https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-01-12/S74JJKT0AFB400
米英軍は11日、イエメンの親イラン武装組織フーシ派の軍事拠点に対し空爆を行った。同派が約2カ月にわたり紅海で船舶への攻撃を続けていたことへの対応だ。イスラエルとイスラム組織ハマスの戦争は、イエメン北西部を10年近く支配するフーシ派を巻き込んだ。
米英がフーシ派拠点を空爆、商船襲撃に対抗-中東で緊張拡大の恐れ
ハマスと同様にフーシ派もイスラエルを敵視するとともにイランの支援を受けている。フーシ派はイスラエルとつながりのある船舶を標的にするとしていたが、イスラエルと関係のない船舶も影響を受けた。フーシ派の指導者は米国と同盟国によるいかなる軍事行動に対しても「重大な」反応を招くと警告した。
1.フーシ派とは?
2014年にイエメンの首都サヌアを支配下に置き、今日まで続く内戦が始まった。同国北西部サーダ州出身のイスラム教シーア派系の一派であるザイド派の組織で、北イエメンと南イエメンが1990年に統一された後、一連の反政府活動を展開してきた。反西側・反イスラエルを掲げ、専門家によると、イランやレバノンの親イランのシーア派民兵組織ヒズボラから軍事訓練や専門知識、ドローンや弾道・巡航ミサイルなどのより最先端の兵器を入手している。米国は21年、フーシ派のテロ組織指定を解除したが、バイデン政権は昨年11月半ば、再指定を検討していると明らかにした。
2.フーシ派はイスラエルに宣戦布告したか?
フーシ派はイスラエルを敵だと宣言している。昨年10月にイスラエルへのミサイルやドローン攻撃を企てた後、フーシ派のスポークスマンはこれについて「パレスチナで抑圧されているわれわれの同胞を支援」するためイスラエルを標的にしたと説明。「イスラエルが攻撃をやめるまで」軍事作戦を続けるという。イスラエルは10月7日のハマスによる国民虐殺への報復としてガザ地区のハマスに対して軍事攻撃を開始した。
3.紅海で何が起きたか?
フーシ派は紅海を航行する船舶にミサイルを発射し、船に乗り込んで支配しようとしたが、その多くは成功しなかった。攻撃の多くはインド洋から紅海に入る船舶が通過するバブ・エル・マンデブ海峡付近から行われた。昨年11月、フーシ派はイスラエルの実業家、ラミ・ウンガー氏の会社が所有する船舶を拿捕(だほ)した。フーシ派は今月11日、アデン湾にミサイルを発射した。米当局によれば、フーシ派による商船への攻撃は、昨年11月19日以降で27回目となる。
4.フーシ派は実際にイスラエルを攻撃できるか?
フーシ派は射程距離が1350-1950キロに到達可能な液体燃料ミサイルを保有していると主張する。イスラエルを射程内に収めるには十分な距離だ。サウジアラビアを挟んで位置するイスラエルとイエメンの最短距離は約1580キロメートル。米軍は10月19日にイスラエルに向けて発射された巡航ミサイルとドローンが米駆逐艦によって紅海で撃墜されたと発表した。
フーシ派が紅海でミサイルとドローン攻撃、最大規模-米英部隊が撃墜
5.イエメン内戦の原因は何か?
11年初頭から中東・北アフリカで本格化した一連の民主化運動「アラブの春」により、30年にわたり権力の座にあったサレハ大統領が退陣。米国が支持した権限委譲合意の下、ハディ副大統領が暫定大統領選挙で当選し、新憲法制定や選挙への準備プロセスを進めるはずだった。
だがフーシ派は連邦制移行を拒否。14年に政府が燃料補助金を引き下げると反政府デモが発生し、フーシ派はハディ政権を首都から追放した。ハディ政権の軍は国の東部を支配下に置いていた。15年にサウジがハディ政権支援のためフーシ派との戦争に介入した。
内戦による暴力で一般のイエメン国民の生活は荒廃し、空爆や経済の崩壊、飢餓拡大に見舞われる中で耐え難いほどの生活を強いられたという。
サウジ主導の空爆、イエメン南部を標的に継続-フーシ派との戦闘激化
原題:Who Are the Houthis Being Hit With US, UK Airstrikes: QuickTake(抜粋)
米英がフーシ派拠点を空爆、商船襲撃に対抗-中東で緊張拡大の恐れ
Alexander Pearson-
レーダー施設やミサイル発射装置など十数カ所を攻撃したと米当局者
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米英のほか豪州とバーレーン、カナダ、オランダも作戦支援に加わる
米英軍は11日、イエメンの親イラン武装組織フーシ派の軍事拠点に対し、空爆を実施した。紅海で繰り返される商船への攻撃に対応した今回の軍事介入により、フーシ派との衝突がエスカレートし、中東情勢がさらに緊迫化する恐れがある。
