漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符「景ケイ」 <けしき> と 「憬ケイ」 「影エイ」

2024年05月21日 | 漢字の音符
 ケイ・けしき   日部 jǐng・yǐng 


 上から、京キョウ、高コウ、景ケイ
解字 京は「みやこ」の意味であるが、もとは一階の中央に柱を描いた高層建築。金文では周王の宗廟(祖先祭祀場。京宮とも)の意味だが、周王が近くに居住することから「鎬京コウケイ」(渭水流域(関中)に築かれた周の都)という字で都城を表す「みやこ」の意味となっている。一方、高コウは高層建築だが、下部に口がついており入り口・窓などの説がある。
 その下の景は「日(日光)+京(高い楼閣)」の会意形声。京は都を代表する高く大きい楼閣。その楼閣の上に太陽があり、日光に照らされている高い楼閣を表している。意味は、けしき。ながめ。ありさま。また、建物に日光が当たり、その影(かげ)の意味がある。
意味 (1)ありさま。ようす。けしき(景)。「景色けしき」「景観ケイカン」(景色の外観。ながめ)「風景フウケイ」(ありさま。ながめ)(2)すばらしい。めでたい。「景福ケイフク」(大きな幸い)「景雲ケイウン」(めでたいことの前兆の雲)(3)したう。「景仰ケイコウ」(慕いあおぐ)(4)おおきい。「景行ケイコウ」(大きな道)(5)かげ(景)。「景光ケイコウ」(かげとひかり。光陰)(6)[国]そえる。たす。「景品ケイヒン」「景物ケイブツ」(四季折々の興を添えるもの)

イメージ  
 「けしき」(景・憬)
 意味(5)の「かげ」(影)
音の変化  ケイ:景・憧  エイ:影

けしき
 ケイ・あこがれる  忄部 jǐng
解字 「忄(心)+景(けしき)」の会意形声。都の高層建築に日が当たるさまの景(けしき)を見て心で感銘をうけること。転じて自分の置かれている状態を悟(さと)ること。また、憧憬ドウケイ・ショウケイという語は、ある事物に対して期待をもつ、強く望む意味だが、日本では、あこがれる意味で用いられる。
意味 (1)さとる。気がつく。「憬悟ケイゴ」(憬も悟も、さとる意) (2)[国]あこがれる(憬れる)。「憧憬ドウケイ・ショウケイ」(憧も憬も、あこがれる意)

かげ
 エイ・かげ  彡部さんづくり yǐng
解字 「彡(模様)+景(日に照らされた高楼のかげ)」の会意形声。景には「かげ」の意があるが、彡(模様)をつけて、その意味を明確にした字。日光に照らされた楼閣の姿が地上にできる模様。
意味 (1)かげ(影)。光がさえぎられてできる黒い影。「陰影インエイ」「影絵かげえ」「影響エイキョウ」(影は形に従い、響きは音に応ずる。他に作用が及ぶこと)(2)光りに映し出されたすがた。かたち。「影像エイゾウ」「撮影サツエイ」(3)すがた。かたち。おもかげ。「面影おもかげ」「人影ひとかげ」「月影つきかげ」(①月のかたち。②月のひかり)
<紫色は常用漢字>

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音符「奄エン」<上からおおう>と「掩エン」「淹エン」「閹エン」「庵アン」「菴アン」「晻アン」「俺おれ」

2024年05月19日 | 漢字の音符
  増補しました。
 エン・おおう・たちまち  大部

解字 金文は「イナズマの形(电=申シン)+大(人の正面形)」で、雷雲が人の頭上をおおう意。篆文は大が上にきた形で同じ意味を表す。たちまち・にわかの意も雷雲から由来する。奄を音符に含む字は、「おおう」「おおきい」イメージを持つ。 
イナズマは、音符「申シン」を参照。
意味 (1)おおう(奄う)。「奄有エンユウ」(おおって自分のものにする)(2)(おおわれて)ふさがる。「奄奄エンエン」(息の絶え絶えであるさま=気息奄奄キソクエンエン)(3)たちまち(奄ち)。にわか。「奄然エンゼン」(にわかなさま・くらいさま)「奄忽エンコツ」(にわかなさま)(3)地名。「奄美あまみ」(鹿児島県南部の島、①奄美大島と、②奄美諸島がある)

