ザイルと焚火と焼酎と

ザイルを使う登山にちょっぴり憧れ、山中に泊まると焚火を囲み、下山後は焼酎でほのかに酩酊。いい加減なのんびり登山の日記です

赤岳天狗尾根を登る予定でしたが、増水で渡渉困難となり、ツルネ東稜に変更して登りました

2022年07月30日 | ハードハイク/八ヶ岳

YYDでも2009年10月に実行されている、赤岳天狗尾根。 僕自身も2006年11月にS子ともう一人年配の女性H場さんとの3人で登っています。 その時は出合小屋と編笠山の青年小屋天場で2泊3日でした。 そして、僕は天狗尾根にもう一回、冬期に登ってます。 てっきり、2006年以降に行なったものとばかり思っていましたが、記録を確認すると、2004年1月でした。 赤岳天狗尾根を登ってから、阿弥陀岳北稜を登攀していますね。 こののち、ハイレベルなアルパインクライマーになっていったH原君とY根君との3人パーティーでした。天狗尾根の尾根上で1泊し、さらに行者小屋前でテン泊、そのまま帰るのももったいないので、阿弥陀岳北稜を登ってから下山したんでしょうね。

YYDの若いメンバーにも様々な岩稜を経験してもらいたいと思っています。YYDは沢登り中心の会です(あまり沢のレベルは高くありませんが)。でも、沢登りのレベルは熱意さえあれば徐々に上がっていくと思います。ただ、岩稜に関しては経験してみないとその面白さは分かりません。よく知らないと、行ってみようと思うこと自体があまりないと思います。ですから、あえて岩稜を多く計画してみたいと思っているのです。

 

2022年7月16日(土) 美し森~出合小屋

▲12:59。土曜日は天気が少し心配でしたが、この日は出合小屋までですから、途中で雨が降って来ても問題はありません。車を停めた駐車場からいよいよ出発。

 

▲14:01。林道を進んでから、地獄谷の河原に降りました。広い河原を右に左に、時々付けられている目印を確認しながら進みます。

 

▲14:04。堰堤がたくさん出て来ます。全部で8つだか9つだか出て来ました。

 

▲14:15。こんな梯子が架けられている堰堤も。

 

▲14:47。K野さんはカエル大好き人間!

 

▲15:06。最後はに降られて、雨具も着ました。しばらくして止むと、出合小屋が見えて来ました。

 

▲15:06。出合小屋の前にニホンカモシカ!

 

▲16:04。到着後、本格的に降り始め、夜中まで猛烈に降り続きました。出合小屋での夜の団欒の時はとても楽しいものでした。夕食は各自持ち寄り。 K野さんのサラダ(右)は女子力あり過ぎと、大好評でした。 S上さんのタイ料理ガパオ(左)も美味しかったですね。生卵まで乗っかっていて。

 

▲16:04。僕はお決まりのネパール風チキンカリー。各自持ちよりシステムの欠陥は、ついつい多めに持って来てしまうこと。ですから、各メンバーには少なめに持って来ることを徹底しました。結局、僕が一番たくさん持って来てしまいましたし、アルコールも一番飲んでしまいました。反省⤵

 

▲18:49。おかずとさっぱりとしたサラダが揃ったので、哲さんは飲み物の豚汁を用意してくれました。美味は当然として、僕はまったく気付かなかったのですが、S上さんによると、料理上手な人だからこそ出来る細かな手の込みようが見られたんだそうです。普段も料理をする哲さんのようですね。最後に申し込んできたA宮さんは気を利かしてデザート。心地よい甘酸っぱさのブドウを持って来てくれました。(写真がなくてご免なさい)

 

▲18:51。小屋は僕たちだけの独占でした。こたつ用のテーブルがあったので、それを出しての山小屋とは思えない居心地の良さですね。翌朝が早いですから、「早く寝ようね」と言っていた本人(僕)が「そろそろ寝ようか」となった時に「まだみんなで話そうよ」と言って駄々をこねたとか。僕は酔っていて記憶にありませんが。

 

2022年7月17日(日) 出合小屋~ツルネ東稜~真教寺尾根

2日目の朝は空が白みかけたら起床しようということになっていました。3時半くらいにはS上さんが最初に起き始めたようですね。僕も起きてましたけど。準備出来次第、出発します。朝食は行動食扱いで、出発後に各自で食べることにしています。

▲4:59。出発直前の時間です。トタンで囲われたこの建物はトイレです。入り口には分厚い毛布が扉の代わりに下がっています。

 

▲5:00。トイレの中はこんな感じ。以前、この小屋に泊まった際の印象では、とても酷いトイレだったとの印象でした。でも、今回は素敵(誉めすぎ?)なトイレだなと、思いましたね。この小屋は地元の山岳会が管理してくださっているのですが、ここまでしっかりとトイレは作れませんよね。

 

▲5:08。沢の水は早く平水近くに戻ると予想していましたが、夜明け前にもまだ沢音は轟いていました。5時にスタートし、沢の渡渉をすることになると、「これは大変だ」と実感できます。何回か渡渉を繰り返し、赤岳沢出合に到着。ここで、天狗尾根を実行するか否かを判断しなければなりません。

 

▲5:08。この場所での渡渉も大変そうだったのですが、赤岳沢自体(写真の右から流れ落ちている沢です)の水量も相当のものでした。僕のいい加減な記憶では、ここまでは沢岸の踏み跡を辿り、時々渡渉するパターンでしたけれど、赤岳沢は沢の左側を進んでいたように記憶しています。沢の流れの左端を登って行くのです。これだけの増水ですから、水に濡れずに進むのは無理そうです。他にも理由は幾つかありますが、天狗尾根は断念し、ツルネ東稜を登ることに決定。地獄谷本谷を進んで行きます。

 

▲5:30。ニホンカモシカです。途中で2回ほど出遭いました。

 