フーシ派に対する軍事作戦の開始を受け、国連安全保障理事会は中東情勢を協議する緊急会合を12日に開催する。
バイデン米大統領は声明で、イエメンの複数の標的に対する攻撃が成功したと発表。「これらの標的への攻撃は、米国とパートナーが、われわれの軍関係者への攻撃や、世界有数の重要商業航路で航行の自由を敵対勢力が脅かすことは許さないという明確なメッセージだ」と強調した。
さらに「われわれの国民と国際貿易の自由な流れを守るため、必要に応じてさらなる措置を命じることをためらわない」と大統領は警告した。
米英のほか、オーストラリアやバーレーン、カナダ、オランダも作戦の支援に加わった。ドイツとデンマーク、ニュージーランド(NZ)、韓国を加えた各国は共同声明で、緊張緩和と紅海の安定回復が目的だと説明した。
スナク英首相は11日夜の差し迫った軍事介入について閣議で説明し、最大野党・労働党のスターマー党首、ホイル下院議長にも伝えたという。
米国防総省当局者が匿名を条件に明らかにしたところでは、米軍などはイエメンのフーシ派支配地域で、レーダー施設やミサイル発射装置、貯蔵施設など十数カ所の標的を攻撃した。
米海軍の空母「ドワイト・D・アイゼンハワー」の艦載機と、水上艦および潜水艦から発射された巡航ミサイル「トマホーク」による攻撃が実行されたという。イエメンの首都サヌアと港湾都市のホデイダ(フダイダ)では激しい爆発が報告された。
フーシ派の将来の攻撃能力に甚大な影響を与えたことが、初期の兆候からうかがえると当局者の1人は語った。国際原油価格は空爆を受け上昇し、北海原油代表油種ブレント先物3月限は一時2.5%高の1バレル=79.37ドルを付けた。
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イスラム組織ハマスの昨年10月7日の大規模攻撃にイスラエル軍が反撃し、ハマスが実効支配するパレスチナ自治区ガザが壊滅的な打撃を被る状況で、イスラエルを敵視するフーシ派は、同国に関係すると見なす船舶にミサイルや無人機による攻撃を繰り返してきた。
米当局によると、昨年11月19日以降のフーシ派による商船への攻撃は27回に上り、日本郵船運航の船舶も拿捕(だほ)された。
フーシ派指導者のアブデルマリク・フーシは11日、米英軍の空爆に先立ち、米国と同盟国がフーシ派への軍事行動に踏み切れば、「重大な」反応を招くとテレビ演説で述べ、「われわれは米国の武力行使に立ち向かう。米国のいかなる攻撃も罰を免れない」と主張していた。
以下の地図は本文参照
原題:US and Allies Launch Airstrikes on Houthi Targets in Yemen (1)、US, Allies Say Aim to De-Escalate Red Sea Tensions Amid Strikes、Biden: Won’t Hesitate to Direct Further Measures Against Houthis、Houthi Leader Vows ‘Big’ Response to Any US Military Attack (1)(抜粋)
https://nofia.net/?p=17295
<転載開始>
イラン、オマーン湾で石油タンカーをハイジャック
zerohedge.com 2024/01/11
Iran Hijacks Oil Tanker In Gulf Of Oman
ブルームバーグは、イランの半公式タスニム機関の報道を引用し、裁判所命令に基づいて行動したイラン海軍がマーシャル諸島船籍のタンカー「セント・ニコラス号」を拿捕したと報じた。報告書はセント・ニコラス号が「米国の石油タンカー」であると述べた。
セント・ニコラス号は、トルコ石油精製公社がタンカーをチャーターし、イラク産 SOMO 原油 14万トンを輸送していた。船はトルコ西部のアリアガに向かっていた。
英国海事貿易業務局(UKMTO)当局は数時間前、オマーンのソハール東約 80マイルで船舶に「 4~ 5人の武装した無許可者」が乗船したと報告した。
UKMTO は、「無許可の乗船者らは軍風の黒い制服を着て黒いマスクを着ていると報告されている。CSOは、同船がイラン領海に向けて針路を変更し、同船との通信が途絶えたと報告している」と述べた。
この事件は、米海軍の軍艦が紅海で 20発のミサイルと無人機を撃墜した直後に起きた。AP通信は、イランが支援するフーシ派の攻撃を「 紅海での船舶を標的としたドローンとミサイルによる 史上最大規模の集中砲火」と呼んだ。
そして現在、重要な商業航路を守るという国防総省の「繁栄の守護者作戦」任務は、紅海からホルムズ海峡まで広がる紛争を心配しなければならない。