仏教を上座部、大乗と分けるほかに、密教を加えて三つに分ける説があります。唐の太宗皇帝(598~649)は宗教に寛容で、景教:キリスト教ネストリウス派が流行しました。西安には大秦景教流行中国碑があります。大秦とはローマ帝国のことです。
大乗仏教はインドでバラモン教を取り込み、チベットではボン教を取り入れて唐に伝えられました。唐の都、長安には仏教のほかにも道教やゾロアスター教の寺院があり、密教にはそれらの教義が取り込まれました。唐王朝の寛容な宗教政策があって密教の発展があったといえます。
空海(774~835)が唐に留学したとき、近所に景教の大秦寺がありました。空海にサンスクリット語を教えた般若三蔵は大秦寺にいたインド僧です。
〇仏教とゾロアスター教
ゾロアスター教は紀元前6世紀ごろ(他の説では紀元前13世紀ごろ)イラン系アーリア人の多神教をもとに、ゾロアスターの「善悪二元論とハルマゲドン」を説く宗教です。現在、その信者はインドのムンバイを中心に75,000人といわれています。火を祀るので拝火教とも呼ばれています。
ゾロアスター教は現在では信者数は少ないものの、歴史上ユダヤ教、キリスト教、イスラム教などの一神教に大きな影響を与えました。いずれも「最後の審判」「神と悪魔」を説きます。仏教への影響も少なからずあります。
その一つは「地獄と閻魔」です。仏教では寒熱地獄など136の地獄があり、悪いことをしたものは閻魔の審判を受けるとされています。仏教の説く本当の地獄とは、私たちの心の状態です。この世は地獄でもあり、また極楽でもあります。
大乗仏教の阿弥陀仏は「永遠の光をもつ」という意味です。ゾロアスター教は火を拝みますので永遠の光もその影響だとされます。勒菩薩も古代イランの神ミスラがモデルとされています。いずれにしても宗教はお互いに影響しあって発展してきたということを忘れてはいけません。