ロシア爆発事故、放射能漏れ疑惑 情報制限で高まる不安
- 2019/8/22 20:42
- 日本経済新聞 電子版
【モスクワ=石川陽平、ブリュッセル=竹内康雄】ロシア北西部で8日に起きた新型ミサイル実験中の爆発事故が波紋を広げている。周辺地域で一時、放射線量が急速に高まり、ユーラシア大陸の広い範囲に放射性微粒子が飛散した懸念が消えない。プーチン大統領は「すべては正常だ」と説明するが、詳細な情報を隠しているとの疑惑は収まらず、近隣地域や欧米メディアなどで不安視する声が相次いでいる。
アルハンゲリスク州セベロドビンスク沖合の海軍の海上実験施設で発生した事故では、国営原子力企業ロスアトムの従業員5人が死亡し、近隣地域の放射線量が直後に最大で通常の16倍に上昇した。
同社幹部が12日に「新型兵器」の実験中だったと認めたのに続き、プーチン氏も21日に訪問先のヘルシンキでの記者会見で「有望な兵器システム開発中」の事故だったと述べた。兵器の詳細は明らかにしなかったが、原子力推進式の巡航ミサイルや超音速ミサイルとの見方が出ている。
ノルウェーの原子力安全当局は事故後の9~12日に同国北部のロシア国境近くで微量の放射性ヨウ素を検出した。同当局は「現時点ではロシア・アルハンゲリスク州の事故と関連があるかは結論づけられない」とする一方、調査の頻度を高めるなどして分析を続ける。
爆発事故では、放射能を帯びた破片が海に飛び散り、放射性微粒子が空中に広く飛散した可能性が出ている。事故後には放射性廃棄物を回収、保管する専門の船が現場海域で確認された。現場海域は9月10日まで閉鎖され、ロシア国防省は海岸には近づかないよう住民に注意を呼びかけた。
16日付のロシア英字紙モスクワ・タイムズによると、事故発生から約4時間半後に3人の負傷者がアルハンゲリスク市の公立病院に運び込まれた。政府は医師らに放射能汚染の可能性について何も知らせなかった。事故翌日の9日に連邦保安局の職員が病院に来て、情報を漏らさないとの同意文書に署名するよう関係者に求めたという。
さらに同紙は、治療した医師がモスクワで検査を受けたところ、体の細胞から核分裂で生まれる放射性物質セシウム137が検出されたとも報じた。地元通信社セウェルニエ・ノーボスチは、負傷者を運んだ救急車が廃棄処分となり、治療室が閉鎖されたと伝えた。13日には一時、近隣地域に退避指示の情報も流れるなど、住民の間では不安が収まらない。
情報公開を制限しているのは軍事機密のためとみられるが、隠蔽の疑念は拭えない。
事故から2日後の10日には、モスクワ近郊のドゥブナなどロシア国内2カ所の放射線観測地点から包括的核実験禁止条約機構(CTBTO)へのデータ通信が途絶えた。13日には、さらに2カ所の観測地点からの通信も止まった。この観測はCTBTOにもとづく監視制度だが、通信が途絶えた理由は不明だ。20日時点では一部の観測地点からのデータ通信は再開している。
CTBTOのゼルボ事務局長は自身のツイッターで、仮に事件現場から放射性微粒子が気流に乗って飛散したと想定した場合の微粒子の広がりを分析した地図を公開した。時間の経過とともに、ユーラシア大陸の中部を中心に広範囲に広がり、アラビア海に達する可能性を指摘した。
トランプ米大統領は事故が起きた後の12日、「ロシアの『スカイフォール』は設備周辺の大気について人々を不安にさせた。良くないことだ」とツイッターに投稿した。スカイフォールとは、ロシアが開発中の原子力推進式の巡航ミサイルで、北大西洋条約機構(NATO)がそう呼んでいる。
仏紙ルモンドは「何をしているときに起きた事故なのか」「汚染は本当にないのか」など、説明に口をつぐむロシアの姿勢は透明性を欠くと指摘した。1986年に旧ソ連ウクライナのチェルノブイリ原子力発電所で起きた悲惨な事故は長い間隠蔽された。モスクワ・タイムズは「政府の対応はその時と似ている」と指摘した。
韓国よ、ロシアに放射能の報告をさせるべきだ。
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