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春の風に誘われて、「湯河原」まで。一泊して翌日は、箱根。車での旅。湯河原温泉は、初めての地。温泉は、久々。
何の事前の調べもなくやってきて、宿に着く前に、興味深い二つのところへ。
①万葉公園
朱塗りの橋をわたったところから始まる。「藤木川」と「千歳川」との合流付近。
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「千歳川」沿い。観光会館のところに車を駐めて、川沿いを上がって行きます。せせらぎの音と緑の散策道。
ここは、万葉集で唯一、温泉を詠んだ、その歌の土地だそうです。
公園入口の説明板。
足柄の/土肥の河内に/出づる湯の/世にもたよらに/子ろが言はなくに 万葉集・巻十四相聞・3368・詠み人知らず
右の歌は東歌といい、総数230首。多くは相聞(恋歌)で、一部は比喩歌。相模の国の歌は15首。
「足柄(あしがり)」は足柄(あしがら)の訛りで今の足柄上・下一帯の地。「土肥(とひ)」は湯河原の呼称で今も駅付近の地区名。「河内(かふち)」は川に沿う地域で万葉公園付近、千歳川と藤木川の合流辺。「たよらに」は揺れ動き不安定なさま。
「足柄の・・・出づる湯の」までが、温泉が噴き出して中空に揺れて消えてゆくさまを叙べて、「たよらに」を修飾する序詞。「子ろ」は上代の東国方言で娘子の意。・・・
足柄の土肥の川辺に噴き出す温泉の湯煙、それが中空に漂い揺らぐように、あの娘は私との関係を不安げには言わなかったのに心配で、と漂い消えてゆく湯煙に託し揺れる男の恋心・・・
※「たよら」=揺れ動いて安定しないさま。いいかげんで定まらないさま。
※「なくに」=①…ないことだなあ。
②…ないことなのに。…ないのに。
③…ないのだから。…ない以上は。
歌意は今ひとつすっきりきません。「たよらに」の解釈、湯煙なのか温泉そのものなのか、「世にも」と「言はなくに」とのつながり、・・・。
(例1)湧き出る温泉の(湯煙の)ように、心が揺れ動いているとは、あの娘はけっして言わないが、・・・
(例2)二人は、湧く温泉のように、絶えることはけっしてないとあの娘は言うのだけれども、・・・
いずれにしても、不安な男心を詠った歌であることには違いないようですが。
なお、説明板には相模の国の歌は15首とありますが、実は12首らしいです。
その一部
・相模嶺の小峯見過ぐし忘れ来る妹が名呼びて吾を音し泣くな
・我が背子を大和へ遣りて待つ慕す足柄山の杉の木の間か
・足柄の箱根の山に粟蒔きて実とはなれるを逢はなくもあやし
・百島足柄小舟歩き多み目こそ離かるらめ心は思へど
・あしがりの麻萬の子菅の菅枕あぜか纏まかさむ子ろせ手枕
「千歳川」の対岸は、静岡県熱海市。「千歳川」が神奈川県と静岡県との県境になっている。
所々に万葉集に輯録された歌とそれにちなんだ木々が植えられている。
奥山の 八つ峰の椿 つばらかに 今日は暮らさね ますらをの伴 大伴家持
天平勝宝2年(750)の旧暦3月3日の歌。越中の国守大伴の家持の館での上巳の宴。
男たちよ、奥山にたくさん咲いている椿の花のように、今日一日、宴を大いに楽しんでください。
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残りたる雪に交じれる梅の花早くな散りそ雪は消ぬとも 大伴旅人
残った雪にまじるように咲いている梅の花よ、雪が解けて消えても、そうすぐに散ってはいけない
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ぬばたまの夜ふけゆけば久木生ふる清き川原に千鳥しばなく 山部赤人
注:「久木」=「あかめがしわ」のこと。
万葉集にちなんだ草花が植えられている。
アザミ、アキノキリンソウ、リンドウ、アヤメ、ワレモコウ、ギボウシ、フクロウニンジン、・・・。
「国木田独歩碑文」。
湯河原の渓谷に向かった時はさながら雲深く分け入る思があった
説明板。
②独歩の湯
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公園の一角にある「独歩の湯」足湯の設備。のんびりと効能を確かめながら足を温泉につける。
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風呂桶の滝。
