菅政権なら「安倍家の生ゴミのバケツのふた」 田中真紀子氏が語る自民総裁選
石破氏は「納豆餅」、岸田氏は「冷凍の透明人間」と低調さに苦言。野党新党にも注文
2020年09月09日
自民党総裁選が9月8日に始まった。久々の新首相誕生につながる与党の一大行事が、なぜこんなに低調なのか。同時並行で代表選が進む野党の立憲民主党と国民民主党の合流新党には何が問われるのか。かつて政権を奪い合った自民党と民主党の双方で閣僚を務めた、田中真紀子氏(76)に聞いた。
真紀子氏は1972~74年に首相を務めた田中角栄氏の長女。父の新潟県の地盤を継いで93年に衆院議員に初当選し、自民党政権で科学技術庁長官、外相、民主党政権で文科相を務めた。東京・目白台の自宅近くのホテルでのインタビューは、自民党総裁選に辛辣だった。
「真ん中ははぐらかし」
――自民党総裁選が告示され、元幹事長の石破茂氏、官房長官の菅義偉氏、政調会長の岸田文雄氏(写真では右から)が立候補しました。3候補がそろって臨んだ8日の記者会見はどうでしたか。
真ん中(菅氏)ははぐらかし、両脇の二人(左の岸田氏、右の石破氏)は具体性がなかった。特に森友・加計学園や「桜を見る会」の問題を問われた時の答えぶりです。あんなに国民の政治不信を生んだ問題なんだから手術して取り除くのが当たり前なのに、やる気が見えません。
昨夏の参院選で、広島選挙区で自民党公認候補の河井案里被告(公職選挙法違反の罪で公判中)に党が1億5千万円という破格の支給をしていたこともそうです。国民から集めた政党交付金を何に使ったのか。党のトップとして踏み込んで対応する姿勢は感じられませんでした。
――田中さんが自民党にいた頃の1998年の総裁選で、小渕恵三、梶山静六、小泉純一郎の3氏が立候補した時、「凡人、軍人、変人」と評して話題になったのを思い出します(当選した小渕氏が首相に就任)。今回の総裁選に出た3氏をどう表現しますか。
石破さんは納豆餅ね。アメリカ人の知り合いの夫婦が正月にうちに来たことがあって、お餅をふるまったら「いつ飲み込むんだ。かみ切れない」と。それに納豆をからめたら、もったいぶった食べ物だけどよけいべちゃべちゃして、いつまで経っても飲み込めない。
岸田さんは初当選同期で仲はいいんだけど、冷凍になった透明人間かな。固まっちゃっていて、それでも自然解凍したら水がでれでれと出てきてふつうは生臭くなるんだけど、溶けても何もない透明人間。調理してもおいしくない。石破さんよりも背骨を感じない。
菅さんは暗い。生ゴミを詰め込んだバケツのふた。その取っ手ですね。だれにしたって料理の乗ってないお皿のようなもので、そんなの出されても魅力がない。たたかれても主張をばんと言って国民に料理を出さなきゃだめ。政治ってもっと明るく光り輝いて期待を持たせるものでしょ。でもみんな熱が、エネルギーがない。
野党合流新党に注文
――一方で、野党は立憲民主党と国民民主党が合流します。
少しは進歩したかな。立憲民主党の幹部には、早くまとまらないと、前の衆院選で小池百合子さん(東京都知事)の希望の党にやられたように、どんどん引っぺがされるよと伝えていました。政治はタイミングです。まずは大きな方向性でまとまって、財政や安全保障といった政策の実現可能性は後で詰めればいいんで、手前でもめて分裂しても仕方がないんです。
国会議員は与党も野党もみんな最初は素人なんだけど、そこは自民党に一日の長があって、まずは数でまとまることで政策を実現するんだということを若手にベテランが教える。私も最初は森喜朗さん(元首相)に相当やられました。ところが野党にはそれがなくて、当選回数もポストも関係なく、しかも近親憎悪で俺は議員だ、俺も議員だで張り合って離合集散してしまう。
今回せっかく150人ぐらいのまとまりができるんだから、自民党のように、時には互いに引いて人の意見を聞くというしたたかな文化ができれば、また政権交代もできると思う。国民は野党の分裂劇をこれ以上見たくないんです。
――いまその野党の新党でも代表選の最中で、立憲民主党の枝野幸男代表と、国民民主党の泉健太政調会長が立候補しています。
枝野さんにはかつて国会で席がそばの時、頭はいいけど売れない弁護士みたいな顔(本人は実際に弁護士)をいつもしているから、あれでは親しまれないと思って「何で仏頂面なの」と聞いたら、「顔はもう変えようがないんで」と。でも2006年に彼に双子ができた時、「やっと生まれました」と破顔一笑を見せたので、「その顔よ。テレビでしてごらんなさい」と言いました。
若い泉さんも出るんだから闊達に議論した上で、豆がはじけて飛び出さないようまとまりを保って、自民党にはできない安倍政権の検証を政策論争の形で迫ってほしい。今の自民党総裁選の体たらくは野党がだらしないせいでもあるから、頑張って政治に緊張感を生んでほしいですね。