イメージ  
 「おおう」
(奄・掩・菴・庵・淹・晻・閹)
  雷雲がおおう意から「おおきい」(俺)
音の変化  エン:奄・掩・淹・俺・閹  アン:菴・庵・晻

おおう
 エン・おおう  扌部
解字 「扌(て)+奄(おおう)」の会意形声。奄のおおう意を、手を付けて動詞化した字。
意味 (1)おおう(掩う)。おおいかくす。「掩蓋エンガイ」(おおい)「掩蔽エンベイ」(おおいかくす)「掩護エンゴ」[敵の攻撃から](味方をおおいまもる)(2)かばう。「掩護エンゴ」(かばい守る)(3)たちまち。にわか。「掩襲エンシュウ」(不意におそう)「掩撃エンゲキ」(不意打ち)
 アン・いおり  艸部
解字 「艸(草)+奄(おおう)」の会意形声。草で屋根をおおった粗末な小屋。
意味 (1)いおり(菴)。草ぶきの小屋。「菴舎アンシャ」(墓で喪に服する小屋)(2)雅号や屋号などに添える語。「不審菴フシンアン」(表千家の茶室)
 アン・いおり  广部
解字 「广(やね)+奄(おおう)」の会意形声。菴アン(いおり)の艸⇒广に変えた字で、同じく、いおりを表す。
意味 (1)いおり(庵)。茶室などの小さな家。「草庵ソウアン」「庵主アンシュ」「庵裏アンリ」(いおりの中)(2)仏を安置して住む家。「禅庵ゼンアン」(3)人名。「沢庵タクアン」(①江戸初期の臨済宗の僧。書画・俳諧・茶に通じた。②沢庵漬けの略。干した大根を糠ぬかと塩で漬けたもの。たくわんともいう。)
 エン・ひたす・いれる  氵部
解字 「氵(みず)+奄(おおう)」の会意形声。水でおおわれることから、ひたす意となる。また、(水が)とどまる、(水でおおわれて)ひろい意。日本では、ひたす意から、茶葉に浸してお茶などを「いれる」意で使う。
意味 (1)ひたす(淹す)。つける。「淹漬エンシ」(ひたす。淹も漬も、ひたす意)(2)とどまる。ひさしい。「淹滞エンタイ」(とどこおる)「淹留エンリュウ」(ひさしくとどまる)(3)ひろい。「淹通エンツウ」(ひろくゆきわたる)(4)[国](お茶などを)いれる(淹れる)。「お茶を淹れる」「コーヒーを淹れる」
 アン・くらい  日部
解字 「日(ひ)+奄(おおう)」の会意形声。日が雲におおわれてくらいこと。暗アンの同音代替字となる。
意味 くらい(晻い)。日が隠れてくらい。「晻晻アンアン」(くらいさま)「アンマイ」(①くらい。暗黒。②おろか)「晻世アンセイ」(暗い世の中)「晻曖アンアイ」(暗いさま)
 エン・(かんがん)  門部
解字 「門(もん)+奄(おおう)」の会意形声。門をおおう扉から、宮殿の門を守る役人の意。門番。門番は宮廷で罪を犯して刑罰(宮刑)を受けた男子が行ったので、宮刑(去勢される)を受けた宦官の意となる。「史記」の編纂で知られる司馬遷は漢の武帝の怒りをかい宮刑に処せられ宦官となったが執筆をつづけ史記を完成させた。
意味 (1)宮廷の門を守る門番。「閹謁エンエツ」(門番の取り次ぎ)(2)かんがん。宦官。去勢(生殖器をとる)された男子。「閹割エンカツ」(生殖器をとる)「閹官エンカン」(宦官として宮中に仕える者。=閹宦エンカン。閹人エンジン)「閹尹エンイン」(宦官を管理する官)(3)おおう。かくす。「閹然エンゼン」とは、本心・本性をおおいかくし、人に迎合するさま。(孟子「尽心・下」)
 アン・エン・あみ  罒(网)あみ
解字 「罒(网あみ)+奄(おおう)」の会意形声。网あみでおおうこと。
意味 (1)あみ(罨)。おおかぶせて魚や鳥をとらえるあみ。(2)おおう。上からかぶせる。「罨法アンポウ」(布で患部を冷やしたり温めたりする治療方法)「冷罨レイアン」(冷たい布でおおう)「斜罨シャアン」(傾斜地をおおう)

おおきい
 エン・アン・おれ  イ部
解字 「イ(人)+奄(大きい)」の会意形声。大きな人。自称に用いる。
意味 (1)おれ(俺)。われ。自分の俗称。「俺達おれたち」「俺流おれりゅう」「俺們アンメン」(おれたち)(2)おおきい。ゆたか。
<紫色は常用漢字>

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音符「就シュウ」<つく・つける>と「蹴シュウ」「鷲シュウ」「僦シュウ」

2024年05月17日 | 漢字の音符
  改訂しました。
 シュウ・ジュ・つく・つける  尢部 jiù  


 上は就シュウ、下は尤ユウ
解字 就の篆文(説文解字)は「京(大きな高楼)+尤ユウ⇒シュウ」の形声文字。音符「尤ユウ」の甲骨・金文は又(て)の一端に短線を引いて指が傷を負う形で、とが・災いの意。また、同音の優ユウに通じ、すぐれる意味がある。篆文から形が変わり尤ユウになったが、就シュウではユウから変化したシュウの発音を表しており「とが・すぐれる」の意味はない。就シュウは大きな高楼に、つく(到着)意からはじまり、その建物で仕事につく、仕事をなしとげるなど、多様な意味をもつようになった。宋代の韻書[広韻]は「成る也(なり)」とする。京は現在「みやこ(京)」の意だが、元の意味は王のすむ大きな建物の意。
意味 (1)つく(就く)。ふれる。すすむ。むかう。「金(属)は礪レイ(砥石)に就(つ)けば則ち利(鋭い)となる」「就寝シュウシン」(床につく。寝る)(2)つく(就く)。つける(就ける)。仕事や任務につく。高い職位につく。「就職シュウショク」「就業シュウギョウ」(業務に就く)「就任シュウニン」(高い職位につく)(3)なる(就る)。なす(就す)。なしとげる。「成就ジョウジュ」(4)たとえ。かりに。「就中なかんずく」(中(なか)に就(つ)くの音変化。その中でも。とりわけ)「就令たとえ」(もしも。かりに)

イメージ 
 「つく・つける」
(就・蹴・鷲・僦)
音の変化  シュウ:就・蹴・鷲・僦

つく・つける
 シュウ・シュク・ける  足部 cù
解字 「足(あし)+就(つく・つける)」の会意形声。ある物に足を上からつけると、ふむ・ふみつける意となる。また、足を横から強くつけると、ける意となる。ふむ意はシュクの音、ける意はシュウの音となる。
意味 (1)ふむ。ふみつける。「蹴踏シュクトウ」(蹴も踏も、ふむ意)(2)ける(蹴る)。けとばす。「蹴球シュウキュウ」(サッカー)「蹴鞠けまり」「一蹴イッシュウ」(ひとけり)  
 シュウ・ジュ・わし  鳥部 jiù
解字 「鳥(とり)+就(つく・つける)」の会意形声。するどい爪で獲物を襲い、爪をつけて獲物をつかみ取る鳥。
意味 わし(鷲)。タカ科の大形の猛禽。「鷲掴(わしづか)み」(ワシがするどい爪で獲物をつかむこと)「鷲鼻わしばな」(ワシのくちばしのような鼻)「鷲峰山ジュブセン」(京都府南部にある山の名。名の由来は鷲が翼を広げたような山から)「霊鷲山リョウジュセン」(中インド・マガダ国にあり釈迦が法華経を説いたという山。山の形が鷹に似るから、また鷹が多くすむからという)