▲5:52。苦労の渡渉を繰り返して、右岸から流入する権現沢に出合います。たしか、ここの渡渉だったかどうかは分かりませんが(僕の記憶は超あやふやです)、一番大変だった渡渉がありました。激しい流れを挟んで、岩から岩へ大ジャンプしなければなりません。僕は覚悟を決めてジャンプしましたが、なかなかの緊張感です。女性二人には、まず重いザックをこちら岸に手渡してもらうことにしました。その時です。 別の場所から渡渉していたK野さんが、岩と岩の間の急流に入って、サポートをしてくれました。膝から下は急流の中です。女性2人も安心してジャンプできます。 K野さんが手を取ってくれていますから。まさにリーダーの鑑ですね! 哲さんも「思いっ切り、強く手を握っちゃったよ」と言ってました。

 

▲5:56。ここが地獄谷本谷(右俣)と上ノ権現沢(左俣)が出合っている二俣です。ここの中間尾根がツルネ東稜なんです。

 

▲5:58。この場所にツルネ東稜の標識がありました。別の標識もあって、本谷の対岸からも天狗尾根に登れるみたいです。地形図で確認できる範囲では危険な感じはありません。踏み跡があるのなら、大丈夫そうですが、一度「ツルネ東稜を登る」と決めた後での変更は何となく嫌だったんです。恐らくK野さんは行きたかったことと思いますね。ご免なさいね。

 

▲6:06。ツルネ東稜自体は踏み跡もしっかりしているルートです。今回のように増水していない時なら、比較的気楽に楽しめるコースだと思いますね。

 

▲6:23。途中にこんな標識までありました。これでは一般登山道ですね。でも、そんなに甘くはありませんけどね。

 

ただ、ここから僕自身に問題が発生しました。山体力復活途上の僕ですが、小同心クラックも無事にこなせ、今回の山行も大丈夫なはずと自分では思っていました。でも、大問題が発生! 疲労感が半端ありません。ツルネ東稜取り付きまでも、その感覚はあったのですが、ツルネ東稜の急登になった途端、明確に自覚できました。息は荒く、足は重く、乳酸が溜まっているようで、無理するとすぐにすぐに脹脛が攣りそうになります。皆から遅れる僕の様子は皆の知るところとなり、僕も「ちょっと調子が出ない」と言います。ハーネス等を哲さんが持ってくれ、20m補助ロープはS上さんが持ってくれました。それからはゆっくりゆっくりとパーティーは進みました。S上さんは僕の後ろに付いて、僕の様子を見ていてくれます。僕のすぐ前を歩く哲さんは僕の数歩前をキープしながら歩いてくれます。呼吸法も教えてくれました。とにかく、たくさん酸素を吸いたい気分なんです。そのために一生懸命、息をたくさん吐きました。(哲さんに教えてもらったんです)

 

▲7:00。急登が続きます。朝の陽射しが差し込み始め。心地よい雰囲気が高まって来ました。

 

▲7:12。ツルネ東稜は森に覆われた尾根です。森の木間(このま)から右隣りの天狗尾根が覗ける場所がありました。写真で一番高く見える岩峰が大天狗です。

 

▲7:13。天狗尾根の下方(右下)にカニのはさみと呼ばれている岩峰が見えました。

 

▲7:48。大天狗は天辺が切られてしまっていますね。大天狗のすぐ左隣りの細く尖った岩峰が小天狗です。右下にカニのはさみも見えてますね。薄っすらとガスも棚引いています。天狗尾根の迫力あふれる岩峰の姿を眺めて、A宮さんはますます天狗尾根への想いを強めたようです。

 

▲8:24。ゴゼンタチバナ。これは多年草なんですが、樹木のハナミズキやヤマボウシなどと近縁の種類なんですね。そう言われれば、花の感じが似ています。白い花びらのようなものは総苞なんだそうです。

 

▲8:28。ツルネ山頂2550mでパチリ! 左からA宮さん、哲さん、S上さん、K野さん。僕のペースが遅かったのでこの時刻ですが、写真の4人だけなら8時前には余裕で到着していたはずですね。

 

▲8:29。一般登山道にもこのような標識が。出合小屋と書いておくよりも、ツルネ山頂との標識がある方がいいと思うのですが。

 

▲8:31。山頂付近にはコマクサがたくさん咲いていました。綺麗ですね。女王の風格です。

 

▲8:53。ヨツバシオガマだと思います。

 

▲8:56。キレット小屋で休憩しました。天狗尾根がよく見えます。

 

▲9:35。赤岳目指してアップダウンが続きます。青空が見えることもありますが、霧雨が当たることもあったりします。

 

▲9:39。コマクサが群生する場所が再び出て来ました。実に愛らしく美しい花ですね。

 

▲9:43。チシマギキョウかなと思います。

 

▲9:49。青空バックにガレ場の急登を登って行きます。

 

▲10:16。緊張するクサリ場も出て来ます。

 

▲10:16。ミヤマキンバイ? それともシナノキンバイ? 葉の形がよく見えません。

 

▲10:18。ウスユキソウでしょうか? いわゆるエーデルワイスですね。

 

▲10:22。ハクサンシャクナゲだと思います。

 

▲10:23。2つの尾根がくっきりと見えています。右がこの日下りる真教寺尾根、左は県界尾根です。

 

▲10:47。真教寺尾根の分岐に到着すると、僕は皆に言いました。「僕は赤岳へは行かずに、先に真教寺尾根を降りるね」と。僕のせいで時間がかかっていますから、少しでも下山時刻を早めたいと思ったのです。真教寺尾根を数m下って、僕を見てくれている4人を撮りました。4人はこれから赤岳へ向かいます。A宮さんは「小屋でコ-ラを買って飲む」と、嬉しそうです。

 

▲10:59。これはミヤマキンバイだと思います。

 

▲11:14。このようなクサリ場が何ヶ所も出て来ました。出来るだけ、鎖には頼らずにクライムダウンしようと思うのですが、頼り切る場面も多く出て来ました。

 

▲11:18。右(南西)側には天狗尾根が見えています。大天狗と小天狗の岩峰。

 

▲11:24。これが最後くらいのクサリ場かな?

