2022年8月30日から11月30日まで、東京都人権プラザ(公益財団法人 東京都人権啓発センター)が主催事業として、アーティスト・飯山由貴の企画展「あなたの本当の家を探しにいく」を開催している。その付帯事業として、飯山氏の映像作品《In-Mates》(2021制作)を上映する予定であったが、東京都総務局人権部がその映画の事前検閲を行い、メールで「上映の禁止」を伝えてきたため、大問題となり、チェンジ・オルグなどで「上映実施を訴える署名運動」が起こっている。
東京都総務局人権部の姿勢(メールの概略)は、以下のようなものである。
「《In-Mates》作中で歴史学者が『日本人が朝鮮人を殺したのは事実』と発言しているシーンに対し、『関東大震災での朝鮮人虐殺に対して、都ではこの歴史認識について言及していません』とし、小池百合子知事が毎年9月1日関東大震災朝鮮人犠牲者追悼式典への追悼文送付をしない姿勢について、『都知事がこうした立場をとっているにも関わらず朝鮮人虐殺を❝事実❞と発信する動画を使用する事に懸念があります』」
加えて、在日コリアンの権利を毀損する内容を記していた。
これは小池百合子都知事と、東京都総務局人事課職員の共謀による、東京都行政による「ヘイトクライム」(異文化異民族に対する偏見差別などを原因として起こす憎悪犯罪)行為であり「歴史改竄」でもあり、憲法第21条「表現の自由、検閲の禁止」の「言論、出版その他一切の表現の自由はこれを保障する。検閲はこれをしてはならない」や、第99条「憲法尊重擁護の義務」の「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負う」に違反しており、国民の「知る権利」をも侵害する行為である。
関東大震災50周年朝鮮人犠牲者追悼行事として、東京都墨田区都立横綱町公園(陸軍被服廠跡)に建てられた台座の碑文を紹介しよう。
「この歴史
永遠に忘れず
在日朝鮮人と固く
手を握り
日朝親善
アジア平和をうち
たてん
藤森 成吉」
以下に、1921年にフランス帰りの小牧近江が金子洋文らと発刊した様々な党派の共同戦線をめざす雑誌『種まく人』の「帝都震災号外」を紹介しよう。
「震害地における朝鮮人の問題は、流言飛語として政府側から取り消しは出たけれども、当時の青年団その他の、朝鮮人に対する行為は、厳として存在した事実である。悲しむべき事実である。呪詛すべき事実である。憎悪すべき事実である。拭うても拭うても、消す事の出来ない事実である。震災と共に起こった、こうした事実を眼のあたりに見せつけられた僕たちは、できるだけ冷静に、批判、考究、思索の上、僕たちの立場からして敵味方を明確に凝視する必要を感ずる。果たして、あの、朝鮮人の生命に及ぼした大きな事実は、流言飛語そのものが孕んだに過ぎないのだろうか?流言飛語そのものの発頭人は誰であったか?いかなる原因で、その流言飛語が一切を結果したか?中央の大新聞は、青年団の功をのみ挙げて、その過を何故責めないか?何故沈黙を守ろうとするか?事実そのものは偉大なる雄弁である。この偉大なる雄弁に僕たちプロレタリヤは、あくまで耳を傾けなければいけない。そして僕たちは、この口を縫われてもなおかつ、抗議すべき目標を大衆とともにあきらかに見きわめなければいけない。」
小池百合子都知事と都総務局人事課職員は、ただちに「上映禁止」を謝罪撤回し、その決定に至った経緯を調査公表し、関係者関係局課には認識を糾すために「研修」を受ける義務を課するべきである。でなければ辞職していただくべきである。
(2022年11月5日投稿)