心身社会研究所 自然堂のブログ

からだ・こころ・社会をめぐる日々の雑感・随想

温泉つかると腸内細菌叢が整う?

2024-05-14 08:22:22 | 健康・病と医療

九州大学大学院工学研究院都市システム学講座の馬奈木俊介主幹教授(兼:九州大学都市研究センター長)と武田美都里特任助教らの研究グループは、

別府市と別府市旅館ホテル組合連合会と共同して温泉の効果の検証を行なってきましたが、

今回、2021年6⽉~2022年7⽉に、九州地方在住の18歳~65歳の健康な成⼈136人(男性80人、⼥性56人)を対象に、

別府温泉の異なる5泉質(単純泉、塩化物泉、炭酸⽔素塩泉、硫⻩泉)に7⽇間連続して⼊浴してもらい

(⼊浴時間は毎⽇20分以上とし、かつ通常通りの⾷⽣活を維持する)、

温泉入浴前後における腸内細菌叢の変化を、16S rRNA遺伝⼦アンプリコンシーケンシングにより測定し、分析しました。

 

その結果、炭酸水素塩泉入浴によりビフィズス菌の一種(Bifidobacterium bifidum)が有意に増加することが明らかになりました。

他にも、単純泉、炭酸水素塩泉、硫黄泉での入浴後には、それぞれ異なる腸内細菌叢の有意な変化のあることが確認されました。

本研究結果から、炭酸水素塩泉への入浴がビフィズス菌を増加させ、健康効果につながる可能性を示唆しています。

また、泉質ごとに異なる効能として、腸内細菌叢が関連している可能性を示しました。

 

<文 献>

Takeda, M.,  Choi, J., Maeda, T. & Managi, S., 2024  Effects of bathing in different hot spring types on Japanese gut microbiota, in Scientific Reports, vol. 14, no.1.

    DOI:10.1038/s41598-024-52895-7.

 

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心身相関におけるポリヴェーガル理論の意義

2024-05-02 21:10:33 | ポリヴェーガル理論

私が昨年7月に、日本心身医学会総会で行なった講演「心身相関におけるポリヴェーガル理論の意義」の原稿が、

その機関誌『心身医学』に掲載され、このたび公刊されました。

以下、ご笑覧下さい。

 

はじめに
 心身相関を,脳の中枢と身体の末梢の間の双方向的な相互関係と捉え直すならば,その媒介変数として,自律神経系の働きの意義が改めて注目される.その観点から,心臓の精神生理学的研究を通して,自律神経系について新たな見方を提示したのが「ポリヴェーガル理論」である.本稿ではこの理論が何を主張し,心身相関にどのように新たな見方を提示するものであるか,その意義と課題は何かについて,簡単にまとめておく.さらに詳細は,類書を参照されたい.


背景と現況
 この理論の提唱者Stephen W. Porges(1945~)は,もともと心臓の精神生理学(心拍変動と自律神経)の研究者で,その長年の研究の到達点として,1994年10月8日,この年学会長だった「精神生理学会」の講演で初めて発表したのがポリヴェーガル理論である.その講演原稿が翌95年に同学会誌に発表され,これに以後の関連論文計19編を合わせて2011年に大著『Polyvagal Theory』が上梓され,同理論は広く知られるようになった.以後続いて2017年,2021 年に単著が,2018年,2023年には共著が,公刊されている.
 こうしてPorgesは臨床家でなく純然たる研究者であるが,決して象牙の塔に安住することなく,一貫して臨床応用への高い関心をもつ研究者であり続けてきた.すでに若き1980年代には,呼吸性洞性不整脈(RSA)の研究がハイリスク新生児のスクリーニングに応用され,次いで2000年前後からは,ポリヴェーガル理論に基づき,自閉スペクトラム症(ASD)児の聴覚過敏や社会性低下を改善するプロジェクトが試みられ(今日“Safe and Sound Protocol:SSP”として結実),そして2011年の大著刊行後には,この理論を最も有名にしたトラウマ臨床,およびトラウマ関連障害の現代的な病態への応用が大きく発展した.
 特に1980年前後以降,日本を含む先進諸国では,うつや不安障害の遷延化,ストレスだけでなくトラウマ(トラウマティック・ストレス),抑圧だけでなく解離,各種の機能性の心身疾患,発達障害などの顕在化につれて,新たな治療パラダイムが求められるなか,ポリヴェーガル理論はその有力な理論的支柱たりうる斬新な学説として世界的に注目されるに至ったのである.
 もっともこの国では,2018年の邦訳刊行以降,正確な理解もないままに,この理論の神経学的根拠も放擲し,媒介変数としての自律神経系の位置づけも捨象した,あたかも自律神経系を独立変数のごとくに宣揚するバブリーな“紹介”と安直な“臨床応用”ばかりが先行し,他方それに幻惑されるあまり,自律神経系をあたかも従属変数のごとくに主張する浅薄な“批判”が飛び交う事態ともなっている.
 そこで本稿では,原点に立ち戻って,ポリヴェーガル理論が神経学的に何を明らかにし,どのように新しい自律神経の理論であるのか,またそこから心身相関にどう寄与しうるのかなどについて,考察を進めることとする.