 

この後すぐに、休憩し易そうな場所がありましたから、30分間も休みました。水分補給をし、行動食を食べました。小さな羊羹も1個食べました。少しずつ体調も良くなってきている感じです。下りですから、息もそれほど荒くはなりませんしね。

休んだ場所に白っぽい小石を使って12じと書き残しておきました。僕がここを12時に通過したことが分かるようにです。

 

▲12:16。休憩を終え、歩き始めるとすぐに、上から哲さんが僕を呼ぶ声が聞こえました。30分も休憩していたのですから、追い付かれて当然ですね。逆に言えば、一人で降りていたおかげで30分間の休憩が取れたということです。白い小石の12じには誰も気付いてくれなかったようです。絶対気付くはずと思ったんだけどな。

 

頂上小屋にはコーラは売っていなかったようで、A宮さんは残念でした。合流してからは、僕が先頭で歩きました。下りですし、僕もまずまずのペースで歩けるようになりましたし、何より一番遅い僕のペースがこのパーティーのペースですから。

 

▲13:24。牛首山2280.1mだったと思います。

 

▲14:16。ハナビラタケだと思います。20cm近くありました。奥多摩で2回ほどもっと大きく成長したのを採って食べたことがあります。癖がなくて美味しいキノコでした。これも採って帰ろうかなとも思ったのですが、止めておきました。

 

▲14:27。清里スキー場の最上部の横を通りました。

 

▲15:01。羽衣池です。

 

▲15:22。途中、工事中の登山道があって、少しだけ遠回りしました。

 

▲15:30。到着です。

 

帰路、甲斐大泉温泉パノラマの湯へ寄りました。汗を流して、さっぱりとします。食事も畳の広間で食べたのですが、味付けが駄目でしたね。カツ煮の卵とじ丼を頼んだのですが、塩味がまったく効いていませんでした。塩味だけではないと思いますが。哲さん曰く「〇〇さん(僕)の味覚がちゃんとしてることが分かった」とのこと。

A宮さんとはここでお別れです。彼女は山梨県在住ですから、ここからは近くて、自分の車で来ているのです。他のメンバーは哲さんの車に乗せてもらっています。彼は埼玉県ですから、H島駅で集合し、解散もそこです。僕にとっては有難い限りです。本当はH島駅辺りで、S上さんとK野さんとで再度の打ち上げ(アルコール込み)をしたかったのですが、それなりに遅い時刻になりましたから、大人しく解散となった次第。😢

 

今回の山行は僕にとってはショックでもあり、反省点も多い山行でした。

そうだかどうだかは分かりませんが、僕自身の考えでは軽い高度障害を起こしていたのではと思います。前の晩、僕にしてはアルコール摂取が多かったこと、ほとんど眠れなかったこと、小同心クラック以降の疲労が抜けずに蓄積されていたこと、などがその原因として考えられます。しっかりと高度順化できていなかった気がします。以前なら、この程度のこと、もっと大変なことがあっても、山行に影響が出るようなことはありませんでした。でも、今回は影響が出ました。今後の山行では、このような事態が起こる可能性も考慮した上で、山行を実行しなければならないと思います。前の晩のアルコールは少なめにする、よく眠れるように温かくする(今回はシュラフカバーだけでしたから)、山行の疲労を取るための努力をする、等でしょうか。長くそれなりの山行を続けるためには、自らの年齢とも真正面から向き合わないといけないと強く思わされました。

思わぬ迷惑をかけてしまった、今回の山行でしたけれど、高齢者が通過しなければならない必然の道だと思いました。「いつまでも昔の体力や体調のままではないんだぞ」と痛感させられました。僕にとっては人生で初めての体験でしたから。前向きにとらえて、このようなことも克服する努力をしながら、自分自身をレベルアップし続けたいと思います。若いころはことさらの努力がなくても、山体力はアップしましたし、登攀能力も向上しました。でも、高齢者になると努力しないと低下し続けるんですね。山人生で初めての計画的努力をこれからしたいと思います。そんな努力を前向きに楽しめればいいな、と思っています。

最後に、今回も長い距離を歩きました。2日目の行動時間は休憩込みで10時間30分です。ツルネ山頂からは一般登山道ですから、標準コースタイムが分かります。ツルネからゴールの駐車場まではおよそ6時間10分。そこを6時間58分かかりました。休憩時間を引くと、途中で30分も休んだりもしましたから、6時間9分です。ほぼコースタイムと同じで歩けていますね。本当は休憩込みでコースタイムと同じ時間で歩きたいのですが。


石津窪をK野さんのリードで遡行しました。僕は自分のリード能力を上げないと、と痛感しています

2022年07月20日 | 沢登り/多摩川秋川盆堀川水系

『東京起点 沢登りルート120』では石津窪は2級で中級の沢とされています。 K野さんは哲さんとは天覧山の岩トレで面識があり、彼なら大丈夫だと判断できたのですが、 T内さんのことは知りませんでしたから、僕に相談が来ました。 僕は古い人間で、石津窪は1級で初級の沢だとの認識しかありません。 全ての滝が高巻けて、危険な箇所もないと思っていたからです(大滝の高巻きだけはその後少しずつ崩れているようで、困難になって来ているようです)。 今回はすべての滝を登攀する予定でしたから、ザイルを張りさえすれば、T内さんも大丈夫なはずです。 で、「いいんじゃないの」と返事。哲さんもT内さんも沢登りを始めたばかりですが、いい刺激になると思います。沢登りにクライミング能力が必須であることを理解してもらえると思います。実力を伸ばしつつあるK野さんにとっても、短いとは言え、わりと登攀的な沢ですから、楽しんでもらえると思いました。

 

2022年7月10日(日) 石津窪~半兵エ沢下降

▲8:55。K野さんがシェアカーを手配してくれて、H島駅8時集合でした。僕にとっては楽な集合時間です。棡葉窪出合そばの駐車スペースからスタートです。

 

▲9:10。この日は天気予報が微妙でしたが、良い方向へ外れました。青空が広がっています。(撮影:K野)

 

