岸田自公政府は2024年6月19日、政府の地方自治体に対する「指示権」を拡大するために、地方自治法を改正(改悪)した。国会審議では、「指示権」を行使する具体的事例を示さなかっただけでなく、政府は行使後、指示内容を国会に「事後報告」する義務を追加したが、自治体からの事前の意見聴取は努力義務とした。岸田自公政府はこの「指示権」拡大で地方自治体を変質させたいようだが、どのようにするつもりだろう。そのヒントは自民党の「憲法改正草案」にある。
たとえば、地方自治に関しての規定は、現行憲法では第8章で第92条から第95条に定めており、「地方自治の本旨」については、第92条「地方自治の基本原則」で「地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基づいて、法律でこれを定める」としている。「地方自治の本旨」とは、「住民自治」と「団体自治」であり、その地域住民自身が自分たちの要望に沿った政治を国からの干渉を受ける事なく実現する事である。そのために、第93条第1項で「地方公共団体には、法律の定めるところにより、その議事機関として議会を設置する」、第2項で「地方公共団体の長、その議会の議員及び法律の定めるその他の吏員は、その地方公共団体の住民が、直接これを選挙する」と定めている。
ところがこの「地方自治の本旨」を、自民党は「憲法改正草案」では大きく変質させている。「改正草案」の第92条は「地方自治の本旨」と題し新設するとともに、現行憲法第93条「地方公共団体の機関、その直接選挙」に相当するものとして、「憲法草案」第94条に新しく「地方自治体の議会及び公務員の直接選挙」と題し、その第1項では「地方自治体には、法律の定めるところにより、条例その他重要事項を議決する機関として、議会を設置する」、第2項では「地方自治体の長、議会の議員及び法律の定めるその他の公務員は、当該地方自治体の住民であって日本国籍を有する者が直接選挙する」と定めているのである。
つまり、「議会」は、「議事機関」ではなく、「議決機関」として設置するものと変質しており、地方公共団体の公務員についても、「住民」であるだけでなく、「日本国籍」保有者(国籍条件)により直接選挙すると外国人排外主義を明確にし、変質している。このような考え方価値観は、神聖天皇主権大日本帝国政府が有していたものであり、戦前回帰そのものである。
(2024年6月28日投稿)