1965年の日韓請求権協定をひっくり返し、このたびの徴用工裁判では計4億ウォン(約4千万円)の賠償を日本に求める判決が下された。

「本来、文在寅(ムンジェイン)政権も裁判所に対して『この件は、65年の日韓請求権協定で終わっている』という政府見解を出すべきだったと思います。ところが、現政権はそれをしないどころか、『判決を尊重する』などとコメントを出しています。信じられません」

 と元外務省北米第一課長で外交評論家の岡本行夫氏が嘆くように、文政権は“確信犯”的な振る舞いを見せている。

 国のトップが「率先」して横紙破りを敢行する国、韓国。しかし、国際ルールを無視した蛮行は、反日が染みついた韓国国民にはウケるかもしれないが、国際的に見れば同国の孤立を招くリスクを内包していることは火を見るより明らかである。「面倒な隣人」が村八分扱いされるのは、何も日本固有の文化ではあるまい。

『悪韓論』(新潮新書)の著者で評論家の室谷克実氏は、

「朴正煕(パクチョンヒ)政権時代、徹底的に弾圧された左翼グループのひとりが今の文大統領で、彼は投獄されています。その結果、裁判官になりたかったのになれなかった。そうした過去があるため、文大統領は朴正煕をとにかく否定したい。朴正煕の一番の仕事が日韓基本条約なので、彼はこれを潰したいんです。そして韓国のインテリ層は、自分たちの正義のためであれば周りに間違っていると注意されても猪突猛進するのをよしとする思想を持っている。ですから文大統領も、今回の件がどんな結果をもたらすか、後先考えずに突き進んでいるんだと思います」

 と、文氏の無鉄砲さを指摘するが、当然ながら展望なき外交に未来などあるはずもない。

日韓の「離婚」

 実際、日頃は日本を敵視する韓国メディアも、さすがに今回の判決は不安視しているらしく、以下のような報道が散見される。例えばまず、

〈この判決は国際法に違反する可能性が高い〉

〈植民地支配の違法性問題は、韓国であれ日本であれ、一方の国の憲法ではなく、その当時の国際法に基づいて判断しなければならない〉(いずれも10月31日付文化日報)

〈日本が国際司法裁判所(ICJ)への提訴を言及し、国際世論戦を繰り広げる場合、(韓国は)決して有利ではない〉(同月30日付京郷新聞)

 といった具合に、やはり、そもそも国際ルールから逸脱しているという分析が見られる上に、現実的な問題として、今回の判決を機に韓国が窮地に立たされるのではないかとの危機感も表している。

〈今のような日韓関係の状況が続けば、いろんな分野において日本の協力を求めることは容易ではない〉(同月30日付毎日経済新聞)

 そのため、機先を制するかのように、

〈今回の判決による報復措置として、(日本政府は)他の協定の破棄など感情的な対応に言及してはならない〉(同月31日付中央日報)

 と、堪忍袋の緒が切れた日本の「仕返し」を恐れるかの如き記事があれば、

〈日本は韓国からの過去の歴史に関する要求に疲れ切っている〉

〈私たちが何を言っても、離婚届に判子は押さないだろうという安易な考え方は国際政治では通じない〉(いずれも11月2日付毎日経済新聞)

 と、日韓の「離婚」を危惧する報道まで存在する。

釜山大学教授も警告

 韓国・釜山大学法学専門大学院の朱普烈(チュジンヨル)教授はこう警告する。

韓国政府が国際司法裁判に応じない場合、韓国側が一方的に日韓請求権協定を破棄したことになります。同協定は日韓基本条約の付属書で、このふたつはセット。つまり協定の破棄は、韓国政府が条約そのものを破棄すると宣言するに等しいと言えます。そうなると、日本が深刻な出方をしてくる可能性がある。一方、韓国にも急進派がいる。両国の感情が悪化すれば、国交断絶もあり得ます」

 さらに韓国メディアの報道の中には、

〈韓国政府が対北朝鮮制裁緩和の問題を巡って、米国との意見の違いを示すなか、日本との関係まで悪化すると、北東アジアで孤立するかもしれない〉(10月30日付ソウル経済新聞)

〈長期的に見ると、韓米関係と国際社会における韓国外交もかなりダメージを受ける可能性があるとの懸念の声が上がっている。日韓関係の悪化により、韓米日の協力に支障をきたし、国際社会でも国家間の合意が司法判断に基づいて覆されると懸念され、韓国を避ける現象が起きかねないという指摘だ〉(同月30日付文化日報)

 と、国際的孤立を真剣に心配する論調も見受けられるのである。自業自得にして自縄自縛。

 こうして日本に「悪さ」を仕掛け、結果、国際的には「鬼っ子」になりかけている隣国・韓国。紅葉の季節を迎える折、インネンをつけては日本を祟(たた)る「悪鬼真っ盛り」は御免こうむりたい限りだが……。

「週刊新潮」2018年11月15日号 掲載