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『映像’17 教育と愛国 ~教科書でいま何が起きているのか~』(MBS毎日放送 2017年7月30日放送)
戦後教育の場で「道徳」が教科として復活した背景にあるのが現在の総理大臣安倍晋三の存在である。安倍は、野党として下野していた頃、大阪で次のよう述べた。
「教育の目標の1丁目1番地に道徳心を培う。例えば私は今から約19年前、衆議院に出るときに政策の目標として、道徳教育を復活するというのを出してですね、そしてそれをいわば教育基本法を変えることによって実現することが出来ました。政治家がタッチしてはいけないものかっていえばそんなことはないですよ。当たり前じゃないですか」
そして教科書の内容に介入するような出来事がこれ以降増えてくる。そのような中、新たに発行され部数を伸ばしてきているものに育鵬舎の教科書がある。この教科書の代表執筆者である伊藤隆東京大学名誉教授は、教科書のあり方を「ちゃんとした日本人をつくるということでしょうね」と答えている。そして「「ちゃんとした」とは?」という質問に対し「左翼ではない」という返答をした。
また一方で、教科書に慰安婦問題を記載したため倒産に追い込まれた日本書籍の元編集者はそのときのことを「ここまでね、やっぱり、あのー、こう政治がね教科書に介入してくるのか」と述べている。大量のハガキを送りつけることによる特定の教科書に対する攻撃・圧力というものが現在起こっている。
教科書問題でさけることが出来ないものとして検定制度がある。今回の道徳教科書でもパン屋の記述が和菓子屋に変えられたりしている。検定によるその理由は「問題のパン屋が登場する教科書は、「伝統と文化の尊重、国や郷土を愛する態度」に照らして扱いが不適切とされました」というものだった。このような状態であるにもかかわらず外務省は海外に向け「我が国の教科書は、基準に沿えば出版社が自由に作れ、自社の教え方や考え方を内容に盛り込むことが出来る」とアピールしている。
では教科書検定とはどのようなものなのだろうか。教科書作りに関わってきた出版社の編集者は次のように述べる。「今の言葉で言うと「忖度」の世界になってしまってる訳です。(中略)直接「こういう風に直せ」とは言わないと言うことなんです。「ここが違うからなんとかしろ。趣旨はそういうことです」そこまでは言います。だけど「こういう記述にしなさい」そこはさすがに言わないということですね。実際は圧力はかかってるんだけども、なおした責任は教科書会社にある、そういう制度なんですよ」
この教科書問題は、歴史の分野ではさらに攻撃が激しくなっている。倒産した日本書籍の教科書は、学術成果を教科書へ反映させようとして慰安婦問題を取り上げた。しかし、このことが契機となり、採択部数が激減、このころ立ち上げられた「新しい歴史教科書をつくる会」やその支持者からは「自虐的」という攻撃を受ける。この教科書を執筆した吉田裕一橋大学教授は次のように述べる。「これ見たとき、あ、標的にされるな、と思いましたね。「つくる会」が今の教科書は自虐的だ、というキャンペーンをね、やり始めていた丁度そのときだったんで、標的にされるかなっと思いましたけど、まさに標的にされて採択されなかったわけですよね。」。これ以降、吉田は教科書の執筆は全て断っているという。元編集者はこのことについて「やっぱり戦争加害の問題を書かないと、原爆の被害とか空襲の被害とか被害の歴史だけではやっぱり戦争学習にならないと、加害の問題は避けて通れない」と述べた。
その後「つくる会」は分裂するが、育鵬社側のシンポジウムに参加したのが冒頭にある安倍晋三議員(当時)だった。そこで安倍が述べたのは「首長が教育について強い信念を持っていれば、その信念に基づいて教育委員を変えていくんですよ。例えばあの横浜でね育鵬社の教科書が採択されるっていうのはねこれは驚きなんですよ。相当な決意を持って一人一人順次教育委員にですね自分たちが攻めよう意志を持ったひとに変えていった結果なんですね。出来ている地域だったあるんですね。」というものだった。つまり、自分たちがやりたいがために教育委員を変えるというものである。このやり方は安保関連法案の時でも行われたものだ自分たちに都合の良い担当者に変え、法案を通すというものである。