 

→この続き、そして全文は、こちらで読むことができます。

 

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医師の共感度が高いほど患者の腰痛が改善する!

2024-05-02 08:20:52 | 健康・病と医療

アメリカのUniversity of North Texas Health Science CenterのJohn C. Licciardone氏らは、

患者評価による医師の共感度が高いほど12ヵ月にわたる患者の痛み、機能、健康関連QOL(HRQOL)が良好であることを明らかにしました。

 

対象者は、2016年4月1日~2023年7月25日にThe Pain Registry for Epidemiological, Clinical, and Interventional Studies and Innovation(PRECISION)

に登録された21~79歳の慢性腰痛患者(3ヵ月以上継続したもの)を12ヵ月間追跡したものです。

 

医師の共感度は、CARE Measure(患者の視点で医師の共感度を評価するツール)を用いて評価され、

10項目を1(poor)~5(excellent)点で評価し、合計スコアが30点以上の場合に「非常に共感的」、

29点以下の場合に「わずかに共感的」な医師と分類されました。

主なアウトカムは、患者報告による痛み、機能、HRQOLが検討され、登録時および3ヵ月ごとの診察の際にデータが収集され、

そのデータは時間的傾向を測定し、ベースラインおよび長期的な共変量を調整するために、

多変量モデルを含む一般化推定方程式を用いて解析されました。

 

解析には、1,470例が組み込まれ、平均年齢は53.1(SD 13.2)歳。女性が1,093例(74.4%)。

医師を「非常に共感的」と評価した患者群と「わずかに共感的」と評価した患者群のベースライン特性はおおむね同等でした。 

 

その結果、医師の共感度が高いほど、患者の12ヵ月後のアウトカムが良好であることが判明しました。

 ・痛みの強さ β=-0.014、95%信頼区間[CI]:-0.022~-0.006、p<0.001

 ・腰痛関連障害 β=-0.062、95%CI:-0.085~-0.040、p<0.001

 ・HRQOL障害(例:痛みによる生活障害) β=-0.080、95%CI:-0.111~-0.049、p<0.001)

 

また、「わずかに共感的」と評価した群と比較して、「非常に共感的」と評価した群の患者では、

痛みの強さや腰痛関連障害、HRQOL障害の平均スコアが有意に低く出ました。

 

そして、医師の共感は、非薬物療法やオピオイド療法、腰椎手術よりも良好な結果と関連することが明らかになりました。

 

 <文 献>

Licciardone, J. C., Tran, Y., Ngo, K., Toledo, D., Peddireddy, N. & Aryal, S., 2024  Physician Empathy and Chronic Pain Outcomes, in JAMA network open, vol.7, no.4. e246026. pii: e246026.

 

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血糖値低下はショウガが三冠王!

2024-03-25 08:58:26 | 健康・病と医療

血糖値低下はショウガが三冠王!

