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おやじのつぶやき

おやじの日々の暮らしぶりや世の中の見聞きしたことへの思い

「通し狂言 東海道四谷怪談」―国立劇場―(旧東海道。補足編。その2。)

2015-12-13 21:45:52 | じじばばがゆく

 歌舞伎は久しぶりなので、とても楽しみ。あなたとは久しぶりじゃないけど。「永青文庫」だって、ついこの間だし。ちょっと会いすぎって感じかも、よ。

 そうそう、「永青文庫」に行った夜、寝言だか何だか大きな声で一声叫んでいたって、家人から言われたわ。たしかにすごかったし、熱かったし、リアルだし・・・。実際に見ていると、肉筆絵の迫力ってすごかった。けっこう若い女性連れが多かったわね。

 そして、今日は歌舞伎か。でも、「旧東海道」の旅が終わって、こうして「東海道四谷怪談」って趣向もなかなかいいわよね。
 あなたもよく考えているわ。誘ってくれてありがとう。

 この席、花道も舞台もよく見えるし、いい席でよかったわ。

 松本幸四郎と市川染五郎か。興味深い組み合わせね。

 花道で、作者の南北さんが口上を言っているわね。あらやだ、染五郎じゃない。さっそく登場。なるほど、四谷怪談と赤穂浪士の関わりを、へえ、ご親切にね。

 そうよね。それでも、なんで「四谷怪談」に「東海道」って付いているかしらね。舞台は江戸の土地が出てくるだけだし、最後の討ち入りの場面は鎌倉になっているけど、「東海道」とは直接、関係ないし、・・・。家に帰ってから調べてみるわ。

 さて、始まり、始まり。ストーリーは何となくわかるけど、イヤホン・ガイドを頼りに。

通し狂言東海道四谷怪談 三幕十一場

発 端   鎌倉足利館門前の場
序 幕
 第一場  浅草観世音額堂の場
 第二場  浅草田圃地蔵前の場
 第三場  同   裏田圃の場 

二幕目
 第一場  雑司ヶ谷四谷町民谷伊右衛門浪宅の場
 第二場  同        伊藤喜兵衛宅の場
 第三場  元の伊右衛門浪宅の場

大 詰
 第一場  本所砂村隠亡堀の場
 第二場  深川寺町小汐田又之丞隠れ家の場
 第三場  本所蛇山庵室の場
 第四場  鎌倉高師直館夜討の場

 12時開演で、16時45分終演。間に35分と20分の休憩があるけれど、役者さんもお疲れ様です。

 前に歌舞伎座で観たときと、発端と大詰めの第四場が加わって、第二場もそうかな。「仮名手本忠臣蔵」との関連付けしているようだわ。たしかに夏の納涼歌舞伎でドロドロと幽霊話じゃ、冬のことだし、ふさわしくない。まして、今月は討ち入りの月だしね。

 でも、最後のにぎやかな立ち回り、エイエイオー、首尾を成し遂げて見事じゃ! ではそれまでの「怪談」が「快談」になってそぐわない感じがしちゃう。まして、さっきまでお岩さんでおどろおどろしかった染五郎が大星由良之助で出てきて、お岩さんの亡霊に翻弄され、あげくはてに殺された民谷伊右衛門が、でかした!あっぱれ、あっぱれ! の幸四郎じゃねえ。年末の歌舞伎らしい面白さではあるけれども。それまでの、ヒュー、ドロドロがすっかりあせてしまったわよ。

 悪口ついでにいうと、幸四郎はふさわしくない役柄だったじゃない。どうみてもあの顔のでかさと押しの強さ。あんな男に一目惚れしたあげく、孫かわいさの祖父に悪事を働かせる、なんてよほどのことじゃない、と。
 染五郎は頑張っていたね。さすがだわ。個人的には、板東新悟が気に入った。