霊鷲山(ウィキペディアより)
 シュウ・やとう  イ部 jiù
解字 「イ(ひと)+就(つく・つける)」の会意形声。人を金で雇い、ある業務や仕事に就かせること。転じて、お金をはらって物を借りること。
意味 (1)やとう(う)。手付金をはらって人をやとう。「シュウジン」(人をやとう。やとい人)「シュウヒ」(雇い人の費用、特に運送料をいう)「シュウバ」(人をやとって馬で運送させること。日本では後に独立した輸送業者になった)「馬の党」(駄馬輸送業者集団。平安時代・9世紀末の坂東諸国で強盗として蜂起した)(2)賃借りする。「シュウオク」(家を賃借りする=シュウシャ
<紫色は常用漢字>

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音符「馬バ」<うま>「罵バ」「闖チン」「媽マ」「瑪メ」「碼メ」 と 「匹ヒツ」

2024年05月15日 | 漢字の音符
 改訂しました。
 バ・メ・マ・うま・ま  馬部 mǎ         

解字 ウマを描いた象形。甲骨文はウマをタテに描いており、上に頭、その下にたてがみと足、最後に尻尾をつけている。金文はその流れを引き継ぎ、篆文にいたって抽象化された芸術的な馬の字が完成した。現代字の馬は、足を四つの点で表現している。馬は部首にもなる。
意味 うま(馬)。「騎馬キバ」「馬具バグ」「馬蹄バテイ」(馬のひづめ)「駿馬シュンメ」「伝馬テンマ」(運送用の馬)「馬子まご」(馬引き)
参考 馬は部首「馬うま・うまへん」になる。左辺や下部について馬にかんする意味を表す。常用漢字で11字(馬を含む)あり、約14,600字を収録する『新漢語林』では133字が収録されている。
常用漢字 11字
 バ・メ(部首) 
 駅[驛]エキ・うまや(馬+音符「睪エキ」)
 キ・のる(馬+音符「奇キ」)
 キョウ・おどろく(馬+音符「敬ケイ」)
 ク・かける(馬+音符「区ク」)
 ク・こま(馬+音符「句ク」)
 験[驗]ケン・ためす・(馬+僉セン」)
 ソウ・さわぐ(馬+音符「蚤ソウ」)
 (馬+音符「太タ」) 
 チュウ・とどまる(馬+音符「主シュ」)
 トウ・あがる(馬+音符「滕トウの省」)
常用漢字以外
 ガ・のる(馬+音符「加カ」)
 キョウ・おごる(馬+音符「喬キョウ」)
 駿シュン・すぐれる(馬+音符「夋シュン」)
 ジュン・なれる(馬+音符「川セン」)
 ラク(馬+音符「各カク」)ほか

イメージ 
 「うま」
(馬・罵・闖・瑪・碼)
 「マの音」(媽)
音の変化  バ:馬・罵  チン:闖  マ:媽  メ:瑪・碼

う ま
 バ・ののしる  罒部あみがしら mà
解字 「罒(=网:あみ)+馬(うま)」の会意形声。罒は网(あみ)の形だが馬に網をかぶせても、ののしる意は出てこない。ののしる意の字は、詈である。この字は「罪人に网(あみ)をかけて言う⇒ののしる意。[字統]は、馬に罪人をのせて市中を引き回し、人々が罪人を詈(ののし)るさまを「馬+罒(=詈。ののしる)」⇒罵と表現したとする。下図は日本の市中引回しだが、中国にあったかは定かでない。後漢の[説文解字]は「詈也(なり)。网に従い馬の聲(声)」とするだけであり、馬に乗せての市中引回しは覚え方としていいと思う。

引回<死罪大秘録>(「日本国語大辞典」の、ひきまわし(引回)より)
意味 ののしる(罵る)。口ぎたなくけなす。「罵声バセイ」「罵倒バトウ」「罵詈バリ」(罵も詈も、ののしる意)「罵詈雑言バリゾウゴン」(口をきわめた悪口)
 チン  門部 chuǎng
解字 「門(もん)+馬(うま)」の会意。馬が門から突然入り込んでくる形だが、馬に乗った兵士が突然、門に入ってくる(私見)イメージがある。
意味 (1)急に入りこむ。「闖入チンニュウ」(突然、無断で入り込むこと)「闖将チンショウ」(荒武者。ならずもの)「闖子チンシ」(暴れん坊)「闖然チンゼン」(だしぬけに頭を出すさま)(2)うかがう。ねらう。
 メ・バ  王部 mǎ
 瑪瑙メノウ
解字 「王(玉)+馬(うま)」の会意形声。馬の脳に似た宝石の意から、馬に王偏を付けた字。同じく、脳に王をつけた瑙ノウとともに瑪瑙メノウとして使われる。
意味 瑪瑙メノウに用いられる字。瑪瑙とは、石英・蛋白石などの結晶の混合物。赤褐色・緑・白などの美しい縞模様があり、装飾品・彫刻材料などに用いられる。
 メ・マ・バ  石部 mǎ
解字 「石(貴石)+馬(うま)」の会意形声。馬の脳に似た貴石の意から、馬に石偏を付けた字。同じく、脳に石をつけた碯ノウとともに碼碯メノウとして使われる。
意味 (1)碼碯メノウ(=瑪瑙)に用いられる字。碼碯とは、石英・蛋白石などの結晶の混合物。瑪瑙とも書く。(2)数を示す符号。「号碼ゴウマ」(中国語で番号の意)(3)「碼ヤード(yard)」英語のヤード(yard)の音訳字。1ヤードは91.44㎝。