 スペインZaragoza大学のMaria C. Garza氏らは、2023年9月までPubMed、Web of Science、Scopusの各データベースを検索し、

地中海食に一般的に含まれるハーブ/スパイス(ブラッククミン、クローブ、パセリ、サフラン、タイム、ショウガ、黒コショウ、ローズマリー、ターメリック、バジル、オレガノ、

シナモン)が2型糖尿病患者の血糖プロファイルにどのくらい影響を及ぼすかについて、

システマティックレビューおよびメタ解析を行なった結果(77論文をシステマティックレビューの対象とし、そのうち45(3050例)をメタ解析の対象としたもの)、

いくつかのハーブ/スパイス、なかでも特にショウガの摂取が空腹時血糖、HbA1cおよびインスリン値の低下に有意に関することを明らかにしました。

具体的には――

 

空腹時血糖値が有意に改善したのは、ブラッククミン、シナモン、ショウガ、ターメリック、サフラン(以下、カッコ内は95%信頼区間)。

 ・ブラッククミン摂取群:26.33mg/dL低下(-39.89~-12.77、p=0.0001)

 ・シナモン摂取群:18.67mg/dL低下(-27.24~-10.10、p<0.001)

 ・ショウガ摂取群:17.12mg/dL低下(-29.60~-4.64、p=0.0004)

 ・ターメリック摂取群:12.55mg/dL低下(-14.18~-10.86、p<0.001)

 ・サフラン摂取群:7.06mg/dL低下(-13.01~-1.10、p=0.020)

 

HbA1cが有意に改善したのは、ショウガとブラッククミンであった。

 ・ショウガ摂取群:0.56%低下(-0.90~-0.22、p=0.0013)

 ・ブラッククミン摂取群:0.41%低下(-0.81~-0.02、p=0.0409)

 

インスリン値が有意に改善したのは、ショウガとシナモンであった。

 ・ショウガ摂取群:1.69 IU/μL低下(-2.66~-0.72、p=0.0006)

 ・シナモン摂取群:0.76 IU/μL低下(-1.13~-0.39、p<0.0001)

 

※各ハーブ/スパイスの最も一般的な摂取量は、ブラッククミン:500mg、シナモン:1,000mg、ショウガ:2,000mg、ターメリック:2,000mg、サフラン:30~100mg。

 

 著者らは、本研究の限界として「それぞれのハーブ/スパイスの用量が不均一であるため、有効用量を考慮することはできなかった」ことなどを挙げつつも、

「ショウガは、地中海食のハーブ/スパイスの中で、空腹時血糖、HbA1cおよびインスリン値の3つの検査結果すべてに有意な影響をもたらす独特のものであるようだ」と

まとめています。

 

<文 献>

Garza MC, et al., 2024  Effect of Aromatic Herbs and Spices Present in the Mediterranean Diet on the Glycemic Profile in Type 2 Diabetes Subjects: A Systematic Review and Meta-Analysis, in Nutrients, vol. 16, no.6, p.756. https://doi.org/10.3390/nu16060756

 

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ADHDと精神疾患リスクの関連

2024-03-07 08:45:18 | 健康・病と医療

ADHDのさまざまな精神疾患との合併率の高さが、これまで観察研究や診断基準などから示唆されてきていましたが、

このたび、中国・重慶医科大学のYanwei Guo氏らが、ADHDと6つの精神疾患との潜在的な遺伝的関連性を調査するため、

メンデルランダム化(MR)研究を実施したところ、以下のような結果が得られたとのことです。


なお、この研究は、2サンプルのMRデザインを用いて、ADHDと6つの精神疾患のゲノムワイド関連研究(GWAS)に基づき、

遺伝的操作変数(IV)をシステマティックにスクリーニングしたもので、分析の主なアプローチとしては、逆分散重み付け(IVW)法が用いられています。



・IVW MR分析では、ADHDと自閉スペクトラム症リスクとの間に正の相関が認められた(オッズ比[OR]:2.328、95%信頼区間[CI]:1.241~4.368)。
・ADHDは、統合失調症のリスク増加に対する正の関連も認められた(OR:1.867、95%CI:1.260~2.767)。
・ADHDとチック症、知的障害、気分障害、不安症との関連は認められなかった。

 

ADHDはASDや統合失調症との合併のリスクが考えられ、気分障害との合併リスクはさほどではないようです。

 

<文 献>

Guo, Y., Li, J., Hu, R., Luo, H., Zhang, Z.,  Tan, J. & Luo, Q.,  2024  Associations between ADHD and risk of six psychiatric disorders: a Mendelian randomization study, in BMC psychiatry, vol.24, no.1,p.99. 

 

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