箕面三中もと校長から〜教育関係者のつぶやき〜

2015年度から2018年度に大阪府の箕面三中の校長を務めました。おもに学校教育と子育てに関する情報をのせています。

エレベーターの乗り方に成熟度がみえる

2021年06月09日 07時07分00秒 | エッセイ


国内では、エスカレーターの右か左のどちらかを空ける習慣・マナーは、1970年ごろに始まりました。

阪急電鉄が梅田駅で「エスカレーターは右側に立ち、お急ぎの方のため左側を空けてください』とアナウンスしました。

その後、ときは大阪万博(1970年)の頃で、当時は万博施設内で平面式のエスカレーターである「動く歩道」(ムービング・ウォーク)が活躍しました。

その後、そのムービング・ウォークは、阪急梅田駅と阪急百貨店を結ぶ通路に取り付けられました。(その後40年ほどたちましたが、いまもあります。)

そのときのアナウンスが、まさしく「エスカレーターは右側に立ち、お急ぎの方のため左側をお空けください』でした。

当時は高度経済成長下の「モーレツ社員」の時代でした。とにかく関西の人は歩くのが速い人が多いのです。

「速いことは美徳だ」のような価値観が加わり、関西ではエスカレーターの左側を空けるのが定着しました

これは関東圏では逆になり、エスカレーターの右側を空けるのが普通になって今にいたっています。

ところが、1990年代後半には「エスカレーターは歩かずに止まってお乗りください」というアナウンスが聞こえてくるようになりました。

これは高齢化が進む日本で、歩く人がいるとひっかけられ、転倒する高齢者がいるという事故を意識してのことだったと推測します。

でも,考えてみると、そもそもエスカレーターは歩くことを前提に設計されたものではなく、立ち止まり手すりを持って乗るものだと考えます。

しかし、一度身についた習慣を変えるのは、なかなか難しいのです。わたしなどは右側で立ち止まろうとすると、マナーを守らない人が右側で後ろから急かすように近づいてきます。

そのときに感じる雰囲気は「みんなが急いでいるのだから、立ち止まるなよ!」です。

とくに、新型コロナウイルス渦ではっきりしたように、日本では同調圧力がはたらき、「みんなが自粛しているのに、なぜ店を開けているのだ」となり、「まわりにしたがえ」という無言の圧力を感じます。

だから、じっと立ち止まっているのには少々勇気がいることもあるのです。

いまは、高度成長期も終わり、モーレツに働く価値観も昔の遺物となりました。
成熟時代には「エスカレーターは右に立つ、左に立つとかではなく、歩かない』という行動に価値を見いだすべきでないかと思います。

効率ばかり優先するのではなく、エスカレータに乗りながら転倒の危険を感じている人に思いをはせることができる成熟したおとなでありたいと思います。


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