クワガタ~スズメバチ等の覚書

   Photo & Text by こよみ

PC版テンプレート画像は
朽木屑を運ぶオレゴンルリクワガタ♂

アスタコイデス済州島・4-「2齢で羽化?」と「済州島の顔」

2024-05-24 23:18:11 | アスタコイデス(済州島)

この記事は二つのタイトルから成り、画像主体で構成しています。

 

2齢で羽化?

済州島のアスタコイデスがすべて羽化を終えたのですが

プリンカップ側面から経過観察していた限りでは

2齢で羽化したのではないかと思われるオスが2頭出ました。

もしかしたら気づかないうちに終齢へと加齢していたのかもしれませんので

念のため「?」を付けておきます。

↓ 全てのオスが羽化 撮影:2024年5月8日

↓ 2024年3月2日 2齢と思っていた幼虫が前蛹に・・・

↓ 蛹化二日後(3月9日)

↓ 2齢で羽化したと思われる2個体

↓ 1頭は、羽化後3日で死亡

↓ 約29㎜と26㎜

↓ 体長29㎜

↓ 最小26㎜と最大61㎜

↓ 両サイド61㎜台

 

済州島の顔

はじめに

大アゴの「第一内歯」とは、大アゴ基部に一番近い内歯のことを言い、大きさは関係ありません。

下図でいうと黒点で記した小さな内歯が「第一内歯」にあたります。

したがって赤点部の大きな内歯は「第二内歯」になり

ここではそれを「一番大きな内歯」と表現します(下画像は台湾産野外個体)

↓ 第一内歯は黒点部、赤点部は第二内歯(一番大きな内歯)

↑ 台湾産野外個体

ここで「済州島の顔」とするサンプルは

十分な範囲でランダムな交配が行われなかった飼育個体です。

飼育個体は、地域差より差が出ることがあります。

この辺りの事情を踏まえてご覧ください。

また、台湾産野外個体との比較はしましたが、気の利いた細かな説明文はありません。

↓ 済州島産飼育個体61㎜の顔

済州島産は、61㎜クラスになっても一番大きな内歯の位置が大アゴ基部寄りで

頭部にある一対の突起の角度がちょっと違うのかと感じます。

↓ 左:台湾産(野外個体)60㎜ 右:済州島産61㎜

↓ 済州島産:26・29・37・49・54・58・61㎜(26・29はおそらく2齢羽化)

↓ 両端が台湾産(野外個体)59㎜・60㎜:一番大きな内歯の位置がちがう

↓ 左:済州島産61㎜ 右:台湾産(野外個体)60㎜

↓ 済州島産61㎜クラス

↓ 済州島産メス30㎜・23㎜

↓ 済州島産31㎜側面

以上「2齢で羽化?」と「済州島の顔」でした。


キンキコルリ・6-発生時期について

2024-05-12 15:48:51 | キンキコルリ(兵庫県中部)

はじめに

兵庫県でのキンキコルリとニシコルリの分布境界調査について

中部地方で発見したコルリクワガタ種群は

便宜上「キンキコルリ」のカテゴリーで覚書しています。

カテゴリー「キンキコルリ」から入ると一連の調査につながります。

下図は調査した場所の略図で、初調査日時順にA〜Hです。

(青=ニシコルリ・緑=キンキコルリ・グレー=未検・背景色なし=発見できなかった)

鶯色三角型は、位置関係をわかりやすくするためのもので深い意味はありません。

今回は早春ということもあり、GエリアとHエリアの分布調査と同時に

中部地方のコルリクワガタ種群の発生時期を知るチャンスでもありました。

よって記事構成は、調査日時順になっています。

↓ 新たにG・Hの二カ所を調査

 

Gエリア

日時:2024年4月13日 9:45~10:40

場所:兵庫県中部(Fエリアから南方向に直線で1.9㎞・Bエリアまで南方向に直線で約1.5㎞)

標高:910m前後

天候:晴 気温:16℃前後

結果:発見なし

調査した場所は日当たりがよく、林床はやや乾燥気味でした。

林床を1時間ほど探しましたが、産卵痕すら発見できず

また、スイーピングもしましたが成果はありませんでした。

ここは斜面が急であったりして探せる範囲が限られました。

↓ 極一部の木のみ芽吹き

 

