つらつら日暮らし

怒りを離れる方法だそうだ

このような記事があった。

怒りを離れる方法 怒りを生じにくくするためのコツ(asahi.com)

アンガーマネジメントという概念がある。ちょうど記事では、「怒りが生じた時の対処のほか、怒りを生じにくくするためのトレーニングも含まれます。普段からストレスをため込む前に気分転換する方法を身につけておくことも大切です」などと書いており、怒りで「我を忘れる」状況を転じ、「今ここ」にある自己に気付いていく実践方法を提示している。まぁ、こういう方法もあるのだろうとは思う。

でも、生来の質というのもあって、中々怒りから離れることが難しい人もいることだろう。それで、色々と見ていたとき、怒りを離れる方法で、菩薩が取り得る内容を見出したので紹介し、検討しておきたい。

 復た次に、須菩提よ、菩薩摩訶薩、五地中に住して、十二法を遠離す。何等をか十二なるや。
 一つには、親白衣を遠離す。
 二つには、比丘尼を遠離す。
 三つには、慳惜の他家を遠離す。
 四つには、無益談説を遠離す。
 五つには、瞋恚を遠離す。
 六つには、自大を遠離す。
 七つには、蔑人を遠離す。
 八つには、十不善道を遠離す。
 九つには、大慢を遠離す。
 十には、自用を遠離す。
 十一には、顛倒を遠離す。
 十二には婬・怒・痴を遠離す。
 須菩提よ、是れを菩薩摩訶薩の五地中に住して十二事を遠離すと為す。
    『大品般若経』「発趣品第二十」


仏教では元々、「怒り(瞋恚)」を、我々が持つ根本的な煩悩である三毒の一と考えるから、当然にその対処法も発達していた・・・はずである。それで上記の一節を見出した。なお、この内、「怒り」に関わるのは、「五」と「十二」と2つある。「五」で離れておきながら、更に「十二」で三毒から離れるという内容で、とても興味深い。

何故こうなるのだろうか?

そのためには、同経典で考えている「五地」について考えて見なくてはならないと思った。なお、この場合の「五地」とは、菩薩の修行階梯である「十地」の一であるが、同経典にも註釈である『大智度論』にも詳細はなかった。まぁ、一般的なことだったということなのだろうか?それで、『大智度論』を見ると、この「十二法」について註釈があったため、それを見ていきたい。

「遠離瞋恚」とは、心中の初生を瞋心と名づく、以って未だ定まらざるが故に。瞋心、増長の事、定めり。打斫殺害す、是れを悩心と名づく。悪口讒謗す、是れを訟心と名づく。若し殺害打縛等なれば、是れを闘心と名づく。菩薩、大慈悲の衆生なるが故に、則ち是の心を生ぜず。常に此の悪心を防いで、得入せしめず。
    『大智度論』巻49・釈発趣品第二十


これを見ると、単純に「怒りの心」とはいいつつも、相手を殺害せんとするほどの強い気持ちを「悩心」といい、悪口をいい誹謗することを「訟心」といい、徹底して殺害する様子を「闘心」といっている。つまり、怒りの気持ちの種類ということになるだろうか。しかし、菩薩とは「大慈悲の衆生」であるからこそ、これらの心が起きず、これらの悪心を防ぐという。その意味で、「慈悲」の機能とは、相手に対して分け隔てがなく、許す気持ちを持つことだともいうが、慈悲を持つ者は、相手を傷つけたいという気持ちを持たずにいるから、当然に「瞋恚」の気持ちを起こさないといえる。慈悲の心を得る訓練は、重要である。


「遠離三毒」とは、三毒の義先に説くが如し。又た此の三毒の縁ずる所、定相有ること無し。
    同上


また、「三毒」についてはこのような説かれ方をし、省略されている。つまり、この「十二事」に何故、「怒りの心」について2つ出てくるのかは、よく分からないという話になってしまった・・・

でも、慈悲なんだなぁ。この思い、やっぱりちゃんと学んでみなければならないなぁ。

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コメント一覧

tenjin95
コメントありがとうございます。
> Hindou さん

確かに、「瞋恚」には、様々な害悪が指摘されることが多く、中国・日本では、瞋恚によって、それまでに積功累徳してきた全ての功徳が焼き尽くされるともいいますので、御指摘の可能性はあり得ると思います。
Hindou
私見ですが、瞋恚を狭義の「怒り」だけでなく、“冷静さを失い感情的になる”、“慎重さを欠いて突発的、短縮的な行動をとる”と解したら、三毒の中でも瞋恚は悪行を…特に殺生や偸盗、邪淫、妄語、綺語、悪口等の具体的行為を伴いやすいからではないでしょうか?
だから重ねて戒めたのではないですかね
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