彼、m氏はこう言った
中国人と商売するときは、日本人のように、信用とか責任とか、そんな部分と言うものを求めるのは難しいものですね
彼らは嘘をつくのが上手ですからね 彼らは、日本語で大丈夫大丈夫 とよく言いますが、本当の意味で日本的な信用とか責任感を持って、大丈夫です という言葉を言ったりはしていないのです
僕も何年も中国で仕事をして、いろんな、日本的な信用とか、責任感というものを失った感覚の彼らの仕事上のトラブルとかによく出合いました
そのたびに、僕は日本企業と彼ら中国企業との板挟みに会って、随分と苦労させられましたよ
僕は以前は、ある有名な中国相手の商社に僕は勤めていて、その仕事上の僕のノウハウを生かして、そこから独立して、日本人企業向けの中国企業を紹介斡旋する会社を設立したんですが、やはり、紹介する中国企業のトラブルが続出して、そんな信用問題から、取引先の日本企業に賠償金とか払わなければならない事態になってしまい、僕の会社は倒産してしまい、今ここにいたり というところなんですせどね と彼は苦笑しながらそう言った しかし・・と彼は続けて言った
僕はまだ、これで終わったわけではありません チャンスがあれば、お金さえあれば、また、中国で仕事してみたいですけれどね・・・ と
そう、うちの会社で、臨時アルバイトをしている元エリート商社マンのm氏は言う 彼のこんな話を聞いていると、彼の今のこんな状態・・
こんなブラッチック部品を作っている小さな工場で、時給八百円くらいの仕事・・
しかも、俺から彼の仕事ぶりを見ても、とても、彼は上手に仕事をこなせるようではなくて、それに歳のせいか仕事ぶりは、かれの中国での華々しい履歴から見比べても、とても不器用でお粗末なものを感じざるを得なかったりする
それに、彼は、とても目も悪く、老眼鏡をかけて仕事していても、細かいうちの仕事の検品作業ができなかったりした
そんな彼の悪い目を通して、彼の作業した部品の中から、不良品が発見されると、うちの会社の若年のアルバイト作業員から彼が、ボロカスに叱られたりする光景を何度か見たことがある
彼はそのたびに苦笑し、メガネがあわないからとか、僕は営業向きであって、現場作業はできないみたいだ とか言って言い訳していた
俺は彼のそんな作業トラブルとか見ていても、どこか年齢も五十近くで似通っており、同じ中国人女性を妻にして、ある意味、お互いに中国通であるということで、それに彼の以前の中国での輝かしい仕事上での履歴経歴?を尊重するあまり、彼に対してそんな作業トラブルを起こしたとしても、職務上、現場主任の立場として、彼を叱りつけるのが当然のことなのだが・・・そんな、彼との共有する事柄からか、あまり彼に対しては厳しいことは言えなかったりした
むしろ、こういう彼の今の状態に落ちぶれてしまった事に対する同情の気持ちから、彼に対しては理解者としての目線で、彼の仕事ぶりを大目にみていた部分があった
そんな俺の気分みたいなものを知ってか感じてか 彼はこの会社の中で俺以外の人間には心を開いた話とかしなかったが、俺にはなんでも自分の過去の仕事経歴考えみたいなものを伝えてくれたりした
彼は仕事中は若年のアルバイトに幾度も叱りつけられて仕事させられ、元気がない感じだったが、昼休みになると、自慢の中国人妻の愛妻弁当を持って、俺のところにツカツカと寄り添い、一緒に昼食を共にしながら、中国での過去の輝かしいエリート商社マンだった挿話話を俺に目を輝かしながら語ってくれるのであった
俺は彼に聞いてみた
中国では日本企業とか新たに現地で会社を興す場合、その現場の地方の行政府とかに許可とかもらわなければならないみたいですが、そんな取引業務もmさんはなさってたんですか?
