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さる1月15日、志賀原発の敷地内断層の活動性評価をおこなう原子力規制委員会の審査会合が開かれた。
コロナ感染拡大防止のため、今回もテレビ会議方式での開催である。
当日の会議映像や資料、議事録(現時点ではまだアップされていない)は、
原子力規制委員会HP 北陸電力株式会社 志賀原子力発電所(2号炉)関連審査会合 の第935回のところから確認できる。
前回(2020年10月2日)の審査会合では、北陸電力から評価対象断層を一本追加する方針が示され、規制委側もこれを了承し、ようやく評価対象断層を陸域6本、海岸部4本の計10本とすることで確定した。
ただし、すでに評価対象とすることが決まっている断層についての活動性の審査は、その前の875回審査会合(2020年7月10日開催)やさらにその前の788回審査会合(2019年10月25日開催)でも行われている。
今回の審査会合はこれらの審査会合の延長として、当初の上載地層法に加え、地表面が工事ではぎ取られ確認できない断層については鉱物脈法で活動年代を特定する手法も取り入れ、北電側から説明がおこなわれた。
前回以降、北電はデータ不足の指摘に応えようと追加のボーリング調査を実施するなどデータ拡充に努めてきたが、その後の規制庁とのヒアリングでもデータは多いが整理されておらず、活動性を否定する論理構成がわからないなどといった厳しい指摘を受けてきた。
今回の審査会合では、データの補充やデータの整理を求める指摘はあったものの、活動性を否定する論理構成など根幹部分についての批判的なコメントはなく、「証拠や方向性、評価手法は理解できる」とし、現地調査の実施や周辺断層の影響評価にも話は及んでいった。
北電にとって審査が「着実に進展」したことは間違いない。
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北國新聞(1月16日)
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北陸中日新聞(1月16日)
ただし、この先もトントン拍子で進展するとは限らない。
まず、今回求めらた資料、特に福浦断層など周辺断層との関係で十分なデータをそろえることができるかということもある。
また、現地調査が単に北電の主張を追認するだけの場で終わるのか、追加の資料を求める場となるのかもわからない。
志賀原発と同様、敷地内断層の評価が続く泊原発では、ひと足先に昨年9月現地調査が実施され、早ければ年内にも敷地内断層の結論が出せるのでは、との見通しが規制委から示されていたが、現地調査でさらに資料拡充の指摘があり、北海道電力はいまだその対応ができていない。
志賀についても、例えば上載地層法に基づき「これぞまさに活断層」と指摘されたS-1断層のスケッチ図がある。規制庁はこれを否定する明確な証拠を求めてきた。今回提出された資料では、鉱物脈法でS-1断層の活動性を否定する資料が提出されているが、果たして「これぞまさしく活動性なし」と断定できるほどの精度の高さがあるのかどうかも厳しく吟味されることだろう。
仮に規制委が「活動性なし」と判断しても、それが最終結論となるかどうかはわからない。昨年12月4日の大飯原発の設置変更許可の取り消しを認めた大阪地裁の判決もある。
大阪地裁は「・・・このような原子力規制委員会の調査審議及び判断の過程には、看過し難い過誤、欠落があるものというべきである」と断じているのである。
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北國新聞(1月19日)
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北陸中日新聞(1月19日)
北電はさっそく志賀町議会に報告に走ったようだが、「おおむね理解が得られた」と報告する北電に対して、町議からは楽観視を戒め「これからが正念場」との注文が出たとのこと。
再稼働に期待する地元推進派にとっては、この間の北電の楽観論や強気発言は聞き飽きたということか。
今後の展開について付け加えるならば、これまでも指摘してきているが、現在の志賀原発の敷地内断層の活動性評価は、志賀2号機の再稼働に向けた「新規制基準適合性審査」のまさに入り口段階でしかない。
規制庁が1月6日付で整理した「原子力発電所の新規制基準適合性審査の状況について」という資料をご覧いただきたい。
志賀原発についてはP16~17に記載があるが、まだまだ審査は続くことが一目でお分かりいただけるかと思う。
この一覧表に加え、再稼働に向けてはさらに「特定重大事故等対処施設」の設置や、同じく重大事故に備えた「所内常設直流電源設備(3系統目)」の設置も求められ、それぞれの審査が控えてる。
安全対策にはまだまだコストがかかり、停止中の原発の維持管理費もかさんでいくのである。
さらに、さらに、くどい話になるが、仮に新規制基準に適合していると判断されようと、それが原発再稼働の免罪符になるわけではない。
廃炉・放射性廃棄物の問題含め、原発が将来にわたって人類の負の遺産になることは間違いなく、世界は確実に脱原発に向かっている。
まもなく福島第一原発事故から10年を迎えるが、いまだ4万人近い人たちが避難生活を強いられ、廃炉の見通しは立たず、汚染水問題など周辺環境への影響も終わりが見えない。
原発再稼働など許されることではなく、廃炉の日までたたかいは続くのである。
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