▲9:43。新人の哲さんとT内さんに石津窪出合を探してもらいました。石津窪は千ガ(ちが)沢の支流なんですが、その千ガ沢出合の場所を僕が間違って教えてしまいました。石仁田(いしにた)沢出合を千ガ沢出合と間違えてしまいました。その後の、沢と交差する橋の状況が地形図と同じでしたから、確信してしまったんです。でも、本当の千ガ沢出合に到着した時、僕の記憶が蘇って来て、「ああ! ここが本当の千ガ沢出合だ」と気付きました。本当に地図読みがいい加減な僕ですね。(そもそも地図を見ていない)。それから新人の2人は正確に地図読みして石津窪出合を見つけてくれました。写真はその出合に降りて行くところです。

 

▲10:54。末広がりの滝10mと呼ばれている滝のようですね。ネーミングの意図がよく分かりません。2段の滝の上部だと思います。難しくはないのですが、緊張感のある登攀になります。3級程度とはいえ、気分的には4級近い感じですかね。ピンがなかった記憶もあるのですが、今回は中ほどでハーケンがありました。K野さんがリードしています。1本目のプロテクションは岩角で取ったみたいですが、外れてしまいました。残りのザイルをK野さんのザックに入れるシステムを試したようです。やり難かったようですけどね。

 

▲11:37。岩溝を流れ落ちる斜瀑8×10m 。この日の石津窪は全体的にぬめっていて滑り易かったですね。その影響をこの滝が一番受けていたようです。数メートル登ったところで、K野さんはカムをセットしました。ハーケン等が見つからなかったからです。僕が登った際に見ると、セットしたカムのほんの少し上にハーケンがありましたね。この滝も易しい3級ではあるのですが、プロテクションが1ヶ所でしか取れないので緊張します。

 

▲11:49。6mの垂壁 。石津窪では最難の壁です。壁というのも、水流から離れていて乾いているからです。この壁に来て驚いたことがあります。長い残置ロープ、明らかにこれを頼りに登れとばかりの残置です。以前はこんなの無かったのに(昔の写真で確認すると、2016年7月にはすでにありました)。僕たちはこれを使わないことにします。K野さんは僕に「リードします?」と聞きます。自分もリードしたい気持ちをK野さんに伝えてあったからです。でも、僕は遠慮しました。(結果的には遠慮して正解だったのですが)。K野さんは何の問題もなくす~っと登って行きました。続いてSRさん、ちょっと力任せな感じもありましたが、問題なく登りました。哲さんも、少し苦労しましたが完登。T内さんは苦労しましたね。でも、頑張りました。最後は僕です。「ムーブを確かめながら登るからね」と上に伝え、登り始めました。何度か試しながらゆっくり登るという意味です。ところが、核心部に来ると、なかなか難しいことに気付きます。何回もザイルにぶら下がりました。K野さんが登った際に「どれくらい?」と聞くと、「4級くらい」との返事でした。でも、4級どころではありません。4級+とか、それ以上にも感じます。昔は簡単にリードしていた滝を登れない現実! 登れない理由は2つあると思います。1つは、核心部のスタンスが欠けてグレードが上がってしまった。2つ目は、僕のクライミングが下手になった。K野さんが簡単に登っていますから、恐らく理由は2でしょうね。岩トレではリード練習もたっぷりしようと思いました。自分が下手だとの認識を持って、上手くなるよう努力しようと思いました。それが今回の石津窪での大きな収穫です。

 

▲12:05。30cmほどの長さのミミズ!

 

▲12:24。たまには(と言っても、ここだけだったかな)巻きます。

 

▲12:46。大滝25m 。この日はシャワークライミングになるものとばかり思っていました。でも、多いはずの水量が少ない! 残念というか、ホッとしたというか・・・・ 大滝を眺めながら沢中では初めての休憩をし、その迫力を満喫します。

 

▲12:49。K野さんはとっても慎重な登りでした。彼にしては時間をかけて登っていました。岩がぬめっていて滑りやすいというのもありますが、ゲレンデのように十分な数のプロテクションが取れないからです。25mという高さは日和田の男岩よりもずっと高いのです。3級+というグレードですが、その滑り易さと緊張感を加味すると4級はあると思います。写真は1本目のハーケンを見つけて、プロテクションをセットしているところだと思います。

 

▲12:51。K野さんの慎重なクライミングが続きます。

 

▲12:53。K野さんの頭上に水の流れが見えますが、その水流の右壁を登るルートもあるにはあります。僕もフォロウしたことはありますが、5級のルートです。ピンも1つくらいしかありません。ですから、この写真からは水流沿いに登ります。

 

▲12:59。K野さんが最上部を登攀中です。水量が多いと、このあたりは全身ずぶ濡れのシャワークライミングになります。

 

▲13:20。K野さんが上で確保して、哲さんがフォロウしています。K野さんが伸ばしてくれたザイルのお陰で、SRさん、哲さん、T内さん、僕と登って行きました。皆、25mもの大滝を登り切った充実感に感動している様子です。

 

▲13:47。大滝が終わると、小滝が少し現われるだけで、緊張感は緩みます。僕ものんびりと歩いています。(撮影:K野)

 

▲14:18。SRさんがT内さんのために補助ロープを出してくれています。この日、数ヶ所の小滝でSRさんはこの補助ロープを出しました。僕もお世話になりました。

 

▲14:24。源流部で、この写真のケルンが出て来ると、すぐ左上に見えている尾根に上がります。踏み跡もしっかりと付いていました。

 

▲14:28。この日は上がった尾根からすぐに反対側の沢へ降りることにしました。僕も初めてです。千ガ沢支流の半兵エ沢という名前のようですね。当然、哲さんもT内さんも沢の下降は初めてです。

 

▲14:48。半兵エ沢は小さな沢ですから、なかなか水は出て来ませんでした。でも、下流部ではやっと沢らしくなって来ましたね。こんな滝も出て来ましたが、左岸の斜面を歩き降りました。

 

▲14:54。半兵エ沢の最下部ですね。

 

▲14:57。半兵エ沢を下りきって、千ガ沢本流に出たところですね。

 

▲15:08。この前の週にも懸垂下降した15mのF1です。僕が先頭で下降しました。ルベルソ5を使っての正式な懸垂下降です。

 

▲15:25。懸垂下降するT内さん。彼女は懸垂下降は初めての体験でした。上でK野さんに教わって、下では念のために僕がザイルを持っています。でも、身体の倒し方もちょうど良く、上手な懸垂下降でした。

