今月は、フィリップ・プルマンの「ライラの冒険」シリーズを紹介しています☆
「指輪物語」の影響か、この本も三部作、それぞれ二冊づつで計六冊という構成になっているのですが、「指輪物語」と違って、ごっつい怪物や、剣を振り回す屈強な戦士、はたまた恐ろしい魔王も出てきません。
主人公は、12、3才の少女と少年。
大人しか襲わない幽霊みたいなスペクターや、大きな白鳥みたいなトゥアラピという生き物(その他、ヘンな生き物がたくさん登場します♪)が立ちふさがったりしますが、けっして戦いがメインでないのがまた魅力的なんです☆
ヨロイを着たクマや気球乗りの助けを借りて、いくつもの世界を旅する二人。
神々しい光をまとった天使が人類を支配しようとたくらんだりしてまわりは騒がしいのですが、物語の根底に流れるメッセージは、「自立」という言葉がぴったりくるように思います。
主人公の少女ライラは、両親を知らないまま、自分と、自分のダイモン(守護精霊)を守るため、ウソをつくことで大人達世間の荒波を乗り越えて来ました。
一方もう一人の主人公ウィルも、行方不明の父の代わりに、精神の不安定な母親を守るため、いつも目立たないように世間から自分の身を隠す術を身につけて生きてきました。
そんな二人が出会い、ライラは真実の答えを指し示す羅針盤、真理計の読み手となり、死者の国まで行って、最愛のダイモンとの別れを経験し、さらにウソの通じない相手に遭遇します。
ウィルは、世界と世界をつなぐ「窓」を切り開く不思議な短剣の使い手に選ばれますが、母親への愛によって、その短剣を失ってしまい、また、ようやく探し当てた父親とも、辛い別れが待っています。
それぞれが経験する両親との別れ、決別、出会いと芽生え。
子供の時には、様々な生き物に姿を変えることのできるダイモン。
大人になると、一つの姿に落ち着くのですが、やがてライラのダイモンにも、その時が訪れます。
それは、ライラの子供時代への別れでもあり、大人への出発点。
アダムとイブが楽園で暮らしていた時期を子供時代と捉えるなら、リンゴを食べて楽園を追放されたのは、二人が大人になったから。
そしてそれは、追放ではなく、新たな世界への旅立ちだとしたら…
神による抑圧が終わり、自由な精神、自由な思想を持った新しい世界が始まる。
物語は、第三部に入ると、教会の信奉する神による支配から、人間の手に自由と魂の解放を取り戻すための戦いへといっきに突き進んでいきます。
「あたしたちは、この世の人生より天国が重要だなんて思って生きてちゃいけないの。あたしたちがいまいるところが、いちばん重要な場所だから」
キリスト教を背景として使った作品では、「ナルニア国物語」が有名ですが、この作品は、ナルニアとは逆に、神からの自立をはたすという立場をとりながら、やはりナルニア国物語と同じメッセージを私たちに訴えてきます。
人間としての尊厳。平和や友愛。いたわりや優しさといったものが、いかに大切であるか。
差別や偏見、抑圧や独善といったものが、どれほど人々を苦しめ、人の心に巣食うそうしたものこそが、我々の真に戦うべき相手なのだということ。
ナルニア物語が、人間や妖精、物言う動物たちが手に手を取って暮らしているように、この物語でも、様々な世界の姿の違う人々が、地上の共和国のためにはせ参じてきます。
「望遠鏡は必要ない。なにが見えるかはわかっている。ふたりは、生きている黄金でできているように見えるはずだ。かけがえのないものを手に入れ、あるがままの人間の真の姿をしているはずだ」
はたして、天使の支配する天上の王国に、地上の共和国軍は勝つことができるのか?
そして再び訪れたイブへの誘惑を、教会は阻止することができるのか?
ライラとウィルの運命は?
第一部「黄金の羅針盤」は1996年度、カーネギー賞とガーディアン賞という二つの児童文学賞を受賞しています。
また、「ロード・オブ・ザ・リング」を製作したニューライン・シネマ社で映画化の予定もあるとか。
読みやすくって、一度本を開いたら、「不思議の国のアリス」みたいに、どんどんこの物語世界の中に落ちていって、なかなか抜け出せなくなりますよ♪
白ウサギの代わりに、真実の答えを告げる黄金の羅針盤を道案内にして、ライラとダイモン(守護精霊)の旅するいくつもの世界を冒険してみてはいかがですか?