彼は自慢げにこう言う
そうですよ 僕はやってましたね その許可をえるには、やはり、その行政府の長官とかに賄賂を贈ることが常でしたね
彼ら中国人の役人ども、は なんでも、最初はゴネルんですよ この我々の土地には貴方方の仕事の内容には似合わない土地柄だとか、廃棄物の問題で、君の会社の新しい業務は許可できないとか・・彼ら役人はこんなこと言ってゴネルんですよ
でも、彼らに日本のお酒です とお酒の箱の中に日本円で何百万とお金をしのばせておいて、また、あらためて、あくる日に行政府の役人に会いに行くと、彼ら態度は昨日とは打って変って、日本と中国の友好のために、この土地で日本の先生たち仕事する事を歓迎します と
たどたどしい日本語をどこからか教え込まれてきたのか、そう言いながら、ニコニコして我々を迎えてくれたりしますよ・・・
それほど、中国では他国のものが新事業を興すには賄賂というものが大事になってくるんですよ
俺はその話を聞いて尋ねてみる
賄賂ですか?共産圏の国に賄賂とは・・
何年か前、僕が今の妻と結婚した時に中国人の紹介者の人が言ってたんだけれど、その当時、中国で多額の賄賂をもらっていた行政官がその罪で死刑にされたと聞いたことがあるんですが、今でも中国では、賄賂は絶えないものですか?
あたりまえです!
と 目を大きく見開きながらm氏は答えた
さも、こいつは世間知らずな奴だと 言わんばかりの表情で彼は俺を見ながら、続けてこう言った
賄賂というものは中国で無くなるという事はありません
中国ではすべての物事を行う事が賄賂、贈り物、物をあげる ということで成り立っている社会です
共産主義であっても、人種としての中国的DNA、賄賂をもらう 与える という基本的な思考回路というものは決して失われていくことはないでしょうね
まして、共産主義、社会主義という中国社会生活する人たち その時代にできた、その人たちの共産主義から培われた怠けた気質というものは、その長年の生活習慣はちょっとそっちょじゃ彼らの気質として無くなっていかないものであったりするんです。
だから、僕たち中国で働く日本の商社マンはそんな中国人の怠けた気質のせいで、ずい分と苦労させられましたよ。
彼らに何百回と役中国の役所に我々は、仕事の文書を届けても、彼らは真剣に取り扱ってはくれません
今日はもう役所は休みだ 私は疲れた 妻が家に早く帰って と言っている 君たちだけの役所ではない とか
彼ら役所の人間のそういった言葉を発する怠けた姿勢というもの正して迅速に物事を動かすには、彼らに賄賂を贈るということしかないのです
彼らは賄賂を貰った瞬間から、それまで怠けものだったものが、見違えるように迅速に物事を処理したりします
時には残業して夜遅くまでかかってでも、賄賂を贈った我々の為に仕事をこなしてくれたりします
だから、中国での物を動かす原理とはとても単純なものなんですよ
賄賂を送る
これだけで、事が済みます と彼は熱く俺に説明するのだった
彼は、その説明を俺に言い終わると、あたりを見まわして、声をひそめ、俺にこう言ってきた
これは一つ提案なんですが・・・
と彼の言葉がどんどんと小さくなっていく・・そして、こう俺に言った
お宅の会社が僕に資金提供してくれば・・
現地の中国企業の何軒かにここの仕事を委託して、もっとこの会社も今よりも利益のある作業と言うものが可能だと思うんですがね・・・
oさんからひとつ、社長に私の提案を話してもらえないですか?
僕は中国にはたくさんのコネもあるし、友人もいますから・・
こんな細かい口銭仕事のプラッチック部品の検品の仕事よりも・・・僕を中国での営業仕事・・・
そんな風にこの会社で使ってもらったら、かなり僕は有能だと思いますけれどね と
そう、聞き取りにくい小声で俺に語りかけながら、彼の中国人妻の作ったとされる愛妻弁当のおかずの中から・・
分厚い春巻きを一つ取り出して・・
俺の食べている360円の赤弁の白いご飯の上にポンと乗せた・・
彼の愛妻弁当から、春巻きを俺に一つくれる事・・・
中国での長年の彼の営業での賄賂癖なのか、それとも俺に対する好意のしるしなのか・・・
そんな俺の弁当の白いご飯の上に乗っている彼の贈ってくれた分厚い春巻きを見つめながら・・・
彼の俺に頼んだ・・ 言葉の意味をじっと俺は考えていた・・
続く