Aonsiwate Blog

フライロッド・漆器製作と岩手のくらし覚書

お箸

2021-05-28 17:27:16 | エキチカの漆市

今回の催事、今までやったことのないことをやってみたい!と思い、箸の木地を作家にお渡ししました。木地については夢積工房高橋氏にご協力いただきました。

同じ箸木地で個性的な作品が仕上がるはず!

木地はブナ・ヒノキ・鉄木

 

八幡平市藤森氏の作品

 

全体に柔らかい拭き漆。かわいらしい絵付けが製作者の特技。きれいにまとまったお箸が届きました。私の写真がイマイチなのが残念。

 

 

花巻市漆工汽水佐々木氏の作。

 

青を基調とした「空模様」の製作者らしく、各面を色漆で仕上げたお箸を仕上げました。

爽やかな印象。やはり私の写真がイマイチなのが残念。

箸の端材でピアスも作ってしまうのが氏らしい。良い、と思います。

 

石川工房石川氏のお箸。ちょうど中央を境に塗りの変わる仕上がり。

 

少しオトナな印象の箸に仕上がっております。

 

盛岡市ウルシBOX寺嶋氏の箸は、全体に和紙を糊漆で張り、色漆で固める新技法。

 

見た目の重厚さに反して軽い、そして強い。氏ならではの新境地だと思います。

 

 

今年安代漆工技術研究センターで研修を終えた五木田氏の箸。

スタンダードな溜仕上げです。尻部分に布を張り個性を出しています。

 

布部分には加飾が施されていて、経年で漆が透け、きれいな粉が見えてくると思います。

 

お箸の写真を撮るのは難しいです・・・・

2021年6月1日まで盛岡市カワトク7階催事場で展示販売していますので、

お時間ありましたら是非お立ち寄りください!

 


震災のこと

2021-03-10 10:20:46 | 日記・日常

 その日は漆の研修の最終課程の「上塗り」の日だった。師匠の冨士原文隆氏とともに上塗り部屋(クリーンルーム)に入り手順を確認しながら溜塗りの仕上げを塗る。予定していた三分の二ほどを塗り、大物の片口の上塗りに取り掛かっていると、大きな揺れがきた。私は片口と上塗り刷毛を手に混乱する。師匠は窓を開け、外に避難した人たちに落下物のこない安全な室内に入れと叫び、そのまま窓から飛び出した。

 

 研修所内は停電し、漆の入った皿が落下散乱。家族が心配。なんとか繋がった携帯電話で安全を確認。家族と自宅で落ち合う連絡を取るが、その後携帯は繋がらなくなってしまう。車で自宅に向かうこととする。自宅までは42km。

 

 もともと信号はほとんどないのだが、全域で停電。信号は消えている。市街地から帰る家族が心配だがもう携帯は繋がらない。

 

 カーラジオをつけると「沿岸に30mの大津波、至急避難」と叫んでいる。これは現実なのだろうか?

 

 走りながら日常はしばらく戻らない、と考える。必要なものは何だ?

 食料・水・灯り・暖・情報・・・・・食料以外準備はない。

 

 山を下り、西根市街に。途中全国チェーンのホームセンターに寄る。店内めちゃめちゃで、スタッフも少ないため対応不可能とのこと。

 さらに西根中心部のホームセンターに向かう。多くの人が集まっている。店内めちゃめちゃで入れないとのこと。だが店舗前に長テーブルを出して、停電のため手書きで販売に対応している。希望する商品を言うと店員が(長靴で)店内に入り商品を持ってきてくれた。揺れから約一時間後くらい。店員も様々心配であろうが、大柄の社員の指示でテキパキと対応している。隣の大型スーパーでは店頭にお弁当を出して販売を始めた。ペットボトル飲料、お菓子、カップ麺も並べている。 

 今思い出しても、この二店舗の対応は素晴らしいと感じる。私は水・ポリタンク・ラジオ・懐中電灯・カセットコンロのカセットを入手し、さらに15kmほどかかる自宅に向かう。「電気を使わない暖房器具」は入手できなかった。途中国道沿いのコンビニに寄るが、食料はほとんどない。

 

 自宅内はめちゃくちゃで、揺れで全ての引き出しが開いており家具が動いていて信じられない状態。ネコは部屋のスミに隠れていた。まずは水を確認。出るようなので風呂に水を溜めポリタンクも満タンにする。しばらくすると水は出なくなった。家族が帰宅、無事を喜ぶ。家の中は散々で、吊るして乾かしていたリールシートは全部落下。一本釣竿が折れていた。

 

 寒い夜を懐中電灯とラジオで過ごす。圧力鍋でとカセットコンロでコメを炊いた。

ラジオから沿岸壊滅的な被害の報。これは現実なのだろうか?