Bエリア:キンキコルリの発生状況

日時:2024年4月13日 11:00~14:30

場所:兵庫県中部Bエリア

標高:930m前後

天候:晴 気温:22℃前後

結果:未発生と判断

Bエリアは既に調査済みで、キンキコルリが分布しています。

背の高い広葉樹の樹冠付近は膨らんでいましたが

林全体で見ると、新芽が、ひこばえが、どうのこうのいう状態ではありませんでした。

春はも少し先のようです。

林床には蛹室で待機する新成虫の姿があり

4月13日現在、発生には至っていないと判断しました。

↓4月13日、新成虫は蛹室で待機していた 

↓ 待機中のメス

↓ メス腹面色調(胸の色は黒〜褐色で個体差有)

↓ メスによる誘因トラップ(成果無し)

 

Hエリア

日時:2024年5月11日 14:45~16:20

場所:兵庫県中部(Fエリアから南方向に直線で約2.2㎞・Bエリアまで西南方向に直線で約1.5㎞)

標高:735m前後

天候:晴 気温:19℃前後 半袖で寒い

↓ 沢沿いで、標高のわりに気温が低い

キンキコルリがいるBエリアまでは直線距離で約1.5㎞

標高はBエリアより200mほど下がりますが、ひんやり肌寒い沢沿いでした。

とはいえ、5月の11日にもなるとコルリクワガタが好んで潜り込むような

所謂「ひこばえ」みたいな樹木の状態はほぼ過ぎており

周囲の木々は新緑に染まっていました。

↓ 5月11日現在、新緑全開!

探し始めて30分ほどで産卵痕の付いた朽ち木を発見。

毎度のことながらそこから生体は出てきませんが

この谷にもコルリクワガタがいることはわかりました。

↓ 古い産卵痕発見

↓ これも古い産卵痕

少し急な斜面で見つけた半埋木を抜き出してみると

産座周辺に真新しい木屑が付いていました。

それは、かなり新しい産卵痕です。

↓ 齧り屑の付く真新しい産卵痕!

スマホの撮影を止め、朽ち木表面をチェックすると産卵途中のメスがいました。

コルリクワガタは警戒心が少なく、飼育下でも産卵の様子を簡単に観察できます。

このメスも直接触れるまでは材を齧っていました。

↓ 朽木を齧る正体発見! オスの姿はなし

 

中部地方の発生時期について

4月13日に蛹室内にとどまる新成虫を複数見たこと、空の蛹室を見なかったこと

5月11日にはHエリアで産卵中のメスが単独でいたこと

更には周辺木々から感じとれた季節感なども合わせて推察すると

兵庫県中部地方におけるコルリクワガタ種群の今年の発生は

4月中旬頃から始まり、5月12日現在は終盤を迎えていると判断します。

これは、今年の北部のニシコルリと似たようなタイミングであったと考えます。

Hエリアで採集したコルリクワガタのメスは材とともに飼育下において

今年の冬には種の同定に繋げたいと思います。

↓ メスの腹面色調

↓ メスと材を持ち帰り飼育


オレゴンルリクワガタ・3-飼育に見る生涯

2024-05-06 15:00:47 | オレゴンルリクワガタ(CA)

飼育に見るオレゴンルリクワガタの生涯

これは、15ヶ月の飼育に見たオレゴンルリクワガタplatycerus oregonensis coerulescens

幼虫〜蛹〜羽化〜産卵までの大筋を「生涯」としてまとめたものです。

よって、各成長ステージ等の数値には暫定的なものもあります。

*飼育管理温度は、他種との関係で年通15〜24℃くらい

*カテゴリーから入ると飼育過程等に繋がります

↓ オス 2024年3月撮影

↓ メス 2024年3月撮影

↓ 前記事

 

オレゴンルリクワガタ - クワガタ~スズメバチ等の覚書

オレゴンルリクワガタplatycerusoregonensisWestwood,1844分布:カナダ南部〜アメリカ合衆国カリフォルニア州(メキシコ湾に沿った低地〜低山地)体長:オス11.0〜16.0㎜メ...

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オレゴンルリクワガタ・2-知られざる生態 - クワガタ~スズメバチ等の覚書

はじめにここでいう「オレゴンルリ」とはオレゴンルリクワガタplatycerusoregonensiscoerulescensのことで「ルリ」とは、日本のルリクワガタPlatycerusdelicatulusdelicatul...