形声字
 マ・ボ・モ  女部 mā
解字 「女(おんな)+馬(マ)」の形声。マはママ(mama・母親)のマを表す語として用いられる。馬の発音「マ」は唐音(宋~清代)で比較的新しい発音。
意味 おかあさん。「媽媽ママ」(おかあさん。中国で俗語として使われたが、今日では母親の意の口語として定着している。簡体字は妈妈māmā)


     ヒツ <二頭のならんだ馬>
 ヒツ・ひき  匸部 pǐ 

解字 金文は 厂(屋根)の下にいる馬の尻(尾を含む)が二つ見える形とされ、並んでいる馬を二つ描いた形の象形。金文では並ぶ馬の数を表す量詞の「馬四匹」という語がある。転じて、たぐい・仲間の意に用いる。日本ではさらに獣・魚・虫などを数える言葉とする。字形は篆文で形が変化し現代字は匹になった。
意味 (1)ひき(匹)。二つがならぶ。対になる。なかま。「匹敵ヒッテキ」(ほぼ対等であること)「匹偶ヒツグウ」(相手になること。結婚すること)(2)ありふれた。つまらない。「匹夫ヒップ」(①ひとりの男。②身分の低い男)「匹婦ヒップ」(3)馬や動物を数える言葉。「猫一匹いっぴき」(4)布の長さの単位。古くは四丈を一匹とした。「匹絹ヒツケン」(四丈の長さの絹布)
<紫色は常用漢字>

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音符「散サン」<葉がちる> と 「霰サン」「繖サン」「撒サツ」

2024年05月13日 | 漢字の音符
  改訂しました。
 サン・ちる・ちらす・ちらかす・ちらかる  攵部

解字 甲骨文は手にもった棒で木々をたたく形。木の葉を表す二点を加えて、葉が散る形。しかし、意味は地名またはその長[甲骨文字辞典]。金文は木々⇒竹に、木の葉の二つの点⇒月(肉月)、手にもった棒⇒攴に変化した。意味は国名で周代に陝西省にあった小国。篆文は、木木⇒𣏟(木木の変形)になり[説文解字注]は「雑然とちぎれた肉。分離なり」などと肉がちぎれたさまとする。現代字はさらに、𣏟⇒龷に、攴⇒攵に変化した散になった。意味の源流は甲骨文にあり、木々を棒でたたいて、葉が「散る」意。葉が散る意から、ちる・ちらかる。散った葉が、あてもない・とりとめない意となる。
意味 (1)ちる(散る)。ちらす(散らす)。ちらかす(散らかす)。「散乱サンラン」「解散カイサン」(2)こなぐすり。「散薬サンヤク」(3)自由な。とりとめない。「散文サンブン」「散歩サンポ」(4)ひまな。「閑散カンサン」(5)ばら(散)。ばらまく(散蒔く)。「散銭ばらせん」(こぜに。はした銭)(6)地名。「散関サンカン」(陝西省の西部・大散嶺(山岳地帯で交通の要地)にある関所。金文で陝西省の小国とされた地域)

イメージ 
 「ちる・ちらす」
(散・撒・霰)
 「形声字」(繖)
音の変化  サン:散・霰・繖  サツ:撒

ちる・ちらす
 サツ・サン・まく  扌部
解字 「扌(手)+散(ちらす)」の会意形声。手で散らす、すなわち、撒(ま)くこと。サンの発音は散に影響を受けた慣用音。
意味 まく(撒く)。まきちらす。「撒布サツフ・サンプ」(=散布)「撒水サツスイ・サンスイ」(=散水)「撒き餌まきえ
 サン・セン・あられ  雨部
解字 「雨(あめ)+散(ちる)」の会意形声。雨が雲の中で冷やされて氷粒となり、ぱらぱらと散って降るもの。
意味 (1)あられ(霰)。雲から降る直径5mm未満の氷粒。5mm以上のものは雹(ひょう)として区別される。「雪霰ゆきあられ」(雪の周りに水滴がついたもの)「氷霰こおりあられ」(霰の外側に氷の層ができたもの)(2)霰のかたちをしたもの。「霰餅あられもち」(①賽サイの目(さいころのような小立方体)に切って干した餅。②小さく切って煎った餅に味付けした焼菓子)

形声字
 サン・きぬがさ  糸部
解字 「糸(=絹・きぬ)+散(サン)」の形声。サンは傘サンに通じ、絹を張った傘(かさ)をいう。後漢の[説文解字]は「蓋ガイ(おおい)也(なり)。糸に従い散サンの聲(声)」。北宋の字書[類篇]は「亦(また)傘サン(かさ)に作る」としている。

銅車馬上の繖蓋(きぬがさ)(「始皇帝と大兵馬俑展」より)
意味 (1)きぬがさ(繖)。かさ。衣笠。絹張りの長柄の傘。貴人の行列にさしかざす。「蓋繖ガイサン」(蓋も繖も、傘の意。=繖蓋サンガイ)「繖幄サンアク」(きぬがさ。きぬがさ状のとばり)「紫繖シサン」(紫色のきぬがさ)
「繖形花序サンケイカジョ」(多数の花が密集して傘の開いた形に咲くもの。ニンジンなど)

