地下鉄売店の契約社員の女性(55歳・都内在住)
1ヶ月の手取りは14万円前後。
年間所得は約180万円。
家賃(6畳と台所)は月6万5千円。
光熱費や通信費を除いて食費などに回せるのは月4万円。
3年間、衣料を購入していない。
将来に不安を感じる。
メトロコマースは地下鉄売店員の「貧困」解消に取り組んでください!
東京地下鉄(東京メトロ)の駅売店「メトロス」で働いている契約社員らでつくる、私たち全国一般東京東部労組メトロコマース支部の組合員が取材を受けた内容が、11月26日付『東京新聞』朝刊の記事になりました。
記事の中で生活苦の実態例として出てくる「東京都の地下鉄売店で契約社員としてフルタイムで働く都内の女性」がメトロコマース支部の組合員です。NPO法人労働相談センターのスタッフのコメントも掲載されています。
記事は以下のとおりです。
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高い「貧困率」対策は? 都市生活さらに厳しく
非正規雇用 賃金底上げを
国民の七人に一人が生活に苦しんでいることが、政府が発表した「相対的貧困率」(15.7%=調査対象年二〇〇六年)で明らかになり、貧困の広がりが浮かび上がった。特に、ひとり親の家庭は深刻だ。当事者に事情を聞き、国や社会が取り組むべき対策を考えた。(佐橋大)
愛知県内の四十代の女性は、四年前から夫と別居し、パートで働きながら、中学生と高校生の二人の子どもを一人で育てている。フルに働いても年収は二百万円程度。長男は新聞配達をして生計を助ける。「貯金を崩して生活しているが、将来が不安。進学など子どもの選択肢が狭まらなければいいが」と話す。
民主党政権になって初めて発表された相対的貧困率は、15.3%(調査対象二〇〇〇年)、14.9%(同〇三年)、15.7%(同〇六年)で推移している。
経済協力開発機構(OECD)がまとめた二〇〇八年報告書(各国の対象年は、二〇〇〇年代半ば)で国際比較すると、加盟三十国中四位だ。「ひとり親世帯」でみると、貧困率は58.7%にも達する。半数以上が「貧困状態」は、日本だけだ。
「反貧困ネットワーク」(東京)などによると、終身雇用制を核にした日本型の雇用が一九九〇年代以降ほころびが目立つようになった。派遣など非正規雇用の増加で、雇用保険などの安全網も崩れ、貧困層が増えて正規と非正規、男女間での格差が顕著になっている。
母子家庭の〇五年の平均年収は二百十三万円にとどまる。母子家庭を支援するNPO法人「しんぐるまざあず・ふぉーらむ」(東京)の赤石千衣子理事は「ふぉーらむには、半年以上仕事がなく、うつ状態になったとか、ガスを止められて半年以上になる、など深刻な相談が寄せられている」と窮状を示す。
「貧困」は、あくまで目安。物価の高い都市部ではそれ以上収入があっても生活は厳しい。東京都の地下鉄売店で契約社員としてフルタイムで働く都内の女性(55)の一カ月の手取りは十四万円前後。独り暮らしで、年間所得は約百八十万円で「貧困」ではない。しかし、家賃は六畳に台所で月六万五千円。光熱費や通信費を除くと食費などに回せる金は月四万円ほど。この三年間、衣料を購入していない。将来に不安を感じるという。
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労働問題の相談に応えるNPO法人「労働相談センター」(東京)の須田光照さんは「(小泉内閣時代の)構造改革路線で増えた非正規労働者の賃金が低すぎるのが問題だ。例えば、東京都の最低賃金は時給七百九十一円。これでは、フルに働いても生活が成り立たない。最低賃金の引き上げや、正規雇用と非正規雇用の賃金格差の是正を早急に実現すべきだ」と訴える。
「反貧困ネットワーク」は「政府が率を発表したのは、貧困と向き合う意思を持った表れ」と評価。今後、障害者や高齢者、女性など貧困に陥りやすいグループごとに貧困率を算出し、それを分析することで効果的な対策に結び付けることを提案している。
【相対的貧困率】
国民1人当たりの所得を多い順から並べ、真ん中の人の所得額(中央値)の半分に満たない人の割合。高いほど、国内の経済格差が大きいことを示す。
2006年の中央値は228万円で、1人当たり114万円より所得の少ない人が「貧困」とされる。1人当たりの所得額は、家族の所得を人数の平方根で割って求める。