新イタリアの誘惑

ヨーロッパ・イタリアを中心とした芸術、風景。時々日本。

心ふるえる風景 南イタリア編⑬ 訪れる夜 地中海の島は静寂の中で眠りに就く

2024-06-11 | 心ふるえる風景 南イタリア編

 プロチダ島のホテルは コリチェッラ港に面した場所

 海と海岸が見下ろせる 高台のロケーションだ

 夜ホテルに戻って 小さなベランダに出ると

 海岸の様子が 一望できる

 

 日中はあれほど キラキラ輝いていた海は

 もうすっかりブルーの水面に 漆黒の墨を

 飲み込んだかのような 闇を抱えて沈み込み

 そのあちこちに 停泊した小舟は

 浜の灯かりを受け止めて ぽっかりと浮かび上がる

 

 一方街の家々は 柔らかな灯かりに照らされて

 華やかとさえ言えるほどの明度を誇って輝く

 その中には さっき絶品のパスタを提供してくれた

 トラットリアからの香りも かすかに混じる

 

 さっきまで響いていた ボートのエンジン音

 カモメの鳴き声 

      子供たちの歓声

            潮騒のざわめき

 そんなすべての音が 夜の訪れとともに鳴りを潜め

 地中海に浮かぶ 小さな島は今

 ひとときの眠りに 就こうとしている 

 

 

 

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心ふるえる風景 南イタリア編⑫ 海辺で走る姉妹を見ながら 自らの子供時代を思い返した

2024-06-08 | 心ふるえる風景 南イタリア編

 島のあちらこちらに 海水浴に適した砂浜がある

 そんな海辺で サンドイッチをほおばりながら

 押し寄せる波を見ていたら 地元の子供たちが現れた

 

 青いスカーフに 白い短パンのお姉ちゃん

 黄色いスカーフに ピンクの短パンの妹君

 子供なのに 何とセンスたっぷりの子供たちだ

 

 砂に穴を掘ったりの 砂遊びをしていると思ったら

 お姉ちゃんが走り出し 妹もそれに追いつこうとダッシュを始めた

 逃げるお姉ちゃん 追いかける妹君

 近づきそうになったら お姉ちゃんがスピードを増す

 

 そんな天真爛漫な 追いかけっこを見ているうちに

 自分の子供のころを 思い出してしまった

 

 私のふるさとは 山国だったので

 海を初めて見たのは 中学生になってからだった

 未知の海を前にして まず海水を口に含んだ

 思い切りのしょっぱさに びっくりした後

 ちょっと後方の高台に上がって 海を眺めた

 本当に水平線は 丸くなっているのか・・・

 

 そんな 遅ればせの経験を 

 海で生まれ育った あの子たちは

 生まれながらに 会得しているんだろうなあ

 海の子たちを うらやましく思えた日だった

 

 

 

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心ふるえる風景 南イタリア編⑪ 日没時に展開する光のグラデーションに見入った

2024-06-04 | 心ふるえる風景 南イタリア編

 島の高台で一休みしながら これからの行動予定を考えていると

 海の色にポッと 赤味がさしていることに気づいた

 ああ もう夕方か 

 立ち上がり 西の空を見ると

 どんどん太陽が沈み始め あっという間に山陰に消えていった

 

 だが夕焼けはある意味 日没からが本番だ

 空の色彩は 上空から青 紫 橙 赤と

 いくつものグラデーションを 伴って変化し

 そこにアクセントを つけるかのように

 綿雲が ぽっかりと浮かぶ

 

 中央にくっきりと 雄姿を見せるのは

 隣の島 イスキア島の山並み

 海岸の街並みは まだ明かりが

 ちらほらと 灯るだけ

 

 昼と夜との境い目の この瞬間だけに展開する

 光のショーを まるで独占したような

 貴重な体験の喜びが 湧きあがった時だった

 

 

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心ふるえる風景 南イタリア編⑩ 「赤ちゃん誕生!」の大きなリボンが玄関に

2024-06-01 | 心ふるえる風景 南イタリア編

 街を歩いていると こんなものが民家の玄関に下がっていた

 「eccomi! sono nato」

 直訳すると「私はここにうまれた」 つまり「誕生したよ!」

 この家に赤ちゃんが生まれたことを 知らせる”告知リボン”だ

 

 イタリアを旅していると 各地で似たようなリボンが

 家の玄関などに 飾られているのを見かけた

 中には屋根の上に旗とリボンを立てて お祝いしている家もあった

 

 イタリア人と話すと 家族に対する愛情の深さを

 精一杯の表現で表して 感心させられることがある

 それは 自分の住む地域に対しても同様だ

 

 ある時フィレンツェで 「イタリアのどこが気に入ったか?」と尋ねられ

 うっかり「ヴェネツィア」と答えたら ムッとされたことがある

 同じイタリアでも 統一されて1つのイタリアになったのは1861年

 フィレンツェとヴェネツィアとは それまで別の国だった

 そんな歴史から 同じイタリアでも地元以外の土地を褒められるのは

 あまり 歓迎しない傾向がある

 同様に 愛情の深さはより身近かな所ほど大きいことを

 何度も 気づかされる旅でもあった

 

 

 

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心ふるえる風景 南イタリア編⑨ 島で見かけたサッカー少年の 温かい後ろ姿

2024-05-28 | 心ふるえる風景 南イタリア編

 島歩きの遅い午後 ホテルに帰る途中前を歩く少年を見つけた

 ユニフォーム姿 大きな荷物を背負って

 でも 軽快に歩いて行く

 1時間ほど前グラウンドで見かけた サッカー少年団の1人だろうか

 

 かなり激しい トレーニングの最中で 

 みんな真剣にボールを追いかける姿が 印象的だったが

 今見掛ける少年は 打って変わって全身から開放感が漂っている

 

 やり終えた練習をクリアーして 近づく試合での

 シュートシーンを シミュレーションしているのだろうか

 家ではマンマ自慢のパスタが 湯気を立てながら

 少年の帰りを 待っているのに違いない

 

 そんな空想をしながら歩いて行くと

 周囲の台所から トマトソースの温かい香りが漂ってきた

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