大正時代の大丸デパート
1921年店員の「週休制度即時実行」運動 (読書メモー「日本労働年鑑」第3集 大原社研編)
参照 「日本労働年鑑」第3集 第四編 労働者状態
店員の決起
前年12月大晦日の東京と大阪で同時におきた三越デパート大争議は、今年1921年1月1日午前2時、労働者側の全面勝利で解決した。https://blog.goo.ne.jp/19471218/e/73edcdd26b67b867025256e7e867c4df
しかし、いまだ全国の商店店員は無権利な状態に置かれ、商店で働く多くの労働者は深刻な苦しみの中にいた。
店員の「週休」問題——店員には月1日の休みもない
今日、我国の店主と店員との関係は家族主義の仮面をかぶった主従関係であると断じて過言ではあるまい。店員は早天より夜半に至るまで報酬もなく、店主や番頭の命令下営々として働かされ、一定の年期を経て独立することを唯一希望としているのであるが、実際独立できる者はほとんどいない。その多くは年期近くなると種々の難癖をつけて解雇させられるのである。しかも彼らの多くは店主と同一家屋に寝泊まりして厳重なる監視を受けているがゆえに、工場労働者のように組合を組織して労働運動をもおこせず、また月1日の休日すらないため広く同志を糾合してその要求を社会に訴えることができない(「日本労働年鑑第3集第四編 労働者状態)。
1921年10月よりジュネーブで開催された第3回国際労働会議で商業使用人週休問題が議題となったこともあり、世界中で商店員の休日制度が問題とされ世界の多くの国で週休制度が設立された。しかし、日本では全国商業会議所と実業組合が店員の週休制度に反対・時期尚早の答申をだして抵抗していた。
大阪の商店労働者が立ち上がった!
大阪の商業使用人組合新生会「商業使用人週休制度即時実行」運動
1921年1月9日、大阪で商業使用人組合新生会が結成され、6月3日「商業使用人週休制度即時実行」を決議した。5日、西区新町倶楽部において演説会を開催し、関西における週休制度要求の第一声をあげた。全国商業会議所と実業組合の答申に反対すると同時に同会議に店員側の代表顧問として出席している里見純吉は純然たる店員の意志を代表するものでないと氏の辞任を求める決議をし、6月27日東京で開催された八大商業会議所会議に代表3名を派遣し「商業使用人週休制度即時実行」の要求書を提出した。
五大百貨店(三越、十合、大丸、高島屋、白木屋)へ週休制度の即時実行を要求
7月15日、天王寺公会堂において商業使用人大会を開催し
一、本大会は国際労働会議の議決いかんにかかわらず、われらの権利として週休制度の即時実行を期す。
二、本大会は新生会を実行委員として大阪都下五大百貨店(三越、十合、大丸、高島屋、白木屋)に対して週休制度の即時実行を要求す。
と決議し、新生会幹部が上の五大百貨店に出向き週休制度を要求した。
資本家側の抵抗―「週休」に反対する店主側の身勝手な言い分
店主側(全国商業会議所)は「週休」に反対又は時期尚早と唱える、その理由は以下の通り
一、我国古来の慣習たる温情主義的美風を破壊するから。
二、現在本邦においては店員が休日に有益に利用できる設備が不完全で修養娯楽の機関がないため、週休制度はかえって店員に悪影響を与えるおそれがある。
三、取引先やお客に不利不便を与えてしまう。
四、費用が増え、かえって小売営業者に打撃を与えてしまう。
五、店員を雇っている店だけが週休制度にすると、家族だけの店との間に不公平がでる。
六、現在一般的に、店員は心身を過度に疲労することなく、また店員自身が週休がないことに不満を抱いていないので週休は必要ない。
七、週休制を採用せば使用人は平生勤勉せざる可らざる事を自覚するの要あるも現在においてはこの点疑であり、要するに能率の増加を望む可らず。
(感想) 労働者をたった一日の休日すら与えずに酷き使いたいという実に身勝手な店主側の言い分です。しかし、このような経営者側の思想は現在においても根強く残っているのではないでしょうか。今でも長時間労働や無休で酷使された労働者が過労死にいたる事件は大企業ですら後を絶ちません。過労死を生んだワタミなどの社長共の言説は100年前の資本家のそれとどこがちがうのでしょうか。彼らの本性は100年前となんら変わることはないのです。
