同じ作品が出版社を替えて再販されることはよくありますが、今回は中央公論新社から発売されました。
新井素子 著
『くますけと一緒に』(中公文庫)
この本、最初は1991年に大陸書房より単行本として発売され、その後1993年に新潮文庫、2001年に徳間デュアル文庫で二度に渡り文庫化されました。
今回は三度目の文庫化。
異様にぬいぐるみ好き、で一部SFファンには有名な新井素子さん。
当時の「あとがき」には、四百匹のぬい(ぬいぐるみの略語)が家に居ると書いていましたが、月日がたって、現在は桁が一つ違うんだとか(苦笑)
『銀婚式物語』などの作品で、作者の近況についてはある程度知ることができていたのですが、『結婚物語』、『新婚物語』でいいキャラを演じていた元編集者のお母様を、つい最近看取ったということも今回の「あとがき」には書かれていました。
十代で小説家としてデビューしていますからね。
それから数十年。
折に触れて家族のことも書いてみえたから、ずっと読み続けてきたファンとしては感慨深いです。
さて、その『くますけと一緒に』ですが、内容はちょっと怖いサイコホラー。
両親を交通事故で失った小学生の女の子。
母親の親友に引き取られた女の子は、かたときもクマのぬいぐるみ「くますけ」を放そうとはしません。
親と子。
愛されることと愛すること。
それは束縛と期待。
自分の中でこの不条理な世界にどうにか理由を見つけようとする小さな心。
…子供は親を嫌う権利がある。
人間の心ってやつはやっかいですからね。
タイトルのほのぼのさとは違い、ちょっとグサッとくる内容です。
最近、新井素子さんの作品を次々と復刊している中央公論新社。
これはいよいよ待ちに待った『銀婚式物語』の文庫化も近いかな?
本屋さんで珍しく『銀婚式物語』の初版本を置いているお店があったのですが、文庫本で買いたかったので、ものすごく悩んだ末に本棚に戻してきました。
だからお願いします。
一日も早い文庫化を!(苦笑)