 

 翌日から三日は電気水道が来なかった。この三日である程度の生活の整理をする。ガソリンが入手出来ず移動がこわい。全ての公共移動手段が止まっている。長距離移動は不可能で、無理をすれば大きな迷惑がかかる。長く住んだ大船渡が心配だが、移動する術がない。

 

 大きな犠牲者が出たのは早い時期に分かった。3月の終わりに研修修了の作品展を行う予定だったが、中止とした。修了製作の釣竿は5本から3本に減った。激震時に塗っていた漆器は、回転風呂の電源が入らないため全部ダメかと思ったが、一年後輩の内記氏(現漆工ナイキ)が夜な夜な手で回転させてくれて、成功した。自宅で今も使っている。

 

 ガソリンの入手が安定するのに一か月以上かかった。ボランティアの報が流れるが、4月に入り漆の研修を終えて新しい生活を作らねばならなかった。沿岸には向かえない。

 

 結局沿岸に向かうことができないまま、何年も経ってしまった。復興の様子はテレビ見ていた。被災した友人の安否、無事だった友人、不明な知り合い。私から連絡を取るのは心苦しく、心の中に厳しいものが残ったまま、何年も過ごす。

 

 きっかけをくれたのは、エキチカの漆市をはじめて行った時に場所を貸してくれた店舗の店長A氏で、大船渡店のO店長を紹介していただく。「大船渡で漆器の催事をしないか?」。確かに沿岸での漆器の催事は少ない。挨拶に、何年かぶりに、大船渡に向かう。催事の店舗は当時住んでいた場所のすぐ近くだった。私の住んでいた須崎川沿い野々田茶屋前は津波の被害が大きく、全くもとの面影はなかった。挨拶に周り、はじめて恩人の安否を知った。


インスタグラム・フェイスブック

2021-02-20 20:47:48 | エキチカの漆市

いつもありがとうございます。

少しずつですが、インスタグラムフェイスブックへの投稿を開始しました。

インスタグラムは一昨年首都圏での催事の際、PC環境から離れる可能性があったためスタートしたのですが・・・・放置しておりました。

今回3月の催事にあわせて再度スタート。フェイスブックはインスタグラムから自動投稿されるようです。

様々勉強中なのですが、とても便利で、楽しく作業しています。こちらもよろしくお願いいたします。

 

 


アシタカの椀

2021-02-17 18:02:18 | エキチカの漆市

映画もののけ姫の中に印象的なセリフがあって、

「雅な椀だな」

朝廷の密偵が主人公アシタカの椀を手に取って発する言葉なのですが、私にはこの言葉に大きな意味を感じました。

時代場面設定から「食事の前に石鹸で手を洗う」「常に安全な食べ物が準備されている」時代ではないですよね。

安全に食べ物を食べるために、食物を加熱し、食器を使って衛生的に食べる(生命を維持する)。

多分こうして健康(命)を維持し、健康(精神)を良い状態に維持してきたのだろうと思います。

「食器は健康を維持するために必要な道具」だったのではいかなあ。

私もこういった時代に相手の人間性、生きるチカラ、総合的な強さ、を判断するのであれば、剣ではなく椀を見ると思います。

椀の管理は毎日毎食の習慣ですから、良い椀を良い状態で維持できる人間は強い人間だったのでしょうね。

また雅ということばから「椀の質の良さ」を感じます。使う食器の質が良い→故郷の生産技術の高さ、出自の良さなど。

劇中の密偵は、椀から主人公の強さだけでなく生きてきた様々を読みとったのではないかなあ。

 

昭和中期、小中学生だった私の健康を守ってくれた椀はプラスティックの給食の食器で、

丈夫なそれは、大きな食器洗浄機で洗われて、雑菌食中毒から私を守ってくれました。

ベビーブームの時代、大人数の食事を守るためにそれはとても合理的だったと思います。

だからなのか、私の記憶の食器の大部分は、まやっと存在したイエローベージュのプラスティックと真鍮のメッキです。

 

もうすぐ新しい春がきます。私は、進学就職で旅立つ若者(アシタカ)に故郷の漆器を贈りたい。

毎回食事の後で食器を洗い仕舞う。自分の健康を自分で管理する。生活習慣を自分で維持する。

誰に見せても誇ることができる、故郷の椀を贈りたい。

「誇ることのできる漆器文化のある故郷」を持たせたい。

 

 

その椀(アシタカの椀)を作ることは地元で漆を塗ることの根幹ではないかなあ。

最近はそう思って漆を塗ることが多いです。


販売催事のお知らせ

2021-02-05 20:27:17 | エキチカの漆市

来月3月5日、6日、7日の三日間、販売催事を行う予定です。

場所は盛岡を予定してます。

今回は「人生の門出にふるさとの漆器を贈る」をテーマに、

大事な方へのギフトとして漆器を選んでいただけるようなラインアップを目指します。

 

感染対策を万全に安全に、

作家一同気合いを入れて調整を続けています。

また詳細お知らせいたします。

 

エキチカの漆市 稲垣元洋