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幼虫期間:10~12ヵ月くらい

幼虫は割り出しや、マット交換などの環境の変化に弱い印象を受けました。

可能な限り大きな材を使い、羽化まで割り出さないのがベストのように思います。

ただし、羽化して蛹室から自力で脱出した雌雄がいる場合は

既に産卵を始めている可能性もあり、割り出し材に卵が紛れ込んでいる場合があります。

↓ 終齢幼虫

↓ 2024年1月14日 前蛹に向けて体のケアをしている様子

↓ 2024年2月25日撮影 蛹室内のメス 

 

蛹期間:約14日程度

蛹の期間は2週間と短いものでした(メス)

↓ 2024年3月1日 蛹化

↓ 2024年3月15日羽化 (撮影16日)

↓ こちらは、オスの新成虫

 

テネラル:不明

羽化から蛹室を脱出するまでの期間をテネラルとしましたが

外から見える蛹室は限られており、数値は暫定的です。

例えばメスの場合、羽化から1ケ月経過しても腹部は膨らんで上翅に収まっておらず

羽化から45日経過したころに蛹室から出ていました。

*これはどの種にも言えることですが、容器を触ったり叩いたりして外部から刺激を受けると

本来より早く蛹室から出てしまうこともあります。

↓ 羽化から4日経過したメス

↓ 活動中のメス、羽化から60日経過

 

後食:未確認

念のため、複数の昆虫ゼリーを与えましたが、後食の確認はできませんでした。

 

産卵:過去記事参照

交尾〜産卵形態などは過去記事参照、「カテゴリー」から入ると大筋がわかります。

↓ 2023年1月撮影

↓ 2023年2月撮影 卵と初齢幼虫(黄色いものは待ち針の頭)

赤枯れ材にも産卵

昨年の2月、産卵痕も穿孔痕も見つけることができなかった赤枯れ材ですが

念のため保管して、8か月後に割ってみると終齢幼虫が1頭出てきました。

↓ 赤枯れから終齢幼虫1頭出現 2023年10月15日撮影

 

成虫寿命:活動から1ヶ月くらい

オスのほうが短命のように感じていますが、メスは材の中で息絶えていることがあるので

本当のところはよくわかりませんでした。

 

未知種の難しさ

ホラサビの記事でも書きましたが、生態がよくわからない所謂「未知種」というやつは

いつごろ羽化するのかわからないこともあり

気長に構えていたら下画像のような結果も招いてしまいました。

↓ 2024年2月25日 羽化して行き場を失った個体(死亡) 

 気が付けば既に死亡していた(オス)

外でのオレゴンルリの発生期間は5~11月あたりまでと長く(約半年)

その間、連続的に羽化と産卵が行われているはずで

成虫の寿命が1ヶ月ほど(活動期間)であることを考えると

繁殖は発生が近い個体間で行われ、発生初期と後期の個体が出会うことはないと思われます。

↓ 穿孔した坑道から出てきて徘徊〜飛翔直前のオス:2024年3月撮影

 

補足:2024春

昨年産卵に使ったメインの材は、よく湿ったバクテリア材でしたが

幼虫の段階で多くが死亡したので、今回はやや乾燥気味のバクテリア材を使いました。

↓ 今年は、やや乾燥気味のバクテリア材をマットの上に置いた産卵セット

オレゴンルリの産卵痕の形態や、木目に対する角度(保水性)を見ると

日本のコルリクワガタ種群が好むような湿度の高さは必要ないのかもしれません。

また、他種との関係で管理温は24度くらいまで上がりました。

これがオレゴンルリの快適な温度範囲を超えていた可能性もあります。

↓ 日本のコルリクワガタ種群産卵痕:木目に対して垂直(・)

↓ オレゴンルリの産卵痕、日本のそれよりいい加減(2024年)

オレゴンルリの産卵痕は材の底面周辺と端面にまとまって見られました。

また、日本のルリクワガタ属は木目に対しほぼ垂直に材を削り産座を作りますが(保水効果)

オレゴンルリ の場合は、それよりいい加減です。

また、材の端面にも積極的に産卵しています

↓ 端面にも産卵痕あり 

↓ 親虫は材に穿孔もする

 2024年4月15日 初齢幼虫

↓ かなり小さいので注意しないと見逃してしまう

 

最後に

今回は必要に応じて過去に使用した画像も掲載しました。

オレゴンルリ、15ヶ月の飼育で生態の一部を見ることはできましたが

「繁殖」という部分では、新成虫がたくさん得られたわけではなく

失敗に近い成功といったところです。

 
参考URL:生物多様性データへの自由でオープンなアクセス

 プラティセラス・オレゴネンシス・ウェストウッド、1844年 (gbif.org)


ニシコルリクワガタ・25-発生初期か、それとも後期か?

