タックの庭仕事 -黄昏人生残日録-

≪ トルーマンの陰謀 ≫

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 平成19年8月6日、人類史上初めて広島に原爆が投下されて六十二年目。原爆投下の米国側の理由はもう聞き飽きた。日本本土上陸作戦によって生じる米軍の甚大な被害を軽減する、などという理由は、もはや通用しない。
 発行はいささか古いが、ロナルド・タカキ『アメリカはなぜ日本に原爆を投下したのか』山岡洋一訳(草思社)は、戦後世界のあり方について、対立が始まっていたソ連に衝撃を与えること以外に、トルーマン大統領のマッチョ指向と人種差別思想を理由に挙げている。鳥居民『原爆を投下するまで日本を降伏させるな』(草思社)は、原爆投下が、トルーマン大統領とバーンズ国務長官によって、入念に仕組まれた政治的陰謀だったことを、克明に検証している。
 トルーマンが日米戦争の終結を引き延ばし、敢えて、広島と長崎に原爆を投下した理由は、戦後のソ連を牽制するために、原爆の存在を世界中に「最上の方法で公開してみせる」(前掲書)ことだった。この目的だけのために、トルーマンが非人道的兵器の使用に踏み切ったことは、疑うべくもない事実である。しかし、彼の意図にかかわらず、原爆による威嚇戦略は、中国の内戦阻止・スターリンのベルリン封鎖・金日成による韓国侵攻に何の影響も及ぼすことができなかった。
 こうして、大戦終了からソ連崩壊まで、東西冷戦の構造が定着することになった。地下白骨のトルーマンは、未来永劫に己の非人道的行為を是とするか?

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