CLASS3103 三十三組

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【読書】スピノザの診察室

2024-05-04 21:00:48 | 読書感想文とか読み物レビウー
スピノザの診察室  作:夏川草介

期せずして、また京都のお話だった
京都にある終末医療の病院を舞台にした小説で、
大学病院から、事情があって、この小さい病院にきた
天才的な技術を持ちながらも、哲学的な思考も持ち合わせる
そんな人物を通して、医療とはなんぞと問いかけるような物語で
とても静かで、大きな起伏はないけども
退屈さのかけらもなく、さりとて、ずっとのめりこむほどの強烈さもないが、
ただ、面白く、静かに読める小説でありました

キャラクタの味付けがいいなとも思うのだけど、
多分扱っていることが、死生観でもあり、
医療が救うという根本の部分という、誰にでも身近のようで遠い内容なのが
説教臭くないけども、考えさせられるようになってて
うなるように読んでしまった

悲壮感みたいなのとは無縁とまではいわないけども、
人の死に際するところについて、いや、そもそも医者が死に向き合うというのが
医療の敗北ではないということなのかどうか、
もちろん、そういうわかりやすい教訓をたれるわけでもなく、
さりとて、死に行く人の幸せな時間を医療が補完しているというのは
ひとつの答えでもあるのだと思い知る内容になってて、とてもよかった

読むこちらが説教臭くなってしまいそうなテーマで、
その答えを直接は書かないし、それは一つの事例でしかないと
そういう物語だけど、いい意味で、こういう答えじゃないかと
前向きなものを見せてくれたようでもあって、
読後感がともかく気持ちよかった

起伏がないとか書いたけども
最終的には、物凄い見せ場があって、超絶かっこいい医術を見ることができるのが
また、カタルシスでもないが、静かな物語にとてもいいアクセントになってて
エンタメ的にも、凄い面白くなってるのが素敵で
大変楽しく読み終えたのである

静かだけどとても面白い小説だった


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