繖形花序・ニンジンの花「植物豆知識の頁 №45」

<紫色は常用漢字>

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音符「㥯イン」<うれえる> と 「隠イン」「癮イン」「穏オン」

2024年05月11日 | 漢字の音符
 イン・オン  心部 yǐn


  上が㥯イン、下が巫
解字 㥯インの篆文の上部は「爫(上の手)+工+又(手)」で、両手で呪具の工を持つ形。下の巫は、甲骨文と金文は呪具である工2つを組み合わせた形。古文(春秋戦国時代)は、工の両側に「人+口(▽)」を向きあわせて配し、下に両手をつけている。「人+口」は召で招く意で呪具を両手でもち神を招いている形。篆文で工の両側に人が向き合う形になり、現代字は「人+工+人」の巫になった。工をもち、神を招く巫女(みこ)を表す。ここで興味深いのは古文の下に両手が描かれていることである。工を両手でもつ形は㥯の上部と同じである(持ち方は異なる)。これは呪具を両手でもち神を招いている形ではないのか。とすると、下に心をつけた㥯インは何を意味するのか。[説文解字]は「謹(つつし)む也(なり)」とする。他の辞書をみると、①うれえる。②つつしむ。③かなしむ。などとなっているが熟語はない。おそらく神のお告げを見た巫女は、お告げの内容が良くなかったので、憂えたのであろう。
意味 ①うれえる。②つつしむ。③かなしむ。

イメージ 
 「うれえる」(㥯・隠・
 「形声字」(穏)
音の変化  イン:㥯・隠・  オン:穏

うれえる
 イン・かくす・かくれる  阝部 yǐn
解字 旧字はで「阝(おか)+㥯(うれえる)」の会意形声。神のお告げをみて、うれえた巫女が、①阝(おか)の裏側に隠れること。また、転じて、②隠すこと。二つの意味がある。[説文解字]は「蔽(おお)う也。㥯インの聲(声)」と覆い隠す意とするが、隠れる意味の熟語も多い。また、うれえる意味も残っている。新字体は「阝+ノツヨ心」の隠に変化。
意味 (1)かくす(隠す)。おおいかくす。「隠蔽インペイ」(おおいかくす)「隠語インゴ」(仲間だけに通じる語)(2)かくれる(隠れる)。「隠居インキョ」「隠退インタイ」(隠れ退く)「隠滅インメツ」(隠れてみえない)(3)うれえる。あわれむ。「惻隠ソクイン」(いたわしく思う。あわれみ)(4)地名。「隠岐おき」(島根県の島。旧国名)
 イン  疒部 yǐn
解字 「疒(やまい)+(かくれる)」の会意形声。隠れている病の意で、中毒症・悪癖をいう。
意味 (1)中毒症状。悪癖。「煙癮エンイン」(タバコ中毒)「酒癮シュイン」(酒ぐせ)(2)過敏症。皮膚病の一種。「癮疹インシン」(過敏症による皮膚疾患。蕁麻疹)

形声字
 オン・おだやか  禾部 wěn
解字 旧字はで「禾(いね)+(イン⇒オン)」の形声。オンは温オン(おだやか)に通じ、禾(いね)が実り、暮らしが穏(おだ)やかなこと。新字体は「禾+ノツヨ心」の穏に変化。
意味 おだやか(穏やか)。やすらか(穏らか)。ゆったりしている。「穏健オンケン」(穏やかで健全)「穏当オントウ」(穏やかで妥当な)「穏和オンワ」(穏やかで和やか)「穏便オンビン」(穏やかに事を荒立てない)「安穏アンノン」(安らかに穏やか。発音は「アンオン」の連声レンジョウ変化。an-on⇒an-non )
<紫色は常用漢字>

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音符「肉ニク」<にく>「炙シャ」と「宍ニク」<しし>と「肉月部」

2024年05月09日 | 漢字の音符
 ニク・ジク  肉部 ròu           

上は肉、下は月
解字 上図の肉は、切り取った獣肉の象形。甲骨文字からあるが、金文と篆文で月(下図)と似たかたちになる。現代字は肉となり、はっきり区別できるが、篆文で部首として使われた字は、現在も月で表されるので、この月は肉月(にくづき)とよばれる。
意味 (1)にく(肉)。み。しし。特に食用の獣肉。「肉食ニクショク」(2)生身のからだ。「肉体ニクタイ」「肉薄ニクハク」(身をもって迫る。薄は迫る意)(3)血のつながった。「肉親ニクシン」(4)じかに。器具などを使わない。「肉眼ニクガン」「肉声ニクセイ」(5)肉に似たやわらかく厚みのあるもの。「果肉カニク」「朱肉シュニク

イメージ 
 「にく」
(肉・炙)
 「その他」(宍)
音の変化  ニク:肉・宍  シャ:炙

に く
 シャ・セキ・あぶる  火部 zhì

解字 「火+月(にく)」の会意。月は肉月のかたちで肉の意。炙は、肉を火であぶる形。
意味 (1)あぶる(炙る)。火にあてて軽く焼く。「炙(あぶ)り焼き」 (2)あぶり肉。「膾炙カイシャ」(膾は、なます(中国で細かく切った生の肉)、炙はあぶり肉、ともに美味で人が賞味するもの)「人口に膾炙カイシャする」(なますとあぶり肉が多くの人に好まれるように、人々の口にのぼり(話題になり)知れ渡ること) (3)薫陶をうける。親しく教えをうける。親しく交わる。「親炙シンシャ」(親しく接して感化をうける)

