安倍首相は2020年3月3日の予算委員会で、全国の小中学校などへの一斉休校要請を春休み以降も続けるかどうかについて、「休校要請の判断については専門家の意見をうかがったものではない(独断)」と強調していたが、延長の可能性については「専門家から意見をうかがわなければならない。その上で判断する」と発言した。
専門家の判断を仰ぐ事は何より重要な事である事は言うまでもない常識であると考えるべきである。しかし、安倍首相はなぜそれをしなかったのだろう。それは彼の思考様式が神聖天皇主権大日本帝国政府(陸軍)のものと同様であるからに過ぎない。その思考様式は「反知性主義」と言って良いであろう。
この事に関連する陸軍評論家の秦郁彦氏の言葉を紹介しよう。それは、
「陸軍は最後まで、民間の知識も技術もその組織に合理的に組み入れて活用しようとせず、また、最後の最後まで、知識人にも学生にも背を向けていた。これは志願兵が続出して大学が空になり、一方、軍は彼らの知識・教養を百%活用したといわれる米英とは実に対蹠的だが、さらに、切羽詰まって学徒を動員してもその知識を活用しようとはせず、ただ「量」として、幾何学的組織の中に位置づけることしか考えなかったから不思議である。そして、量の面で大学生が適格でないなら、内務班でしぼって、鋳型にはめ込むべきだと考えても、技術とか知識が時には軍司令官に命令を下し得るものだ、それにはどうすべきか、という発想は全くなかった」というものである。