経営番組でも繰り返
して述べられましたが、最近、大日本印刷が丸善やNTTドコモとハ
イブリッド型書店サービスとしてhontoを立ち上げたのもその延長線で
ありましょう。
  
 凸版印刷も電子出版を取り扱うデジタルコンテンツソリューション
センターを立ち上げています。両社に限らずこの7月の東京国際ブック
フェアや国際電子出版EXPOで印刷各社のデジタルコンテンツビジネ
スへの積極的な取り組みにいまさらながら驚かされました。

 私は実際にタブレット端末を使ってみて、その可読性の豊かさには
感心しています。まだ、キンドルは試していませんが。
 それにしても、北島社長の代替・補完・相乗という控え目な狙いから
30年経った今日、印刷技術がどの程度ネットやデジタルの世界に踏み
込めるのか出版社や多領域のクライアントとのビジネス領域をどうする
のか、下手をすると印刷会社がふたたび、フォントの提供、開発やアプ
リ加工やインストール処理のような下請け、あるいは中間業務引き受け
の「黒子」にさせられてしまいそうな不安を拭いさるわけにいきません。

 
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電子書籍のこと 1

2011-08-28 05:34:23 | 活版印刷のふるさと紀行
 8月最後の残暑の日曜日です。
 昨晩は隅田川花火の日でしたが、例年より盛り上がりがいささか足りなか
ったような気がしました。
 もっとも春海橋という遠くから眺めているだけですから、上空を飛び回っ
ているヘリコプターの方が気になりました。しかし、大会特有の花火の音と色、
(匂いは無理ですが)あの、空気感だけは伝わってきました。

 このところipad2にハマっています。
 とはいうものの、その機能の十分の一も享受しているわけではありません。
電子書籍実体験が目的ですし、正直、「操縦自由」といかないのです。

 それにしても紙の印刷が縮小カーブを切りはじめたのが1996年でしたか
らやがて15年になります。
「なにが電子書籍元年だ」と反発を感じながらiPhoneやiPadのような高機能端
末の出現、普及を見ると「印刷よ何処へ行く」とだんだん気がかりにならざる
を得ません。

 あれは、1984年でした。イタリアのベネッツアで開催されたコンプリント
国際会議で大日本印刷の北島義俊社長が印刷とこれから台頭してくるであろう新
しいメディアについて論じたことがありました。
 かれこれ20年前になりますが、当時の予測としてはかなり大胆な発言でした
が私はよく今日を想定していた意見だったと思います。その内容については次回
、記憶している範囲でご紹介しましょう。

 隅田川花火を見終わって帰宅したらBSで秋田大曲から花火の全国大会を中継
していました。こちらはカブりつきです。
思わず「花火大会の電子版か」とひとりごと。



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50年で、せっかくの活版印刷が消えていた

2011-08-25 11:10:28 | 活版印刷のふるさと紀行
 原城から見る島原湾の風光は何度訪ねても、つい、見入ってしまいます。
有馬晴信が失脚以前、少年のころから日野江城からわずか3キロしか離れ
ていない原城やこの海をを眺めていたといいます。原城築城を思いついたは
祖父の清純でした。文献には原城と日野江城の間全長2キロの朱塗りの橋が
あったといいますが、それがどこであったかは確認できません。

 島原の乱のときは廃城になっていましたが、原城は築城技術の面から見て
もなかなかのものだったといいます。本丸正面の水路には、当時、貴重だっ
た瓦が敷き詰められていましたし、発掘された中に景徳鎮の染付陶磁器など
がたくさんあったといいます。有馬の黄金時代はたいしたものでした。

 1590年、天正18年に少年使節たちが帰国したときは、禁教下には
ありましたが、まだ、晴信は健在でした。使節たちが持ち帰った印刷技術を
はじめ、西欧の知識や技術は秀吉の手前、遠慮しいしいですが、いったんは
島原半島で花開いたのです。

 1549年のザビエルの来日以来1645年ごろ日本在住の最後の神父が
殉教した約100年間をキリシタンの世紀と呼ぶ人がいます。島原の乱は
1637年ですからかろうじてその中に入りますが、12万余の幕府軍の投
入によって島原半島からは一切の南蛮文化が殲滅させられたといってよいと
思います。キリシタンの世紀はここが終点ではないでしょうか。

 原城に立て籠もった一揆のキリシタンのなかに、印刷されたキリシタン版
の持ち主はいなかったでしょうし、彼らが集まって祈祷するときに手にして
いたのはおそらく隠れキリシタン独特の祈祷文を手書きした紙切れだったと
思います。すぐお隣の加津佐で活版印刷がはじめて日の目を見てから、わず
か50年のあいだにこんな状態になってしまっていたのです。
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ドン・ミゲルが実の親とは

2011-08-22 09:35:43 | 活版印刷のふるさと紀行
 はじめて原城址をたずねたとき私がいちばん興味ぶかく見たのは
本丸跡の脇にあった空堀でした。
 おそらく乱後に女、子供もふくむ何百、何千という死体が投げ込まれ、
積み上げられたに違いない穴の一部でありましょう。そばに、幾体かの
地蔵尊がまつられていて、ススキの穂が風に揺れていました。

 キリシタンとお地蔵さんの取り合わせは不思議ではありましたが、そ
こはかとなく無常観がただよっているような雰囲気でした。
 ここでごと籠城して殺されていった一揆の人たちは何を考え、ど
のようにして死んで行ったのでしょうか。