その他
 ニク・しし  宀部 ròu
解字 「宀(たてもの)+六(ニク)」の形声。ニクは肉ニクに通じ、宍は肉をうる店の意。転じて肉を表す。[学研漢和]は、六ロクは江南方言でニクと混同するとしている。また一説に、中国・六朝時代に肉の変形字として成立したとされ、肉の上部⇒宀、肉内部の仌⇒六、に変化したという。この説では、宍は肉の俗字になる。
意味 (1)しし(宍)。獣類の肉。肉の俗字。「宍人ししびと」(肉類を料理する人) (2)姓。「宍戸ししど」 (3)地名。「宍粟市しそうシ」(兵庫県宍粟郡の4町(山崎町、一宮町、波賀町、千種町)が合併して2005年4月1日誕生した市。
「宍粟郡しそうグン」(播磨はりま国(今の兵庫県南西部)の郡。もと宍禾(しさわ)の郡(こおり)と云った。郡名の禾は漢代まで粟の意味であり(その後、稲の意)、宍禾の「しし・あわ」がなまって「しさわ」となり、その後、禾⇒粟に変化した宍粟(しさわ)になった。現在は宍粟しそうの発音。郡名の由来は、①山間の地であり、鹿ししと禾・粟(あわ)が多い土地。②鹿ししに遇あうことの多い土地。鹿⇒宍に、遇(あう⇒あわ)⇒禾・粟、になった、という2説がある。
「宍道湖しんじこ」(島根半島に南側にある汽水湖)
「宍道しんじ」は、宍しし(猪いのしし)+道みち(=路じ)」であり、猪が通った道の意。風土記の伝説に「当地で命(みこと)が狩をしたとき、犬に追いかけられた猪が逃げたところで、ここを宍道(ししじ⇒しんじ)という」とあり、松江市宍道町の「石宮(いしみや)神社」の神体石と鳥居の脇に鎮座する2つの巨石が猪石と犬石と名付けられている。「宍道湖しんじこ」は宍道の先にある湖の意。
<紫色は常用漢字>

参考 ニクは、部首「肉にく」になる。肉部は非常に少なく、主な字は腐(肉+音符「府」)しかない。部首「肉にく」が変形したかたちが「月にくづきである。左辺や下部に付き、肉および人の身体の意味を表す。現在、月(つき)と同じ形になっているので、見分けるには個々の字にあたって判断が必要である。この他に舟のかたちが変化した舟月がある。
常用漢字
(にく)部 2字
 ニク・ジク (部首)
 フ・くさる(肉+音符「府フ」)
肉月(にくづき)部 43字 肉や肉体の一部分などを表す。
 ユウ・ある(月+音符「又ユウ」)
 キ・はだ(月+音符「几キ」)
 ショウ・にる(月+音符「小ショウ」)
 チュウ・ひじ(月+音符「寸スン」)
 カン・きも(月+音符「干カン」)
 コ・また(月+音符「殳シュ」)
 (月+音符「支シ」)
 ケン・かた(月+戸コの会意)
 ホウ・あぶら(月+音符「方ホウ」)
 ハイ(月+音符「市ハイ」)
 タン(月+音符「旦タン」)
 ハイ・せ(月+音符「北ホク」)
 タイ・はらむ(月+音符「台タイ」)
 ホウ・えな(月+音符「包ホウ」)
 ドウ(月+音符「同ドウ」)
 キョウ・むね(月+音符「匈キョウ」)
 シ・あぶら(月+音符「旨シ」)
 キョウ・おびやかす(月+音符「劦キョウ」)
 キョウ・わき(月+音符「劦キョウ」)
 キャク・あし(月+音符「却キャク」)
 ダツ・ぬぐ(月+音符「兌エツ」)
 ノウ(月+音符「𡿺ノウ」)
 ジン(月+音符「臤ケン」)
 ワン・うで(月+音符「宛エン」)
 シュ・はれる(月+音符「重ジュウ」)
 チョウ・はらわた(月+音符「昜ヨウ」)
 フク・はら(月+音符「复フク」)
 セン・すじ(月+音符「泉セン」)
 マク(月+音符「莫ボ」)
 シツ・ひざ(月+音符「桼シツ」)
 ボウ・ふくらむ(月+音符「彭ホウ」)
 ゼン(月+音符「善ゼン」)
 オク(月+音符「意イ」)
 ゾウ(月+音符「蔵ゾウ」)
 ヨウ・こし(月+音符「要ヨウ」)
 ヒ・こえる(月+巴の会意)
 コウ・うなずく(月+止の会意)
 イク・そだつ(月+𠫓(生まれ出た子)の会意)
 (月+田の会意)
 ミャク(月+𠂢ハイの会意)
 セキ・せ(月を含む会意)
 フ・はだ(月+盧の略体)
 ノウ・よく(月を含む象形)
  このうち会意の胃・脊セキ・能ノウは音符となる。
ふな月 2字 舟やうつわの意味を表す。
 服フク・したがう(月(うつわ)+音符「𠬝フク」)
 朕チン・われ(月(うつわ)+音符「关ソウ」)

<参考>
 タ・おおい  夕部

解字 「夕(にく)+夕(にく)」の会意。肉をたくさん重ねたかたち。おおい意を表わす。夕は、夕がたの「夕」と同じ形であるが、ここでは肉の意。
意味 おおい(多い)。たくさん。「多額タガク」「多彩タサイ」「過多カタ」(多すぎる)「多寡タカ」(多い少ない)
 イメージ 
 「多くの肉」
(多・侈) 
 「形声字」(移)
音の変化  タ:多  イ:移  シ:侈
音符「多タ」を参照。

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音符「無ム・ブ」<両手に飾りを持って舞う人> と 「舞ブ」「憮ブ」「蕪ブ」「廡ブ」「嘸ブ」「撫ブ」