 

▲15:50。千ガ沢を下って、石津窪出合に戻って来ました。ここで記念撮影。左からK野さん、T内さん、SRさん、哲さん。

 

▲15:51。哲さんが、僕に代わって撮ってくれました。

 

▲16:17。一日、天気も持ちました。朝歩いた林道を再び車まで歩きます。心地よい充実感に満たされたひと時ですね。

 

僕は前の週に引き続きまたしても沢中で転倒してしまいました。前の週ほどではなかったですが、右足の太股をぶつけてしまいました。数日間はちょっと痛かったですね。若いころだって転倒することはありましたけれど、齢を取ると見事な転び方をしますね。反射神経が衰えているからだと思います。これまで以上に慎重に歩きたいと思いました。

 

シェアカーをH島で返却したので、H島の僕の馴染みの居酒屋さんで反省会。またしても遅すぎる時間まで飲んでしまいました。反省! 誉め上手な哲さんの言葉に喜ぶだけではなくて、その言葉に恥ずかしくないレベルを維持するために一層の努力を続けなければと思いました。現状は岩も下手になって来ていて、体力も弱くなっていますから、両方とも初心に立ち返って努力しなければと感じています。


ここはウルシゲ谷沢? 千ガ沢下降は期待以上の楽しさ

2022年07月11日 | 沢登り/多摩川秋川盆堀川水系

前の週の小同心クラックの疲労がまだ残っている僕は、都合のいい計画を立てました。 短い沢3本を登下降する計画です。 途中どこでも中断できるからです。 その僕の疲労に関しては、急斜面での登りで脹脛にすぐに乳酸が蓄積されるような状態でしたね。 小同心クラックは数年ぶりのテント山行でしたし、15kgのザックもそれくらいぶりですから。

それで、どこを計画したかというと、南秋川小坂志川の支流ウルシゲ谷沢左俣~市道山~秋川盆堀川の支流千ガ(ちが)沢下降~棡葉窪でした。最後の棡葉窪は二俣まで遡行して、仕事道から下山するつもりです。それぞれが本当に短い沢ですし、1本目でも2本目でも気楽に終了できます。市道山の標高が795.1mですから、沢の小ささも想像できると思います。

 

2022年7月2日(土) ウルシゲ谷沢~市道山~千ガ沢下降

▲9:06。左のS上さんとは沢に行くことが決まっていました。そこへ今年大いに発展途上のN村さん(右)とベテランのK田さんも参加することに。楽しそうな面々です。武蔵五日市駅からタクシーで小坂志林道に少しだけ入ってもらいました。

 

▲9:11。小坂志林道をしばらく進むと、左に分かれる林道があります。ウルシゲ谷沢沿いの林道です。何となく林道の様子が以前とは違います。写真のように木材で縁取りしてあったり、セメントで舗装していたり。とは言え、おぼろげに林道終点まで行ってから入渓する、そんな記憶がありましたから、どんどん進みました。

 

▲9:58。林道が沢筋から離れて行ってしまうので、そこにあった沢へ入渓することにしました。水は流れていませんし、みすぼらしい姿の沢です。もう少し進むと、沢も開け、伏流していた水も出て来るはず、そんな希望的観測を抱きながらの入渓です。

 

▲10:01。水の流れも出て来て、1mもない小滝もありましたが、相変わらず貧相な沢です。ボサも多く、快適ではありません。この頃には、「間違えたな」と思い始めていました。ただ、どのように間違えたのかは分かっていません。「ウルシゲ谷沢とは別の沢に入ったのかも」とも考えたりしていました。ただ、ここから戻って、改めて正しいウルシゲ谷沢左俣を探すのも面倒なので、とりあえず稜線までは出ようと考えていました。

 

▲10:22。稜線に出る前に林道が出て来ました。この頃の僕は写真の左に見えている尾根の向こう側が、ひょっとしたらウルシゲ谷沢かもと思ったりしていて、この林道が尾根を巻いて向こう側に行ってるようでしたから、林道をこちらに進むことにしたんです。いい加減な僕は地形図も見ずにそんな判断をしていました。標高の低い、狭い山域ですから、稜線に出れば位置は分かるし問題もないと考えていたからです。

 

▲10:37。N村さんが途中スマホで現在位置を確認してくれました。林道から離れ、尾根を登って行きました。写真がその途中です。ここを登ると744m標高点に着くことが分かったんです。

 

▲白い印の場所でN村さんが現在位置の確認をしてくれました。赤いが744m標高点です。その結果、僕たちの辿って来たコースが漠然と想像できるようになりました。帰宅後にまとめたのがこの地図です。ウルシゲ谷沢には入ったものの、林道に惑わされて、赤い印で南向きの支沢へ入ってしまったようです。林道がその支沢沿いに延びていたからです。本当は赤い印からは北東方向へ進み、市道山へ突き上げるはずだったんです。

 

▲10:58。744m標高点からは南の陣馬山から繋がっている登山道を歩きます。

 

▲11:50。市道山に到着しました。

 

▲12:16。市道山山頂での休憩後、北東方向へ降りて行きました。N村さんは沢の下降は初めてとのこと。

 

▲12:28。どんどん下っていきます。

 

▲12:37。沢地形まで降りて来ています。まだ水は流れていないのかな?

