北野進の活動日記

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6月議会閉会 補正予算に3人が反対

2018-07-04 | 珠洲市議会
珠洲市議会6月定例会は今日が最終日。
最終日は採決が中心となり、まず議会議案である珠洲市議会議員倫理条例が提案され、全会一致で可決成立した。
この条例については、いつか、どこかで詳しく語る責任があると思うが、いましばらくお待ちを。

次に市長提出議案について、付託された委員会の委員長の報告があり(質疑なし)、討論へ。

一般会計補正予算に対して、私と「新生すず」を代表して濱田議員が反対の立場で、同志会を代表して森井議員が賛成の立場で討論をおこない、採決の結果、賛成9人、反対3人(小泊議員は欠席)で可決となった。
他の議案はいずれも全会一致で可決、承認された。

以下、私の反対討論の原稿です。

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私は、今議会に提案されました一般会計補正予算に反対であり、以下理由を述べさせていただきます。

今回提案された補正予算には、奥能登国際芸術祭実行委員会への負担金として、芸術祭の開催準備事業費、推進事業費計約4800万円が含まれています。実行委員会はさる6月1日の総会で、次回開催に向け、この負担金を財源として、基本計画や実施計画の策定、事業の監修、品質管理、事業全般に係わる進捗管理などをアートフロントギャラリーに委託する方針を確認しています。また、次回も第1回同様、株式会社アートフロントギャラリー代表取締役会長の北川フラム氏を実行委員会の総合ディレクターに据えることとしています。

アートフロントギャラリーは株式会社ですから、代表取締役は業務委託契約において利益を最大にすることが求められます。一方で実行委員会は、珠洲市からの負担金や国からの交付金、補助金を主な財源としていますから、基本的に行政同様、最小の経費で最大の効果が発揮できるよう求められます。アートフロントギャラリー代表取締役会長と実行委員会総合ディレクターという2つの異なる役割をもつ北川フラム氏は、一方の立場の利益を追求すると、もう一方の立場の不利益になる、いわゆる利益相反の立場にあります。

一般的に、利益相反の立場にある場合、地位が要求する義務を果たすのは難しくなり、本人やその地位に対する信頼を損なう不適切な様相を引き起こすことがあります。そのため、利益相反行為は一定の範囲内においては違法なものとして法律で規制の対象なります。また、違法とまではならなくとも倫理的、道義的批判を招くため、政治やビジネス、研究開発など社会の様々な分野で管理方針を定めるなど対策が講じられています。

政治の分野の最もわかりやすい利益相反の具体例は、先ほど可決された議員倫理条例です。珠洲市議会議員は、地方自治法第92条の2の規定によって、珠洲市と請負契約を結ぶ者になることはできません。まさに利益相反行為となるからです。また、法律で禁止されていなくとも、議員が様々な団体の長を務めている場合、市民の皆さんから誤解や疑念を抱かせるおそれがあります。そこで一定の条件にある団体の長を務めている場合は報告義務を課す内容となっています。

民法や会社法では、取引行為において禁止あるいは制限される利益相反行為が規定され、金融商品取引法では顧客保護のため、一定の金融機関に利益相反管理方針の策定を義務付けています。産学官の連携を進める大学も、研究者が民間企業の役員を兼ねるケースが多くなったため、研究の公共性を保つ観点から利益相反マネジメントを策定しています。

私は昨年の9月議会で、アートフロンギャラリーの代表取締役会長である北川フラム氏が実行委員会の総合ディレクターを務めることについて、「今回は初回ということでこのような形となったが、次回開催にあたっては、まず総合ディレクターを空席とし、初めに開催ありき、初めにアートフロントギャラリーありきではなく、他の芸術祭の開催方式を含め、幅広く研究した上で判断すべき」と求めてきました。この時の市長の答弁は「今後も慎重に対応してまいりたい」とのことでしたが、この間の動きをみると組織や開催方式について、残念ながら、なんら見直しは行われていません。要するに「今後も慎重に対応してまいりたい」という答弁は、「これまでも慎重に対応してきたので問題なし。これからも同じように慎重に対応するので問題なし」という認識の表明だったということでしょう。

そこで先般の一般質問では、北川フラム氏の利益相反の問題について法的に問題はないのか問いました。金田課長からは、「北川フラム氏は、実行委員会のアドバイザー的立ち位置であり、実行委員会の議決権を持たないので民法上の利益相反行為には当たらない」との答弁がありました。確かに総合ディレクターには採決で賛否の意思を表明する議決権はありません。しかし、実行委員会で作成し、総会などで配布もされている組織図を見ますと、総合ディレクターは実行委員会の意思決定組織の中にはっきりと位置づけられています。そもそも実行委員会規約によると、総合ディレクターとは芸術祭のアドバイザーではなく「芸術祭を監督する」と規定されています。監督なんだけど実際はアドバイスするだけとの説明は全く説得力がありませんし、ある意味、監督の存在を否定するようなものです。一人一票の議決権はなくとも、珠洲市が三顧の礼を尽くして招聘した総合ディレクターです。一実行委員よりはるかに大きな実質的な決定権を持つ立場にあると捉えるのが当然ではないでしょうか。

実行委員会は、法的には権利能力なき社団という位置づけであり、その中で監督という立場にある総合ディレクターを法的にどう捉えるかについては、法律で明記されているわけではありません。利益相反の立場にはあるけれど、それが直ちに違法だとは私も断言するつもりはありません。しかし、実行委員会は4億円以上もの大きな予算を扱う組織です。予算の使途の不透明さも払拭されていない中、仮に法律に抵触しなくとも、市民の皆さんから不信や批判を招かないよう、組織のありかたや組織運営の方法について、様々な検討を加えるべきだと思います。

たとえば、ディレクターとは別に予算管理を担うプロデューサーを置く、あるいは複数ディレクター制とし企画会社に業務委託はしない、あるいは総合ディレクターは毎回新たな人材を選任する、あるいは実行委員会をより市から独立した組織とし、市は負担金ではなく補助金を交付するという方法など、実際に全国各地の芸術祭では様々な方式がとられています。

第1回は暗中模索、走りながら考えるような状態でしたからやむを得ないと思いますが、次回もこのままというわけにはいきません。利益相反の問題が放置された中、アートフロントギャラリーへの業務委託費が含まれる今回の芸術祭関連予算に賛成することはできません。
以上、今回の補正予算に反対する理由とし、議員各位の賛同をお願い申し上げ、討論とします。
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濱田議員は、芸術祭後の市民アンケートの結果から、市の負担を7割以上の市民が知らない現状を指摘、負担なしでサービスだけ受けられるとしたら誰でも賛成して当たり前で、継続開催への理解は十分得られていないとして芸術祭関連予算については継続して審査すべきと主張、森井議員は補正予算に賛成としつつも、予算執行の透明性の確保や運営組織の在り方にさらなる検討を求めるなど、次々と注文を付ける「賛成討論」。
閉会後、私の反対討論にも、会派を超えて賛同の声をいただいた。
市民の皆さんの間では芸術祭について賛否両論ある。
賛成の方でも多額の経費、あるいは使途の不透明さについては疑問を持っている方も多い。
芸術祭の課題の一つが討論を通じて浮き彫りになった形に。
市民の意識にようやく議会も少しは近づいたか。




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