 「四谷怪談」の見せ場は、何回観てもよく出来た趣向で、感心します。

 髪梳きの場面。毒薬によって顔が醜くなったお岩さんが、鉄漿(おはぐろ)を塗り、櫛で髪を梳いていくけれど、髪が梳かれるたびに抜け落ちていく。この時のうなるように声を引き絞った「独吟」はお岩の裏切られた悲しみ、恨みを切々と表現していて、客席も真っ暗の中、本当に引き込まれていったわ。この場面での染五郎の発声もすばらしかったわ。
 髪をとかしながら、顔を上げて鏡を見上げる仕草、次第に変わる形相・・・、あそこまでのすごみが出せる、ってすごいわよね。

 「堀の場」での「戸板返し」のところも面白い。
 釣り糸を垂れる伊右衛門の前に流れついた戸板にはお岩さんと小平の死体が表裏に打ち付けられているのよね。この二役を染五郎が演じる。戸板を裏返すと同時に早替りに。どういう仕掛けなのかしらね。

 余談だけど、「江戸川」(神田川)に流したはずの、二人の死骸を打ち付けた戸板が「隅田川」に下り、それがどうして上流の「小名木川」に入って、砂町の堀に流れ着いたのかしらね。不思議だわ。

 それから、「蛇山庵室の場」で、お岩の幽霊が燃えさかる提燈から登場する「提灯抜け」。本火が消えるか消えないかのうちに出てくる(それも宙づり)し、そのすぐ後に「南無・・・」の掛け軸に人を引き入れる「仏壇返し」という仕掛けも面白かった。客席から悲鳴が上がるのもご愛敬だったわね。

 そこで、どうして「東海道」という名が付されているのか、ってことだけど・・・。

 この作品の登場人物のうち、多くは『仮名手本忠臣蔵』の世界と関係しているわよね。伊右衛門やお岩の父四谷左門などが、塩冶家の浪人(浅野家の浪人)という設定で、一方、伊藤家は高師直(吉良家)につながっている・・・
 殿中での刃傷沙汰により塩冶家は断絶し、家来たちは浪人を余儀なくされ、ある者は商人に身をやつし、ある者は物乞いになって、女の中には夜鷹となって、江戸の街で生活せざるをえない。中には仇討ちの本意を失っていく男の姿、そうした中での葛藤、陰謀、犯罪、裏切り、恨み、嘆き、復讐、・・・っていうところかしら。

 そのへんは表狂言「仮名手本忠臣蔵」の世界と重なっている。だからといって、「四谷怪談」と「東海道」が結びつくのはちょっと納得がいかないけれど。

 「東海道四谷怪談」(白水社)の解説で、

 この作の上演方法は、第1日目に「仮名手本忠臣蔵」の5段目、すなわち山崎街道の場、6段目に同じく山崎街道与市兵衛宅の場のあと、2番目の「東海道四谷怪談」がはじまることになる。・・・こうしてみると、「仮名手本忠臣蔵」の山崎街道と対比させて、関東の怪談の意味でつけたもののようにうけとれる。

 という指摘があるわ。

 でも、当時評判になっていた、弥次さん喜多さんの「東海道中膝栗毛」の「東海道」にあやかったんじゃないかしらね。今でもそうじゃない、流行したフレーズを利用して、商品の宣伝にしたりするってよくあるから。

 そうそう、「四谷怪談」の大詰め、伊右衛門が討たれる場面で雪が降りはじめ、引き続き「忠臣蔵」の討ち入りの場につながっていくから、「四谷怪談」と「忠臣蔵」とは大いに関連があるよね。
 今回、特にそのまま舞台を転換して、大詰・最後の場として雪振りしきる中での討ち入りと、見事、首尾を果たして雪が止んだ朝のすがすがしさを持ってきていたから、つながりがよりはっきりした印象だったわ。

 ホント、今日は一日、楽しかったわ。
 それではよいお年を! また、お会いしましょう! 

 上州の山奥の温泉? ふ~ん、ま、心の片隅に入れておくわ。

                  

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