福島の三名山安達太良山と西吾妻山と磐梯山を一日一山のペースで登ってきた。いずれもアプローチが4時間以内と短い山だが、車以外の乗り物を使っていないのがまぁ唯一の自負といえるだろうか。
初日の安達太良山は絶好の天気に恵まれた。朝は霧が濃かったのだが、日が昇って一時間もする頃には抜けるような青空が見えてきた。前夜1泊した郡山市街から沼尻温泉の登山口についたのは9時40分頃、すでに車は4台止められていた。予定より遅れていたので早速準備をして登り始めた。
安達太良山への主な登山口は8つ。沼尻温泉スキー場からの登山口は二手に分かれていて、私は右側の船明神山ルートから登り始めた。なお左側は胎内岩をめぐる周回コースの下山口となっている。
すぐに白糸の滝展望台についた。
左からオオカメノキの実、ヤマハハコ、コケモモとクロマメノキ
暫く登っていくと左手崖下に鉱山跡と湯の花採取場が見えてきた。
その山越しに一切経山の噴煙が見えている。
登ること一時間 やっと稜線に出たようだ。一気に視界が開けてきた。
オヤマリンドウの花が出迎えてくれた。
シラタマノキとマイヅルソウの実、下はツルリンドウとゴゼンタチバナの実
周辺から立ち込める硫黄のガスの臭いが強くなってきた。眼下に見えるのは沼の平、ここの中央を突っ切る登山コースは亜硫酸ガスの危険のため現在廃道となっている。
檜原湖が望めた。
標高は1500mを超えただろうか、ガレ場の一角に黒真珠のようなガンコウランの実が目立つようになってきた。一掬いもぎ取って戴いてみる。口の中がすぐに甘酸っぱい香気で満たされる。
登山道の周囲には人工的に切り出したような大岩がごろごろしている。
硫黄臭の強い沼
船明神の頂を右に巻いた。
銚子滝口からの合流点
熊の糞を見つけた。まだ乾ききってはいない。昨晩あたりガンコウランやクロマメノキなどを食べに来ていたのだろう。
沼の平の奥に見えるのは吾妻連峰
牛の背に着いたのは昼少し前、2時間ちょっとで何とかここまで登ってきたことになる。風が急に強くなってきた。長そでシャツの上にベストのセーターを羽織ることにした。
眼下には二本松や福島の市街まで見渡せる。
いよいよ安達太良頂上、通称乳首と謂われる頂が見えてきた。背景に広がる放射状の雲が素晴らしい。
人々の足取りは登山の疲れからか、絶景に心を奪われたためか、あるいはその両方かゆっくりと一歩一歩を味わうような歩みをしている。そしていつの間にかゆっくりとしたリズムに同調している自分にも気づく。
八紘一宇の石碑が建つ頂上。
頂上直下の大岩の陰で風を凌ぎながら昼食をとった。日影では寒いので半分だけ日の当たる場所に腰を下ろした。乾いた空気のせいで眼下の市街地がよく見渡せ、それをおかずにしての昼食は最高だった。
再び牛の背を下る。
左手奥に磐梯山、中央には檜原湖が見える。
分岐を右に折れ、馬の背を経て矢筈が森へ。
くろがね小屋へ真っ直ぐに下りるコースも亜硫酸ガスのため廃道になっていた
鉄山
鉄山避難小屋が見えてきた。
石楠花塔。50年ほど前にあった飛行機事故の慰霊塔。飛行機のプロべらを二本、石塔の上に挿してある。遠くからはウサギの耳のように見えていた。
振り返ってみた沼の平全景。左手の頂が安達太良山
避難小屋を過ぎてからしばらくは緩やかな稜線歩きだった。が、それもこの胎内岩をくぐったところで終わり。白い矢印の下が通りぬけられる穴となっている。
あとはひたすら硫黄臭の強い谷底へ下っていく。道はごろごろしていて滑りやすく非常に歩きにくい。
見上げると岩にへばりつくようにロッククライミングをしている人がいる。
今にも崩れそうな奇岩の間をひたすらジグザグに下っていく。
この先が沼の平の登山コースだったところ。平成9年に亜硫酸ガスに巻かれて、4名の人命が失われたと書かれてあった。
生ぬるく硫黄臭の強い小沢を縫うようにして下りていく。
鉱山小屋の廃屋
どこかで道を間違えたのか、細い踏み抜いてしまいそうな板の道を行かざるを得なかった。
湯の花採取場を過ぎたあとは暫く右手に谷底を眺めながら、給湯管に沿った道を登山口までひたすら下りて行った。朝来た登山口に再び辿り着いたのは14時40分。登山に要した時間は4時間50分と思ったより短かった。
30年前には岳温泉口からこの山に登ったのだが、その時は悪天候でいい山だとの印象を持てなかった。が、今回は絶好の天気の中の登山でやっぱり本当に素晴らしい山だったのだと再認識させられた。
次回は西吾妻山と五色沼の予定。