2024年05月07日 | 漢字の音符
 増訂しました。
 ム・ブ・ない  灬部れっか wú

解字 甲骨文は、人が両手に飾りを持って舞うさまの象形。篆文も同じ意味を表わし、舞の原字。隷書(漢代)から形が大きく変化し現代字の無になった。もともと雨乞いの舞いを意味したが、発音のム・ブが、无(ム・ブ:亡の異体字で、ない・なしの意)に通じ、「ない」の意味に仮借カシャ(当て字)された。のち、この字に両足を外に向かって開く形の舛センを付けた舞が「まい」の字となった[字統]。
 因みに中国簡体字は无ム・ブを最大限に利用し、無⇒无wú、憮⇒怃wǔ、蕪⇒芜wú、廡⇒庑wǔ、嘸⇒呒fǔ、撫⇒抚fǔとし、舞だけが舞⇒舞wǔとして残っている。
意味 (1)ない(無い)。存在しない。「無言ムゴン」「無休ムキュウ」「無事ブジ」 (2)打ち消 しを表わす助字。「無罪ムザイ」「無名ムメイ

イメージ 
 「ない(仮借)」
(無・憮・蕪・廡・嘸)
 「まう」(舞) 
 「形声字」(撫)
音の変化  ム・ブ:無  ブ:憮・蕪・廡・嘸・舞・撫

ない  
 ブ  忄部 wǔ
解字 「忄(心)+無(ない)」の会意形声。心がない状態。むなしい気持ちをいう。
意味 がっかりする。「憮然ブゼン」(がっかりするさま)
 ブ・かぶ  艸部 wú
解字 「艸(草)+無(ない)」の会意形声。艸(草)が他のものを無くすこと。すなわち雑草が生い茂り地面をかくすこと。草が茂って、あれる意となる。日本では、漢語で蕪菁ブセイの根が、かぶらであることから、かぶらに当てる。
意味 (1)あれる。雑草が生い茂る。「蕪穢ブアイ・ブワイ」(土地があれて雑草が生い茂る)「荒蕪コウブ」(土地が荒れて雑草が茂る)「荒蕪地コウブチ」(野放しの状態で自然と荒れ地になった土地) (2)みだれる。「蕪雑ブザツ」(雑然としていること)

蕪菁ブセイ(「国家中医薬名詞述語」より)
「蕪菁ブセイ」とは、中国で漢方薬として用いられる植物。根及び葉を熟(に)て搗き患部に当てたり飲用する。消化促進・解毒・腫(むく)み解消など。(3)[国]かぶら(蕪)。かぶ(蕪)。根が球状になる野菜。根と葉を食用とする。蕪菁ブセイとも書く。(4)人名。「与謝蕪村ヨサブソン」(江戸期の俳人)
 ブ・のき  广部 wǔ
解字 「广(やね)+無(ない)」の会意形声。屋根の下に建築物の部分がないところ、即ち、ひさし・のきをいう。
意味 (1)のき(廡)。ひさし(廡)。「廡下ブカ」(のきした) (2)堂の下の廊下。「両廡リョウブ」(本堂の両脇の廊下)
 ブ・さぞ  口部 fǔ
解字 「口(くち)+無(ない)」の会意形声。口から何も言葉がないこと。日本では、人が何も言わないさまを見て、推測する気持ちをあらわす。
意味 (1)何も言わない。また、そのさま。「嘸然ブゼン」(物を言わず考え込む。=憮然) (2)[日本]さぞ(嘸)。さぞや(嘸や)。さぞかし(嘸かし)。さだめし。もっともだろうよ。下に推量の語をともなう。「嘸さぞや辛かったことだろう」

まう
 ブ・まう・まい  舛部ます wǔ

解字 甲骨文は、無と同じく人が両手に飾りを持って舞うさまの象形。この字が「ない」の意味に仮借カシャ(当て字)されたため、篆文以降、下部に左右の足が開くかたちの舛センを付けて「舞う」意を表わした。現代字は「舛(左右の足が開く)+無の略体(まう)」の会意形声。
意味 (1)まう(舞う)。まい(舞)。おどる。「舞台ブタイ」「舞踊ブヨウ」「舞姫まいひめ」 (2)ふるいたたせる。「鼓舞コブ

形声字
 ブ・フ・なでる  扌部 fǔ
解字 「扌(手)+無(フ)」の形声。フは付(つける)に通じ、手を人の身体につけること、すなわち、なでる意となる。拊(なでる)と同じ。撫は慣用音。
意味 (1)なでる(撫でる)。さする。なぐさめる。「愛撫アイブ」(なでてかわいがる)「撫慰ブイ」(いたわりなぐさめる) (2)いつくしむ。「撫育ブイク」(いつくしみ育てる)(3)しずめる。おさえる。「鎮撫チンブ」(乱をしずめ民を安んじる)

カワラナデシコ(「ウィキペディア」より)
(4)[国]「撫子なでしこ」とは、ナデシコ科の多年草。秋の七草のひとつ。子を撫でるように愛しむ花の意。「大和撫子やまとなでしこ」(①ナデシコの異称、②日本女性の美称)「なでしこジャパン」(サッカー日本女子代表の愛称)
<紫色は常用漢字>

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音符「愛アイ」<心の中がいっぱいになる> と「曖アイ」「噯アイ」「靉アイ」」「薆アイ」