何の事前の調べもなくやってきて、宿に着く前に、興味深い二つのところへ。
①万葉公園
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「千歳川」沿い。観光会館のところに車を駐めて、川沿いを上がって行きます。せせらぎの音と緑の散策道。
ここは、万葉集で唯一、温泉を詠んだ、その歌の土地だそうです。
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足柄の/土肥の河内に/出づる湯の/世にもたよらに/子ろが言はなくに 万葉集・巻十四相聞・3368・詠み人知らず
右の歌は東歌といい、総数230首。多くは相聞(恋歌)で、一部は比喩歌。相模の国の歌は15首。
「足柄(あしがり)」は足柄(あしがら)の訛りで今の足柄上・下一帯の地。「土肥(とひ)」は湯河原の呼称で今も駅付近の地区名。「河内(かふち)」は川に沿う地域で万葉公園付近、千歳川と藤木川の合流辺。「たよらに」は揺れ動き不安定なさま。
「足柄の・・・出づる湯の」までが、温泉が噴き出して中空に揺れて消えてゆくさまを叙べて、「たよらに」を修飾する序詞。「子ろ」は上代の東国方言で娘子の意。・・・
足柄の土肥の川辺に噴き出す温泉の湯煙、それが中空に漂い揺らぐように、あの娘は私との関係を不安げには言わなかったのに心配で、と漂い消えてゆく湯煙に託し揺れる男の恋心・・・
※「たよら」=揺れ動いて安定しないさま。いいかげんで定まらないさま。
※「なくに」=①…ないことだなあ。
②…ないことなのに。…ないのに。
③…ないのだから。…ない以上は。
歌意は今ひとつすっきりきません。「たよらに」の解釈、湯煙なのか温泉そのものなのか、「世にも」と「言はなくに」とのつながり、・・・。
(例1)湧き出る温泉の(湯煙の)ように、心が揺れ動いているとは、あの娘はけっして言わないが、・・・
(例2)二人は、湧く温泉のように、絶えることはけっしてないとあの娘は言うのだけれども、・・・
いずれにしても、不安な男心を詠った歌であることには違いないようですが。
なお、説明板には相模の国の歌は15首とありますが、実は12首らしいです。
その一部
・相模嶺の小峯見過ぐし忘れ来る妹が名呼びて吾を音し泣くな
・我が背子を大和へ遣りて待つ慕す足柄山の杉の木の間か
・足柄の箱根の山に粟蒔きて実とはなれるを逢はなくもあやし
・百島足柄小舟歩き多み目こそ離かるらめ心は思へど
・あしがりの麻萬の子菅の菅枕あぜか纏まかさむ子ろせ手枕
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奥山の 八つ峰の椿 つばらかに 今日は暮らさね ますらをの伴 大伴家持
天平勝宝2年(750)の旧暦3月3日の歌。越中の国守大伴の家持の館での上巳の宴。
男たちよ、奥山にたくさん咲いている椿の花のように、今日一日、宴を大いに楽しんでください。
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残りたる雪に交じれる梅の花早くな散りそ雪は消ぬとも 大伴旅人
残った雪にまじるように咲いている梅の花よ、雪が解けて消えても、そうすぐに散ってはいけない
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ぬばたまの夜ふけゆけば久木生ふる清き川原に千鳥しばなく 山部赤人
注:「久木」=「あかめがしわ」のこと。
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アザミ、アキノキリンソウ、リンドウ、アヤメ、ワレモコウ、ギボウシ、フクロウニンジン、・・・。
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湯河原の渓谷に向かった時はさながら雲深く分け入る思があった
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②独歩の湯
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公園の一角にある「独歩の湯」足湯の設備。のんびりと効能を確かめながら足を温泉につける。
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