 関ヶ原から40年、世の中は戦国時代とは打って変わって落ち着いて
いたはずではありますが、島原・天草の領民たちは松倉重政・勝家親子
二代の悪政に加えて飢饉や凶作で誰しも生きる望みを失って、死ぬか、
一揆に加わるか選択をせまられて立ち上がざるを得なかった。だから、
ただただ腹いっぱい食べたいと願い、棄教した農民たちは立ち返れば
(再度の入信をはたせば)救われるのではと思い続けているだけでは
なかったでしょうか。

 『幻日』は虚構を虚構と感じさせずに読者を引っ張っていきます。
天草四郎が千々石ミゲルとポルトガル人の娼婦イザベルの間に長崎で生
まれ、小西行長の家臣、大矢野島の益田甚兵衛に養子に入ったとし、
天草全島民の統領として天草四郎を名乗ることになった経緯も明らかに
されています。
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天草切支丹会館のこと

2011-08-22 05:19:00 | 活版印刷のふるさと紀行
 天草四郎の銅像はあちこちにあります。
島原の乱の原城址はもちろんのこと、四郎の生地とされている大矢野
町に2基、松島町パールセンター、それに鬼池港のフェリー乗り場にも
あります。
 
 写真の四郎像は本渡市にある天草切支丹会館にあります。原城の白っ
ぽい像はヤサオトコふう過ぎる気がしますので、凛々しさの点でで私は
こちらの方が好きです。

 さて、この天草切支丹会館は「殉教公園」の高台にありますが、天草
ととくに縁の深いルイス・アルメイダの記念像を見て緑の中を登って行
きますと、真っ白い十字架に赤い屋根の姿を見せてくれます。

 島原の乱や天草四郎に興味のある方にはぜひ足を運んでいただきた
いと思います。乱ゆかりの「天草四郎陣中旗」や血痕の残る聖旗、慶長
年代のマリヤ像のメダイ、十字架、ロザリオ、切支丹脇差などの展示で
往時が想像できます。

 また、ビデオコナーなどでキリシタンの歴史を視覚的にも理解しやい
し、館入り口で参考図書などの購入もできます。たしか、熊本空港から
直行バスもありました。
 神田川大曲塾の研修旅行もここをスタート地点にしてつぎに原城を訪
ねました。
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島原の乱と天草四郎時貞

2011-08-20 15:33:26 | 活版印刷のふるさと紀行
 市川森一さんの『幻日』は島原の乱が舞台で、天草四郎時貞が主人公として
登場します。その天草四郎が千々石ミゲルの息子という設定になっていると聞
いた以上、『千々石ミゲル』を書いている私としては読まないわけにはいきません。

 そうはいっても、意外に読み進むのがこわいのです。
 四郎ミゲルの子息説は、初見ではありません。いままで何度も参考文献の上で
目にしました。おそらくイエズス会の宣教師のヨタ話でありましょう。

 それを作家であり、脚本家であられる市川森一さんがどのように料理されてい
るかは興味ぶかいのですが、ちょうど有段者の前に引っ張り出されて恐る恐る
竹刀を構えたときのように、踏み込むことがこわいのでありました。

 ですから遠回りします。
 島原の乱の原城には何度も足を運びました。といっても最後が神田川大曲塾の
島原・天草研修旅行でしたからかれこれ五年ほど前までしょうか。原城の崩れた
石垣の向こうに島原湾がひろがっていて、うしろは雲仙岳、この今はのどかな地で
血で血を洗う壮絶な戦いが一揆軍と幕府軍との間で交わされたとはにわかに信じ
がたい気がしました。
 写真は本丸の櫓台跡だといいますが、1992年からの発掘調査で人骨や鉛弾
で作った十字架や一揆軍のなかにいたキリシタンのメダイ・ロザリオも出てきて
おります。


 
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盆休みを終えて電子本に挑戦

2011-08-18 15:10:21 | 活版印刷のふるさと紀行
 テレビが空港で海外から帰国した人々を映す、新幹線から吐き出される
乗客を追う、深夜の高速で渋滞する車列のライトを浮かび上がらせる。毎
年のことながら、「ホホウ」とつい、見入ってしまいます。


 そして、どの組にも入らず、うかうかと盆休みを過ごした自分がなぜか
「甲斐性なし」のきわみみたいに思えてくるのです。

 やや、弁解ですが、それでも、2つだけ未完のワークをしたのです。
1つは先日求めたiPad2にわが著作『ドラードの生涯』をダウンロードしま
した。というと、いかにもスムーズにやったように響きますがトンデモナイ。
一大苦労をしました。

 インターネットの設定は購入した電器店でやってもらってあったので、
良かったのですがメールの設定を片づけねばなりません。
そしてアップルのIDを取得して、それからhonto Bookからダウンロード
するというプロセスを辿ったわけですが、自分のプロバイダーのIDやパ
スワードがうろおぼえで何度試してもはねられてしまうのです。メールの
設定に費やした時間が3時間とは、われながら。
 教訓、IDやパスワードは確実にメモしておかないとイケナイ。



 なんとか無事つながってiPadで電子本を読む初体験。
結果はまあまあ、 hontoだから秀英体、たしかにスマホにくらべて格段と
読みやすい。けれども字詰・行数が原本とは変わってしまうので、著者が
文字配列に厳しい人だったら不満が出そうです。

 もう一つの未完は、市川森一さんの『幻日』を読み始めたことでした。
これもhonto bookに入っておりますが、印刷本です。
 


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