 

▲12:49。です。足を浸けるとひんやりして気持ちいいですね。

 

▲13:27。沢らしくなって来ました。

 

▲13:34。2mの小滝に頭を突っ込むN村さん。

 

▲13:36。写真では分かりにくいですが、F2で4段25mの滝です。上から見下ろしています。狭い岩の隙間を落下しています。この日のザイル45mでは長さが足りません。途中に太い木も生えていませんし、懸垂下降用にピンが打ってあるはずもありません。懸垂できると楽しそうですが、無理だと判断しました。

 

▲13:38。この滝には左岸に立派な巻き道が付いています。その道を使うことにしました。

 

▲13:42。巻き終わって沢床へ降りて来ました。せっかくなので、F2を見に行くことにします。

 

▲13:45。これが4段25mのF2です。どれが4つの滝かはよく分かりませんが、下の2段しか見えなかったと思います。岩にはイワタバコがたくさん生えていましたけれど、花はまだのようでした。

 

▲14:09。滑り台。

 

▲14:22。続いてF1です。高さは15m。左の太い木にザイルを回して懸垂下降します。僕が最初に降りました。懸垂の途中で、パチリ。

 

▲14:24。F1の全景です。右端が登れそうです。何年か前、沢歩きでS子とここまで来たことがあります。その時はザイルを出して、右の木の生えた斜面を高巻きました。

 

▲14:33。最後にN村さんが降りて来ました。

 

▲14:50。千ガ沢は小さな沢ですけれど、水量も少しは増えて来ました。この後くらいだったか、僕が転倒してしまいました。左足が何かに引っ掛かって、身体の右側から倒れ込んだんです。回転して、仰向けになりましたが、そのまま回転し続けて俯せに体を戻しました。体の右側の何ヶ所かを強く打ち付けて、痛みます。声にまでは出しませんでしたが、唸るような感じで痛みに耐えていました。尖った岩にぶつけたので痛かったんだと思います。しばらく座っていましたが、痛いだけでどこも負傷はしていないようでした。右手の掌がいつまでも痛みますが、打撲の痛みだけのようです。

 

▲15:14。他のメンバーも心配してくれて、「林道に上がろう」と言ってくれます。だいぶ前から右岸に林道が並行しているのです。林道に上がれそうな斜面があったので上がることにしました。S上さんがザイルを首に掛けて、持ってくれていますね。そうそう、ザイルは最初からずっとN村さんが持ってくれていたんです。感謝。

 

▲16:55。着替えを持っている人は着替えを済ませ、沢戸橋バス停に向かっています。3本目に予定していた棡葉窪はビールの誘惑にかき消されてしまったようです。

 

この後、沢戸橋バス停では10分待ちでバスが来ました。いつもの『音羽鮨』へ行き、反省会との名前の打ち上げ。山の話、山岳会の話で盛り上がりました。


9年ぶりの岩登り本番は、10年ぶりの小同心クラック。これからもまだ登攀できるでしょうか?

2022年07月05日 | 岩登り/八ヶ岳

ザイルパートナーだったS子とは谷川岳一ノ倉沢、北岳バットレス、穂高岳滝谷、剱岳八ッ峰やチンネなどのルートを登攀しました。S子が愛鷹山の積雪期縦走で脛骨骨折し、2度にわたる手術とトータル9ヶ月間の入院の末、S子の岩登り本番は不可能になりました。

僕は人間の繋がりを大切に手繰り寄せながら、若くて素晴らしい山仲間を神様からの贈り物のように与えられ続けました。そんな若者たちの中で、H原君、Y根君、S﨑君、H田君、O橋君たちと岩登り本番のザイルを組みました。でも、若者たちの人生は変化が激しいものです。結婚をして危険な登山からは遠ざかり、仕事が超多忙で時間すら無くなり、転勤で遠くに行ってしまいます。

僕の岩登り本番は9年前のO橋君との穂高岳滝谷ドーム中央稜が最後になってしまいました。

北アルプス北穂高岳滝谷ドーム中央稜を登攀しました

ところがここに来て、YYDの中にもクライミングレベルの向上が見られるようになりました。なかでもK野さんは僕なんかを超えて行っています。K野さんに岩登りの楽しさ感動を味わってもらいたいと思い、今回の山行を計画したのです。

もちろん僕自身のためでもあります。前の週の日陰名栗沢で、ある程度の長い距離を歩く自信も少しは持つことが出来ました。高齢者の僕にとっては大いなるチャレンジになりますけれど、そんなチャレンジングな精神も復活させたいと思っています。

 

2022年6月25日(土) 美濃戸~赤岳鉱泉

▲11:55。S﨑君が車を出してくれました。美濃戸からスタートです。前方には阿弥陀岳が聳えていました。(撮影:K野)

 

▲12:38。堰堤広場です。山小屋の車はここまで入ります。車で運んだ物資を小屋に置いておくんだと思います。そして、ここからは人力で運ぶのでしょう。

 

▲13:19。柳川北沢沿いの登山道を進みます。何度も橋を渡りました。

 

▲14:00。赤岳鉱泉に到着しました。写真上部中央に見える岩峰が大同心です。その右下に小同心も見えています。大同心の右、ほぼ同じ高さに見えているのが横岳。

 

▲15:38。テントはS﨑君が持って来てくれました。ここの天場のテント代は一人2000円、高いですね。

 

▲16:58。風もほとんど収まっていたので、小屋の外のテーブルで夕食を食べることにしました。

 

▲17:29。これはS﨑君の作って来たネパール風チキンカリー。今回は主食は各自持ち、おかずは一品を3人分作って来ることにしました。

 

▲17:29。僕はスペシャルダルスープ。この量の5倍ほど作って、それを冷凍して持って来ました。手前味噌ですが、なかなかの出来だったと思います。後ろの「信州」はここの山小屋で購入した赤ワインです。僕もS﨑君もネパール料理だったので赤ワインが最適です。持って来るのは重いので、山小屋で買うことにしました。

 

それ以外のおかずは皆、K野さんが用意してくれたものでした。彼は月曜日が納期の仕事があって、前日まで仕事に追いまくられていました。自分で料理する時間は取れなかったのです。

 

何時に寝たのか忘れました。8時過ぎくらいだったでしょうか。僕は夜中に一度トイレに行きました。それからはあまり寝付けませんでしたね。暖かい夜でした。

 

2022年6月26日(日) 小同心クラック

▲5:06。テントの外が白みかけて来ると、自然に目が覚めました。周りのテントの人たちも起き始めて、声がするようになったからかもしれません。朝食は作らずに各自持ちの行動食扱いです。早い出発が必要な際は、僕はだいたいこの方針です。

 

3人なのでダブルザイルが2本必要です。僕とS﨑君が持って来ました。僕のザイルはK野さんに持ってもらうことにしました。僕はいまいち自分自身の体力に確信を持てません。疲労等で迷惑をかけてもいけませんから、僕のザイルはK野さんに持ってもらいました。そんな心配しなくても済むように、山体力を復活させたいものです。

