輪島市住民投票条例第18条は投票者総数が投票資格者数の過半数に達しないないときは不成立とし、開票作業すら行わないことを定めている。
いわゆる50%条項である。
投票数が過半数に達しないということは、市を二分するような課題でなかったということだから不成立だと市は説明している。
そのまま読めばもっともらしい理由だが、市長が「投票にいかないことも選択肢」と議場や様々な会合で語り、産廃処分場賛成派の市議は一軒一軒足を運び、あるいは地域の集会などでのあいさつでストレートに住民投票に行かないでほしいとお願いしている。
「なんか変!」と感じている市民は多い。
「変」の理由を産廃問題を考える会はチラシで指摘し、それを補足する形で先日私もブログで少し書き加えた(こちら) 。
そこでも少し触れたが、市長や議員が先頭に立ってボイコットを訴え、結果的に投票率が50%以下だったから、市を二分する課題ではなかったという理屈はどう考えてもおかしい。
50%条項がある限り産廃処分場推進派にとってはこういうボイコット戦術もありうるが、だとしたら50%条項自体が欠陥規定ではないか。
今朝の北陸中日新聞は投票率を成立要件にするとボイコット運動を誘発すると問題視している武田真一郎成蹊大法科大学院教授のコメントを紹介し、成立要件を有権者全体の得票率としているドイツの州や我孫子市を例を紹介している。
我孫子市の市民投票条例は2004年に成立、施行されているが、この条例を提案した福島浩彦市長(当時)は、「成立要件に50%ルールを採用しなかった理由」として以下のように記している(こちら) 。
主な理由の1つは、投票をした市民に対する責任からも、情報公開の観点からも、開票結果を公表する必要があるということ。我孫子市の場合、投票率49%では約54,400票となる。この票を無駄にして良いはずはない。
もう1つは、いわゆる投票ボイコットにより住民投票自体を不成立にしてしまうことが可能になってしまう。ボイコット運動が起こると、住民投票にかける本来のテーマについて、市民同士の議論を深めることができなくなる。
このため50%ルールは採用せず、成立要件(尊重義務)に関して「投票した者の賛否いずれか過半数の結果が投票資格者総数の3分の1以上に達したときは、市長、市議会及び市民は、市民投票の結果を尊重しなければならない。」と規定した。3分の1に達しなかった時は、参考結果となる。
まさに輪島市の現状は、条例の規定がボイコット運動を誘発し、産廃を巡る議論が深まるどころか市は考える会の質問状や申入書にすらまともに答えようとしない事態を招いている。
私は、国内最大級の産廃処分場は輪島市や能登にとって負の遺産だが、常設型の輪島市住民投票条例は今後も活かしていくべき輪島市の財産だと思っている。ぜひ他の自治体の住民がうらやましがるようなモデルを目指してほしいとも思っている。
今回の投票が終わったら、様々な反省点を踏まえ、輪島市議会の中で改正に向けた議論が展開されることを期待している。
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