「福井から原発を止める裁判の会」が福井市内で開いた学習会に参加。
テーマは「原発廃炉の時代『私たち』の選択は?」。
講師は大阪府立大名誉教授の長澤啓行さん。
長澤さんは「原子力発電に反対する福井県民会議」が設置した「原子力発電所の廃炉問題に関する検討委員会」で座長を務め、昨年12月に「原子力発電所の廃炉問題に関する提言」を発表している。
今回の学習会はこの提言の解説と参加者からの質疑を中心に行われた。
「原発15基体制」と言われた福井県若狭地域だが、もんじゅ、ふげん、そして商業用原発の敦賀1号、美浜1,2号、大飯1,2号の計7基の廃炉がすでに決まっている。全国でも福島第一原発事故以降、21基の軽水炉の廃炉が決まっている。
志賀原発を残念ながら再稼働の是非を巡ってまだ議論が続いているが、全国を見渡せば(世界を見ても)、原発の廃炉時代、後始末時代に突入したことは間違いない。
こうした中、放射能で汚染された原子炉建屋の解体撤去をどう進めるか、使用済み核燃料をどう取り扱うか、廃炉段階の地域経済を度するのかといった問題は、将来の課題ではなく現在の問題となっている。もちろん原発に賛成、反対に関係なく考えていかなければならない問題だ。
原発は長年「トイレなきマンション」との指摘を無視して運転が続けられてきたが、原発廃炉時代に入ったいま、政府・電力会社はまさにそのツケに直面している。すでに廃炉作業にとりかかってるふげんや東海原発は廃止措置計画、いわゆる廃炉作業が行き詰まっている。理由は放射性廃棄物の持っていく場所がないからだ。
今後、廃炉に向けた作業に入っていく他の24基の原発も同様の課題に直面することになる。その意味では、今回の提言は政府、電力会社にとっても大いに参考になる内容が盛り込まれている。
一方、原発に反対する人たちの間でも廃炉問題は決して一致した見解があるわけではない。
一言で「廃炉」と言っても、その解釈、受け止め方にも人それぞれでかなりばらつきがある。
「志賀原発を廃炉に!」と言ったとき、もう再稼働しないと決定することをイメージする人もいるだろうし、解体・撤去を終え、放射性廃棄物も搬出し、きれいな更地状態に戻すことまで含めてを「廃炉」だとイメージしている人もいるだろう。
ちなみに「廃炉」は法律用語ではない。運転停止から更地にする一連の手続きは「廃止措置」、原発の取り壊しは「解体」、解体廃棄物を持ち題して更地にすることは「撤去」となる。
言うまでもなく、原発の安全な「廃止措置」は第一義的には事業者である電力会社の責任であり、決して私たちが無責任に廃炉を叫んできたわけではないが、「運転中の原発を止める」、あるいは「再稼働阻止」という今現在の最大の危険を回避する行動に全力を注ぐ中、廃炉問題についての議論を十分展開してきたとは言い難いのが実情だろう。
しかし廃炉時代に突入した今、無責任、無能な事業者や国に任せていると廃炉に伴う新たなリスク、あるいは将来への新たなツケも生まれかねない。
長期停止中の志賀原発に関しても、多くの人とより具体的な廃炉時代のイメージ(廃止措置だけでなく地域経済や自治体財政も含め)を膨らませていくことも大事な作業となっていく。特に活断層上にある使用済み核燃料をどうするかは最優先の議題となる。
「廃炉問題」にテーマにした今回の検討委員会の提言は、反対運動の歴史の中でも画期的であり、しっかり受け止め、今後の県内の運動の中でも議論を深めていきたい。
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