 

▲5:17。赤岳鉱泉を硫黄岳方向へ進むと、最初に出会う沢には大同心沢との標識があります。通せんぼをしているロープをくぐり、登山道と言えるほどの立派な踏み跡を辿ります。この写真は沢沿いから離れて、右岸の大同心稜に乗る箇所だと思います。

 

▲5:32。針葉樹林(かな?)の急登を登り続けます。

 

▲5:53。小さくて黄色のスミレがたくさん咲いていました。スミレの名前は難しくて同定できません。

 

▲6:04。大同心と相対するようになりました。6月下旬なのに、桜の花が満開です。ここで休憩、朝食にしました。樹林から出ると、風が強かったのですが、ここはハイマツの影で風が遮られていたのです。

 

▲6:47。朝食を済ませ、岩装備を整えて、さあ! 出発です。

 

10年前にO橋君と来た時は、大同心基部から小同心基部まで10数分かかっていました。僕は2回(大同心ルンゼを登った時も数えると3回か)、S﨑君は1回ここを歩いたことがあるわけですが、本当に人の記憶なんていい加減なものですね。

O橋君の本チャンデビューは八ヶ岳の小同心クラック

上の写真で先頭を歩いているK野さんは、大同心右端の草付きとの境い目に登って行ったのですが、僕が声を掛けて、「そっちじゃないよ。もう少し下じゃないかな」と呼び止めたんです。

 

▲6:59。この辺りには踏み跡が数多くあります。みんな迷ってるんでしょうね。僕が先頭になって探しますが、行けなくなって何度も引き返します。小同心へは左側が山側になるのですが、この写真は右が山側でしょ。間違いだったので、元に引き返しているところです。

 

▲7:08。歩き回った末に、やっと気付いて、K野さんが最初に選んだ大同心岩場と草付きの境い目に戻りました。ここに来ると、僕もあやふやだった記憶の中に、ここの風景が蘇って来ました。そう、ここです! 僕ですね。(撮影:K野)

 

▲7:13。大同心からの正しいルートは分かりましたけれど、そこから先、小同心基部までも迷いました。これも過去の記憶が曖昧なこともありますが、このころになると完全に小同心がガスで見えなくなってしまったからでもあります。行きつ戻りつ、上過ぎたり、下過ぎることはありませんでしたが、迷っています。上の写真もあまりいい感じではないですよね。おそらく戻ったんでしょうね。僕です。(撮影:K野)

 

▲7:27。ここでも高く行き過ぎて、下の良さそうな踏み跡まで下りることにしました。S﨑君がすぐにザイルを出してセットしてくれます。僕は眼が良くないので、あまり踏み跡の様子は見えません。

 

▲7:32。S﨑君が先頭で懸垂下降します。

 

▲7:34。僕も続いて懸垂下降。(撮影:K野)

 

▲7:49。S﨑君とK野さんが(二人とも年は近くて40代なんですが、S﨑君とは彼が20代前半からの付き合いですから、~君づけで呼ぶ習慣になってしまっているんです)S﨑君のスマホの地形図を見ながら、「行き過ぎてるね」と相談しているところだと思います。小同心クラックのスタート地点を通り過ぎてしまったようなんです。ここでも記憶が曖昧で、僕は「スタート地点はもっと広い場所だった」と思って「ここじゃない」と判断したんです。

 

▲8:18。僕が思ったほどではなくても、それなりに広い小同心クラック登攀のスタート地点。ちょっと休憩後、登攀開始しました。

 

1時間以上、さ迷いました。風も強いし、ガスっていて今後の天候も心配です。僕とS﨑君は「このまま戻って、大同心ルンゼを登ってもいいや」と感じていました。K野さんに「どうしようか?」と聞くと、「行きましょう」と、力強い返事。それで即決です。行くぞ!

まあ、K野さんが「行く」と言ってくれて、内心は僕もホッとしましたね。K野さんの強い意志が僕たち3人を結束させてくれました。

 

3人パーティーなので、リードするのは1人です。僕はともかくとして、S﨑君にはリードもしたい気持ちもあったかと思います。でも、この3人の中では体力でも登攀力でもK野さんが優れています。疑問の余地なく、K野さんがリードすることには決まっていました。それに、彼は岩登りの本番は初めてですから、リードすることでたくさん学び経験することが多いと思います。

 

▲8:19。今回はトップ(K野さん)の確保はS﨑君にお願いしました。つづら岩でもこの二人はザイルを組みましたからね。信頼関係は出来ていると思います。僕はもっぱら撮影担当です。あと、大きな声でのコールも担当。この日は強風の日だったので、声が届きにくかったんです。

 

▲8:31。2番目に登るのはS﨑君です。もうちょっと登ると、ガスの中に溶け込んでしまって、僕の眼では人を判別できなくなってしまいます。

 

▲8:47。1ピッチ目の終了点。

 

▲8:53。僕の左足が写っていますね。ぼんやりとですが、スタート地点の広場も見えています。

 

▲8:54。2ピッチ目の登攀をスタートするK野さん。

 

▲9:11。1ピッチ目終了点のすぐ右の岩場。手が届く距離です。ガスってなければ、赤岳とかも見えるはずなんでしょうけれどね。

 

▲9:24。S﨑君が2ピッチ目を登り始めました。けっこう垂直に立ってるんですが、ホールドやスタンスは豊富で、難しくてもグレードは4級ほどです。風が強いので、ザックの紐類がなびいていますね。

 

▲9:30。2ピッチ目終了点から登って来るS﨑君を写しています。白いヘルメットと赤いザックが見えますか? (撮影:K野)

 

2ピッチ目の終了点に僕も登って来たのですが、そこで掴んだ岩が泥壁にくっついただけの浮石でした。すぐに外れて落ちました。太めの大根くらいのサイズでした。掴んでいたので、そっと足元に置きましたが、セルフビレイを取ってしばらくすると、その浮石の上にあった幾つかの岩がごそっと落ちて来ました。僕の右足太ももや膝に乗っかるような感じで掠めて落ちて行きました。大きなのは太めの大根2、3本分くらいの大きさだったので、その瞬間は「やったかな!?」と思いました。酷い打撲傷、裂傷、最悪は骨折の可能性もほんの一瞬ですが、頭をよぎりました。でも、痛みはありませんし、動かして見ても何ともありません。ホッとしました。二人もびっくりしていました。

