ジャズとボサノヴァの日々

Days of Jazz and Bossa Nova

76年 ロイ・エアーズ、Soul Trainでのライブ "Everybody loves the sunshine"

2024-05-05 22:00:00 | Jazz Funk
Everybody loves the sunshine performed by Roy Ayers on Soul Train 1976

ロイ・エアーズが移り変わりの激しい音楽業界で生き延びたのは、時代が求めている音楽の半歩先くらいを歩いて、結果的に幅広い層に支持されてきたからだろう。だが実際のところ、音楽家としてギリギリの実験を繰り返していたのではないだろうか。例えばこの"Everybody loves the sunshine"という「全然打っていない」曲をSoul Trainで演奏するアーティストは他に思い当たらない。1976年といえばSaturday Night Feverのブレイク直前で音楽業界全体がディスコに傾倒しており、レコード会社も戦略的にディスコ向けのレコードを乱発していた時代だったのだ。

ロイの音楽の変遷について少し触れよう。ロイは70年にリリースした"Ubiquity"に由来する自身のグループ、ロイ・エアーズ・ユビキティを立ち上げたことで、新進ジャズ演奏家として活動してきた60年代に区切りをつけ、新たな音楽の方向性を明示した。Ubiquity=遍在する、至る所に存在するというコンセプトで、異質なものを融合し組み替えて今までにない音楽を目指したのだ。この時点でロイ・エアーズというジャンルが生まれたと考えるべきで、レコード会社の都合で定義されたジャンルに別れを告げたのだ。

ロイ・エアーズ・ユビキティはフィリップ・ウーによるメロウかつスペイシーな音世界が特長で、スピリチュアル・ジャズに寄っているが非西洋音楽への指向性もあり、アルバムコンセプトはプログ・ロックのそれにも近い。まさしく「どこにでも存在する」音楽なのだ。

当時の筆者は何故ロイ・エアーズがこの曲でSoul Trainに出ているのか分からなかったが(注)、時代が何周もして幾多のジャンルを経験した今なら楽しめる。フロアにいる若者達は、戸惑いながらもジャジーで複雑に捻じれたグルーヴによって無の境地に導かれていく。洗練と革新性、静寂と興奮がインクルードした音楽を聴けることに感謝したい。

注:九州の片田舎に育った筆者だが、アパレルブランドのJUN (J & R)が提供していたTV番組Soul Trainは不定期ながらも放送していて、一回も欠かさず観ていた。今となっては恥ずかしいが、出演者達が来ていたJUNのTシャツと同じものを入手して悦に入っていたものだ。



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