2024-05-05 00:05:07 | ニシコルリ(兵庫県北部)

発生初期か、それとも後期か?

日時:2024年5月3・4日  12:00〜17:30

天候:晴れ  気温:3日22度前後・4日25度前後

標高:約900〜1040m

3日は神戸のSさんとA山で、4日はSさん・浜松のYさんと3人でB山で

ニシコルリを探しました。

今回は一連のコルリクワガタ調査ではなく、単に春の新芽採集です。

3日のA山は二つの斜面で一桁のオス、4日のB山は発見なしでした。

↓ 抜群のコルリ日和

両日ともに良い天気に恵まれ、期待を持ったのですが

既に雪は解け、広葉樹の葉はほとんど開いていました。

ところどころに残るブナの「ひこばえ」を網羅して救って得た数は一桁のオスで

林床の朽ち木も見ましたが、この二日間にメスを見ることはありませんでした。

↓ ところどころに「ひこばえ」

↓ Sさんが最初の1頭を捕獲

↓ やはりオス

↓ いそうでいない!

↓ 折れた枝にハラアカコブカミキリがたくさん付いていた!

↓ ルリクワガタも探したが乾燥しすぎ

 

発生初期か?後期か?

3・4日、二日間で見つけたニシコルリの数は一桁のオス、メスは0頭です。

オスは、比較的綺麗でした(欠損がないという意味)

「メスがみつからない」これをどう判断するか?

人によってはオスが多いので発生初期、人によっては後期。

雪は疾うに解け、広葉樹の多くが葉を開いている状態に

私は、ニシコルリの樹上活動の終わりを感じ

今頃は多くが林床で活動しているものと推察しました。

経験上、一番おもしろいのは「ところどころ雪の上を歩くような頃!」、ですよね。

浜松のYさん、Sさん、お疲れ様でした。

↓ 過去画像「残雪のGW!」


マグソクワガタ・11-発生の早まり

2024-04-27 20:44:30 | マグソクワガタ

山間部にあるマグソクワガタの生息地のこと

この10年ほどの間に発生が早まってきたと感じています。

日数にすると1週間程度。

発生は、その年の天候にもよることはよくわかっているつもりですが

それでも通い続けた20年を振り返ると、発生が早まったことを実感するようになりました。

日時:2024年4月27日 12:00〜14:30

天候:曇りのち晴れ 気温:23度前後・半袖で汗をかくくらい

今日は昆虫写真家のFさんが同行です。

Fさんは「動画と写真を撮り終えたらリリースする」というスタンスです。

↓ 昨年の洪水で砂場はほぼ消えていた!

↓ Fさんが石に付くオスを発見

↓ 日差しとともに地面から舞い上がったオス ピンぼけ

↓ ここにも潜むオス

探し始めはオスばかりで、メスを求めてうろついていると

飛んできましたメスが。

その後も飛翔するメスを数頭発見しました。

また、メスは着地が下手などと噂をしたら

それらしき物体が落ちるように着地したりして

今日は2時間半ほどで雌雄比率半々を見る完璧な調整日となりました。

↓ 追跡しながら捕えた最初のメス

↓ その後もいくつか捕獲

↓ リリース前のペア写真

川原では目的の雌雄を見ることができたので次は標高を上げ

コルリクワガタを探しに行きました。

 

おまけのニシコルリ

日時:2024年4月27日 15:45〜17:10

天候:晴れ 気温20度程度

場所:県下B山南斜面(このエリアはニシコルリ)

標高:約900m

↓ 例年に比べ雪は少ない

↓ ブナの芽吹きは良い感じ

↓ いました!オスが ピント合わず

↓ おそらく発生初期

↓ メス腹面は蕚(褐色のがく)にカムフラージュ

↓ ロードキル 緑のオオセンチ

今日はマグソクワガタ雌雄を見ることができ

おまけにコルリにも会えるという、我ながら抜群の調整日となりました。

Fさん、お疲れ様でした。