2024年05月05日 | 漢字の音符
アイ・いとしい・めでる  心部  ài


 上は愛、下は旡
解字 下の旡の甲骨文字は、ひざまずく人が後ろを向いて口を開いている形の象形。甲骨文字ではご馳走を盛った食器の傍らに旡が置かれ、ご馳走を食べ終わり、満腹して後ろを向いてあくびをする形の既(旣)キがあり、食べることが「すでに終わる・(お腹が)いっぱいになる」意となる。戦国は[説文解字]の古文と同じ時代で、甲骨のひざまずく人⇒脚をひろげた形に変化している。篆文の愛は「旡(満ち足りて後ろを振り返る人=既。説文古文の変化形)+心(こころ)+夊(下向きの足)」の会意。心が満ち足りて、夊スイ(足)でたたずむ人のかたち。愛の本来の意味は心に満ちる意で、転じて心に満ちる対象となる物を愛する意となる。漢代の隷書の変化をへて現代字は、旡⇒「ノツ冖」に変化し、夊⇒夂に変化した愛になった。 
意味 (1)あいする(愛する)。いとしい(愛しい)。かわいがる。「愛育アイイク」「愛犬アイケン」 (2)異性を恋いしたう。「恋愛レンアイ」 (3)めでる(愛でる)。このむ。「愛好アイコウ」「愛用アイヨウ」 (4)大切にする。「愛護アイゴ」「自愛ジアイ

イメージ  
 「あいする」(愛)
 心に満ちる意から「おおわれる」(曖・靉・薆)
 「形声字」(噯)
音の変化  アイ:愛・噯・曖・靉・薆

おおわれる
アイ・くらい  日部 ài
解字 「日(ひ)+愛(おおわれる)」の会意形声。日がおおわれて陰(かげ)ること。
意味 (1)くらい(曖い)。ほの暗い。「曖然アイゼン」(うす暗いさま) (2)かげる。日がかげって明らかでない。「曖昧アイマイ」(はっきりしない)
 アイ  雨部 ài
解字 「雲(くも)+愛(おおわれる)」の会意形声。雲でおおわれること。
意味 雲がたなびく。「靉靉アイアイ」(①雲がさかんにたなびくさま。②樹木がさかんに茂るさま)「靉靆アイタイ」(①雲がたなびいているさま。 ②暗いさま)
 アイ  艸部 ài
解字 「艸(くさ)+愛(おおわれる)」の会意形声。草におおわれること。また、おおわれてくらいこと。
意味 (1)かくす。おおう。かげる。「薆薆アイアイ」(かげる) (2)草木が茂る。「蓊薆オウアイ」(草木がしげるさま) (3)くらい。「薆然アイゼン」(くらいさま)「薆昧アイマイ」(くらい)

形声字
 アイ・おくび・ああ  口部 ǎi・ài・āi
解字 「口(くち)+愛(アイ)」の形声。口からでる息を噯アイという。また、おくび(げっぷ)の意味で用いる。
意味 (1)ああ(噯)。おや。まあ。口から出る感動や感嘆の声。また、応答を表す言葉。 (2)おくび(噯)。げっぷ。胃の中にたまったガスが口から出たもの。「噯気アイキ・おくび」「噯気(おくび)にもださぬ」(心で思っていても、そぶりに出さないこと)
<紫色は常用漢字>

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音符「孰ジュク」<煮炊きする>と「熟ジュク」「塾ジュク」 

2024年05月03日 | 漢字の音符
 ジュク・たれ・いずれ  子部

解字 甲骨文は、「先祖を祀る建物+人が手をだす形」。先祖を祀る建物は篆文で亯キョウになる字。[漢字字形史字典]は、「殷代には祭祀名として使用されており、建物で行われる儀礼の様子を示したものであろう」とする。金文は女を追加した形などが用いられたが祖先神に飲食物をたてまつって、祖先神をもてなす意を表わす。篆文は「亯キョウ(先祖を祀る建物)+羊(ひつじ)+丮ケキ(人が両手を出す形)」の会意となり、人が羊の肉の料理で祖先神をもてなす形。現代字は、亯⇒享に、丮⇒丸に変化し、羊が略されたが、羊の肉を煮炊きすることから、煮る意がある。しかし、本来の意味でなく、「たれ・だれか」「いずれ・いずれか」の意に仮借カシャ(当て字)された。
意味 (1)たれ(孰)。たれか(孰か)。 (2)いずれ(孰れ)。いずれか(孰れか)。「孰方どちら」「孰方どっち」「孰賢」(孰(いずれ)か賢(まさ)れる) 「師與商也孰賢」(師と(與)商と孰(いず)れ也(や)賢(まさ)れる」(論語)。 (3)にる(煮る)。にえる。  

イメージ 
 「仮借カシャ(当て字)」
(孰)
 「にる」(熟・塾)
音の変化  ジュク:孰・熟・塾

にる
 ジュク・うれる  灬部
解字 「灬(火)+孰(にる)」の会意形声。火でにること。孰が「たれ・いずれ」の意味に使われるようになったので、灬を付けて「にる」意とした。転じて、果実や穀物がうれる・みのる、また「じゅうぶんに」の意ともなる。
意味  (1)にる(煮る)。にえる。「半熟ハンジュク」「熟食ジュクショク」(よく煮た食べ物。また、それを食べること) (2)うれる(熟れる)。みのる。そだつ。「成熟セイジュク」「早熟ソウジュク」 (3)じゅうぶんに。よくよく。「熟練ジュクレン」「熟読ジュクドク
 ジュク  土部
解字 「土(つち)+孰(=熟。みのる・そだつ)」の会意形声。土がこいの部屋で子供を教育(みのる・そだつ)すること。
意味 (1)まなびや。学舎。昔、門の両側の建物で家中の子弟を教えたのに基づく。「塾舎ジュクシャ」「塾生ジュクセイ」「学習塾ガクシュウジュク」「義塾ギジュク」(義捐ギエン金で公益のために設けた塾) (2)もんべや(門部屋)。長屋門の両側にある土壁の建物。門番や使用人が住んだ。「門塾モンジュク」(門脇の部屋)
<紫色は常用漢字>

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