活版印刷紀行

いまはほとんど姿を消した「活版印刷」ゆかりの地をゆっくり探訪したり、印刷がらみの話題を提供します。

参勤道中『一路』

2013-06-16 14:32:22 | 活版印刷のふるさと紀行

 最近読んだ本の中で一番興味深かったのが浅田次郎さんの『一路』です。

未読の方のためにあえて説明しますと、時代は14代将軍家茂治世のころ、

題名になっている一路、主人公の小野寺一路19歳が不慮の死を遂げた

父に代わって西美濃田名部郡から江戸までの参勤交代の御供頭(おとも

がしら)の役目を仰せつかる。江戸で学問と剣の修行に明け暮れていた

一路が唯一頼りにしたのが200年以上も前の家伝で「参勤道中は江戸

見参の行軍」と断じた古書。

 それをたよりに中山道を江戸まで参勤道中を差配する物語で上下2巻を

息も尽かさず読ませてくれます。

 

 私が知っている中山道は11宿すべて山の中といわれる贄川(にえがわ)

から馬籠までですが、あらためて中山道の険しさ、参勤交代の道中の厳しさ

を教えられた気がしました。

 浅田ストリーのおもしろさ、痛快さ、奇抜さは読み手に任せるとして、私は

読みながらかつて中津川のそばの岩村の知人宅でごちそうになった「ほうば

 

寿司」のことを何度も思い出しました。ご主人みずから早朝にほうばの葉を取

りに山へ入ってくださったと聞き、感激しながら頬うばった寿司の旨かったこと。

 そういえば、『一路』では殿様をはじめ参勤道中の一行がどんなものを食べた

のかはあまり記述がないのが残念でした。

 さらにつけくわえると、『一路』の一路が主人公の名前に由来すると考えるのは

早計ではないか、とか、本当の主人公は蒔坂左京大夫(まいさかさきょうだゅう)

ではないかなどと考えさせられるのも楽しみでした。

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プーシキン美術館展2

2013-06-15 14:34:07 | 活版印刷のふるさと紀行

 この展覧会は4つのセクションにわかれています。

第1章は17-18世紀の古典主義、ロココ、第2章は19世紀

前半で新古典主義、ロマン主義、自然主義、第3章は19世紀後半で

印象主義、ポスト印象主義、第4章が20世紀のフォーヴィスム、

キュービィスム、エコール・ド・パリの4区画です。

 会場がゆったりしていて観覧動線がはっきりしていることもあって

ゆっくり鑑賞できました。それと音声ガイドが簡潔でわかりゃすく

水谷豊の語りも好感がもてました。

 さて、私が惹かれたのは第1章にあったジャン・パティスト・サン

テールの『蝋燭の前の少女』。1700年ごろの作品とされ、画家が

サンテールとされるまでも悶着があったそうですが、蝋燭の淡い光で

少女が読んでいるのはなんでありましょうか。背の方の漆黒が少女の

ひたむきさと清純さを伝えてくれていて実に清らかなイメージ。

 

 そしてもうひとつが第2章にあったジャン・オーギュスト・ドミニク

・アングルの『聖杯の前の聖母』1841年です。

 アングル自身がこの絵の依頼主が後のロシア皇帝アレクサンドル2世

であったために渡露してしまったことを惜しんで、同じ画題で今、メト

ロポリタンやオルセーにある作品を制作したといいますから、かなり

惚れ込んでいた構図だったとおもわれます。やや肉感的な聖母像といった

らお叱りを受けそうですが。

 

 

                          

  

 

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プーシキン美術館展を観て1

2013-06-14 17:16:46 | 活版印刷のふるさと紀行

 結局、3月12日から5月28日まで実に77日間も名古屋にいることになってしまいました。

その割に不勉強な日々を過ごしてしまいましたが、ひとつだけ、愛知県美術館の『プーシキ  

ン美術館展』が観られたのは勉強になりました。実に は出色というかすばらしい内容でし

た。

「フランス絵画300年」とありましたが、プーシキン美術館の世界屈指のフランス絵画のコレ

クションを通じてフランス絵画のすばらしい歩みを<これでもか、これでもか>と見せつけてく

れました。

 プーシキン美術館美術館は創立100年だそうで、16世紀末から20世紀半ばまでフラン

ス絵画だけでも700点以上を所蔵しているというから驚きです。どうして、ロシにアにそんな

にたくさんフランスの名画があるのかと疑問に思いましたが、 18世紀の女帝エカテリーナ   

2世をはじめユスーボフ家、バリャチンスキー家、ゴリ家など裕福な貴族が膨大な費用と蒐

集熱意を注ぎ込んだコレクションがある時期に合体されたと聞きました。

 本展の売り物は印象派時代の1877年、ルノワールの最高傑作「ジャンヌ・サマリーの肖

像」です。学生時代、坂崎担先生の美術概論でモデルの彼女はコメディ・フランセーズの人

気女優だったと聞いたことを思い出しました。あったかーいい絵でした。

 

 

 

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ミリオンセラーと印刷

2013-06-14 10:51:14 | 活版印刷のふるさと紀行

  ただただ、驚いています。

 村上春樹さんの3年ぶりの長編『色彩を持たない田崎つくると、彼の巡礼の年』の

驚異的な刷り部数についてです。初日、店頭に積み上げられた部数が35万部、それが

完売、発売7日目で100万部という大増刷が文芸春秋社で決められています。

 あれから2か月実売数は知る由もありませんが、100万部をゆうに超えたことは

想像に難くありません。

 

 たまたま、主人公のつくるが名古屋出身ということもあって、5月初旬の名古屋の新聞

には連日のように『色彩を持たない多崎つくる…』関連の記事がでていました。

なかには作品に出てくる場所を地図にする目論見があると報じているのもありました。

 ところで簡単にミリオンセラーといってくれますが、100万部の単行本がいったい積み上げ

たらどのくらいのカサになるのか想像がつく方がどれくらいいらっしゃるでしょうか。

それよりもなによりも、私はこのスピード増刷を支えた印刷や製本の舞台裏の話を

ぜひ聞きたいとおもいます。少なくとも活版の平台で印刷し、天日乾燥の工程もあった

アナログ時代では絶対にできなかったワザなのですから。

 

 

 

 

 

 

                           

                          

 

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