 

▲10:02。3ピッチ目を登攀中のK野さんを確保するS﨑君。ここでの会話はもっぱら寒さに関することばかり。僕は念のために、ビバークで夜を過ごさないといけなくなった場合のことを考えて、ユニクロのウルトラライトダウンを持って来ていたのですが、それを着ているだけです。他はTシャツと半袖のラグビージャージ。「ズボン下も穿いてくればよかったね」(持って来ていませんけど)とか、「雨具のズボンも穿いとくんだった」とかの会話ばかりでした。両脚が震えはじめ、両手の指も痺れ始めていました。

 

▲10:02。そんな悪劣な環境の中、心慰めてくれるのは岩場で咲く小さな可憐な花たちでした。

 

▲10:14。K野さんはこの写真の左端の岩をちょっと難しそうに登って行きました。それを見て、S﨑君は写真中央部を登りました。「登り易いよ」と言うので、僕もS﨑君と同じルートで。写真では岩に腰掛けていますが、僕もやっぱり腰掛けました。それが自然なムーブなんでしょうね。

 

▲10:19。この花はイワウメでしょうか?

 

▲10:19。2ピッチ目の終了点はこんな感じで残置のシュリンゲがあります。2、3本のシュリンゲをひと捻りした上で環付カラビナをセットしました。

 

▲10:20。ハクサンイチゲかな?

 

▲10:28。3ピッチ目の終了点にいる二人が見えました。もっと上、完全に小同心の頭に出ていると思っていましたが、ほんの僅か残していました。ですから、二人と合流後は、僕が2、3m登って、小同心の頭に出て、さらにその先へザイルを伸ばしました。途中の岩にボルトが打ってありましたが、その先に行ったので、ハイマツの枝で確保しました。

 

▲10:29。綺麗な青ですね! 太陽が出ていれば、もっと輝いてるはずなんですが。オヤマノエンドウ。

 

▲10:38。左奥に見えるのが小同心の頭。ザイルで確保はしていますが、通常はコンテで歩く場所です。S﨑君が来ました。

 

▲10:43。K野さんです。

 

▲10:45。小同心の頭から横岳直下の岩場までは狭くて細長いお花畑になっていました。このウルップソウも横岳縦走路ではあまり見かけませんが、ここではたくさん咲いています。人が多く歩くだけで減ってしまうのでしょうか? それとも悪い人がいるのでしょうか? 

 

▲11:09。横岳直下の岩場です。3級程度ですが、念のためにザイル使用します。ここもK野さんがリード。写真ではS﨑君がフォロウ中です。

 

▲11:09。ウルップソウ。

 

▲11:11。ハクサンイチゲ?

 

▲11:23。ザイルを束ねているS﨑君。笑顔です。

 

▲11:23。K野さんも笑顔がこぼれます。

 

▲11:23。終了点は横岳山頂。他の登山者も多くいました。さっきまでの強風が嘘のようにここは風の影響を受けないようです。静かです。

 

▲11:24。ホッとした安心感が漂います。

 

▲11:25。握手を交わし、成功を称えあいました。

 

▲11:52。登山道沿いに咲いていた花。ミヤマシオガマかな?

 

▲11:53。梯子。

 

▲11:56。僕とS﨑君は後ろ向きで降りたのに、K野さんは前向きに歩いて下りて来ます。

 

▲12:01。この花はキバナシャクナゲ?

 

▲12:19。硫黄岳山荘です。この付近は風を遮るものがないので、僕たちは強風に晒されっ放しです。僕は一度、風にバランスを崩して手を付いてしまいました。

 

▲12:37。硫黄岳までは幾つかのケルンがあります。ホワイトアウトの時は助かりますよね。このケルンは何故傾いているんでしょうか?

 

▲12:40。ガスの中から二人の姿が浮かび上がって来ます。

 

▲12:41。硫黄岳2760m山頂です。

 

▲13:59。赤岳鉱泉到着です。下山中、周囲のガスが消えると、風も吹かなくなりました。稜線のガスの中だけが寒くて強風も吹いているのですね。

 

▲14:42。テントも撤収して、これから下山です。

 

▲14:45。大同心と小同心が少し見えています。テント代は高いですけれど、水も豊富で、トイレも綺麗で、自炊できるテーブルもあって、お酒も買える素敵な天場でした。1000円で入浴も出来るそうですよ。

 

▲15:27。堰堤広場の手前、堰堤の脇です。ここからは林道歩きです。

 

▲16:12。美濃戸に到着です。右は赤岳山荘。

 

▲16:14。駐車場に着きました!

 

予定時刻よりも遅くなったせいもありますが、K野さんが翌日が納入日なのであまり遅い帰宅は避けなければなりません。赤岳山荘で肉うどん(K野さんは肉そば)を食べて、お風呂にも入らずに帰ることにしました。

帰路、高速を走っていると、大月から先で激しい渋滞になっているとの情報がありました。二人が検討した結果、大月駅で電車に乗ることになり、そこで3人は別れました。K野さんはすぐに発車する特急で帰ることにし、僕は普通電車で帰ります。S﨑君は混んでいる下道は避けて、山中の道路でのんびりと帰るそうです。

 

こうして僕の9年ぶりの岩登り本番は無事終了しました。まだまだ山体力復活途上ですけれど、特に問題もなくこなせたことはほんの少しだけですが、自分への自信にもなります。ただ、岩登り本番としてはいちばん易しいレベルですけれど、実践後に僕を襲った疲労感は最大級でした。月曜日と火曜日は何もする気にもなれず、食欲も衰えていました。水曜日からやっと3食きちんと食べられるようになり、家事もこなせるようになりました。

翌週の土曜日に小さな沢へ行きましたが、急登では脹脛にすぐ乳酸が蓄積されるような感じでした。今も身体から疲労感が抜け切れていません。