お茶会はなくても、天使に魔女に、ヨロイを着たクマがきっとあなたを歓迎してくれることでしょう。
ダイモンは誰の心にも宿っています。
もしかしてあなたにも、自分のダイモンが見えるようになるかも知れませんよ☆
フィリップ・プルマン 著
大久保 寛 訳
新潮文庫
「指輪物語」の影響か、この本も三部作、それぞれ二冊づつで計六冊という構成になっているのですが、「指輪物語」と違って、ごっつい怪物や、剣を振り回す屈強な戦士、はたまた恐ろしい魔王も出てきません。
主人公は、12、3才の少女と少年。
大人しか襲わない幽霊みたいなスペクターや、大きな白鳥みたいなトゥアラピという生き物(その他、ヘンな生き物がたくさん登場します♪)が立ちふさがったりしますが、けっして戦いがメインでないのがまた魅力的なんです☆
ヨロイを着たクマや気球乗りの助けを借りて、いくつもの世界を旅する二人。
神々しい光をまとった天使が人類を支配しようとたくらんだりしてまわりは騒がしいのですが、物語の根底に流れるメッセージは、「自立」という言葉がぴったりくるように思います。
主人公の少女ライラは、両親を知らないまま、自分と、自分のダイモン(守護精霊)を守るため、ウソをつくことで大人達世間の荒波を乗り越えて来ました。
一方もう一人の主人公ウィルも、行方不明の父の代わりに、精神の不安定な母親を守るため、いつも目立たないように世間から自分の身を隠す術を身につけて生きてきました。
そんな二人が出会い、ライラは真実の答えを指し示す羅針盤、真理計の読み手となり、死者の国まで行って、最愛のダイモンとの別れを経験し、さらにウソの通じない相手に遭遇します。
ウィルは、世界と世界をつなぐ「窓」を切り開く不思議な短剣の使い手に選ばれますが、母親への愛によって、その短剣を失ってしまい、また、ようやく探し当てた父親とも、辛い別れが待っています。
それぞれが経験する両親との別れ、決別、出会いと芽生え。
子供の時には、様々な生き物に姿を変えることのできるダイモン。
大人になると、一つの姿に落ち着くのですが、やがてライラのダイモンにも、その時が訪れます。
それは、ライラの子供時代への別れでもあり、大人への出発点。
アダムとイブが楽園で暮らしていた時期を子供時代と捉えるなら、リンゴを食べて楽園を追放されたのは、二人が大人になったから。
そしてそれは、追放ではなく、新たな世界への旅立ちだとしたら…
神による抑圧が終わり、自由な精神、自由な思想を持った新しい世界が始まる。
物語は、第三部に入ると、教会の信奉する神による支配から、人間の手に自由と魂の解放を取り戻すための戦いへといっきに突き進んでいきます。
「あたしたちは、この世の人生より天国が重要だなんて思って生きてちゃいけないの。あたしたちがいまいるところが、いちばん重要な場所だから」
キリスト教を背景として使った作品では、「ナルニア国物語」が有名ですが、この作品は、ナルニアとは逆に、神からの自立をはたすという立場をとりながら、やはりナルニア国物語と同じメッセージを私たちに訴えてきます。
人間としての尊厳。平和や友愛。いたわりや優しさといったものが、いかに大切であるか。
差別や偏見、抑圧や独善といったものが、どれほど人々を苦しめ、人の心に巣食うそうしたものこそが、我々の真に戦うべき相手なのだということ。
ナルニア物語が、人間や妖精、物言う動物たちが手に手を取って暮らしているように、この物語でも、様々な世界の姿の違う人々が、地上の共和国のためにはせ参じてきます。
「望遠鏡は必要ない。なにが見えるかはわかっている。ふたりは、生きている黄金でできているように見えるはずだ。かけがえのないものを手に入れ、あるがままの人間の真の姿をしているはずだ」
はたして、天使の支配する天上の王国に、地上の共和国軍は勝つことができるのか?
そして再び訪れたイブへの誘惑を、教会は阻止することができるのか?
ライラとウィルの運命は?
第一部「黄金の羅針盤」は1996年度、カーネギー賞とガーディアン賞という二つの児童文学賞を受賞しています。
また、「ロード・オブ・ザ・リング」を製作したニューライン・シネマ社で映画化の予定もあるとか。
読みやすくって、一度本を開いたら、「不思議の国のアリス」みたいに、どんどんこの物語世界の中に落ちていって、なかなか抜け出せなくなりますよ♪
白ウサギの代わりに、真実の答えを告げる黄金の羅針盤を道案内にして、ライラとダイモン(守護精霊)の旅するいくつもの世界を冒険してみてはいかがですか?
お茶会はなくても、天使に魔女に、ヨロイを着たクマがきっとあなたを歓迎してくれることでしょう。
ダイモンは誰の心にも宿っています。
もしかしてあなたにも、自分のダイモンが見えるようになるかも知れませんよ☆
フィリップ・プルマン 著
大久保 寛 訳
新潮文庫