そして育鵬社の代表執筆者の伊藤は教科書についてこう述べる。
「日本全体的にだと思うんですよね、僕ら「自虐史観」て言ってるんですよね。日本人としての誇りを持てないような記述ですよ。僕は愛国教育をやれとかそういうことを言ってるわけじゃなくて、左翼史観に覆われているような歴史を教えるんじゃなくてですね、ありのままの日本をというものを教えた方が良い、そうでなけゃ困る」
「歴史教育に先生が一番に求められるものとは?」という質問に対しては
「イデオロギーにわざわいされないありのままの日本の姿」
「歴史から何を学ぶんですか?」という質問に対しては
「学ぶ必要はないんです。」と答えている。
そして「育鵬社の教科書が目指すものというものは何になるんでしょうか?」という質問に対する答えが冒頭で述べた「左翼」というものである。
「イデオロギー」という言葉を出した本人が「イデオロギー」にとらわれているという矛盾を感じることができる。
慰安婦の次に問題とされたのが沖縄戦での住民の手段自決であった。当初教科書には軍の関与がかかれていたが、検定の結果軍の関与の記述がなくなる。
この検定による沖縄戦での集団自決のあり方を「沖縄県史」では次のように記述している。「政府の考える日本国家の歴史という側面を持ち、時に学術研究の枠を越え、日本政府の政治的意図・解釈によって教科書記述のあり方が左右された」
また、集団自決を体験した吉川嘉勝さんは「何が人々をそうさせたのか何が歴史をこのように変えていってしまったのかを主体的に子供が考える教科書であってほしい」と述べている。
近年採択部数を伸ばしている歴史教科書に「学び舎」の教科書がある。子どもたちに考えさせ議論させるというものであり、執筆者の一人である本庄豊教諭は次のように述べる。「子供の目線にたつと言うことは、すなわち一般の民衆の名も無き人たちの立場にたって特定の権力を握った人間が歴史を動かしたんじゃなくて、民衆こそが歴史の主人公なんだと」
取材陣はこの「学び舎」の教科書を使用している授業風景を撮影しようとしたが全て断られている。なぜか?それはこの教科書を採択している学校に大量の抗議ハガキが届くようになったからである。その多くが匿名。実名で出しているものの中に森友学園の籠池泰典の名や松浦正人山口県防府市市長の名があった。その松浦に取材をしてみると「学び舎」の教科書については「知りません」と言ってる。そのため抗議ハガキを見せたところ思いだしたようで「教育再生組長会議の松浦として色んな方々に、正しい教科書を出さなければいけませんよ、という声をね発信したことですね」と答えた。そして肝心な「学び舎」の教科書を読んだのかという質問に対しては「ちょっと偏った事柄が書いてあるという情報は耳にしました」・「呼んだというか「見た」程度でしょうね」と答え、自分では内容をしっかりと呼んではいないことがわかる。
このようなことになる背景の一つに「2年前法律が改正され自治体の首長が教育目標を掲げて教育行政に関与することが可能になりました。教育と政治の距離が一層近くなったのです。」(ナレーション)がある。
さらには政治家からの問い合わせやマスコミによる報道により抗議ハガキの量は多くなっていった(「これは一体どこの国の教科書なのか…新参入『学び舎』歴史教科書、検定前“凄まじき中身”と“素性”」 産経新聞 https://www.sankei.com/premium/news/150507/prm1505070008-n1.html)
これら大量の抗議ハガキは当然「圧力」となる。ある校長は次のような文章を書いた。
「謂われのない圧力の中で」
http://toi.oups.ac.jp/16-2wada.pdf
東京都大田区では育鵬社の教科書を採用していたが、区民で教科書を考える機会を増やしていったことで別の教科書が採用されるようになった。教育委員の櫻井光政弁護士は「思想信条を問わず、教材としてどちらが優れているかというところの観点を割と多く比較検討したつもりなんですね。少ない教材の中で、教科書はでも教科書を読むとかなりの力がつくという教科書であってほしい。(中略)学問的な深さは大事だと思いました」と述べた。
時の政権によって左右されてしまう教育行政・教科書。今教育は誰のためにあるのか
〈歴史教科書問題〉
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