夏の庭に想う ~ある園芸家の夏~

2014年08月20日 | バラの手入れ
夏の庭から




残暑お見舞い申し上げます。
    

  

毎年、夏はバラを伸ばし放題にして、新しい植物も買い増やすこともなく、水やりだけは、
欠かさないことだけを思っています。


『園芸家12か月』(カレル・チャペック)の「8月の園芸家」の項を久々に読んでみました。

あまり夏に出かけるのは気がすすまないこの園芸家。しかしなんとか留守のあいだ安心して庭をまかせることの
できる友達か親戚の者を見つけて出かけることに。いざ出かける前に親切なその人に、くれぐれも頼むと云った
言葉が次の通り。


とにかく、ごらんのとおり、いまは、庭ではなにもすることがないんです。3日に1日見回ってくださるだけでいいんです。何か変わったことがあったら、ハガキ一枚よこしてください。すぐに帰ってきますよ。じゃあいいですね。よろしくお願いします。さっきお話ししたように、5分間でいいんです。
ちょっと見回るだけで


翌日、この男は一通の手紙を受け取る。

お願いするのを忘れましたが、毎日庭に水をやって下さい。いちばんいいのは、朝五時か、夕方の七時ごろです。大した仕事ではありません。水道の栓にホースをつけて、一時間水をやるだけでいいのです。マツ科の植物には、どうかたっぷりやってください。それから芝生にも、雑草が目についたら抜いてください。以上

それから一日たつと、

ひどく乾燥しています。お願いです。ロードデンドロンに汲みおきの水を、ジョウロに二杯くらいずつ、マツ科の植物には五杯ずつ、その他の植物には4杯ぐらいづつやってください。いま咲いているものには、うんと、水をやらないといけないです。いまは、何と何が咲いていますか、折り返しお知らせください。しぼんだ花は、花梗を切り落とさないといけません!花壇を全部、鍬で中耕していただけるといいのですが。そうすると、土が呼吸しやすくなります。バラにアブラムシがついていたら・・

云々と続き、最後に、

それ以外にしていただくことはありません

で締めくくられています。

三日目は、芝を刈ってくださいとあり、芝刈器をつかって刈ったあと、のこった芝は刈り込みバサミで刈ってだの熊手でよくかいて、箒ではかないと芝が禿げます!と、それから水をやること。「うんとたくさん水を!」と

四日目。

万一、嵐がきたら、大急ぎで庭を見まわってください。豪雨のためによく被害をうけることがありますから、そんなとき、ちょうどその場にいて下さると都合がいいのです。バラにウドンコ病が出たら、手遅れにならないように早く、朝露のあるうちに硫黄華をふりかけてください。丈の高い草花は風で折れないように、支柱にくくりつけてください。~中略~家のきわのブドウに毎日水をやることを忘れないでください。芝は刈ってくださったでしょうね。あとはハサミムシ退治のほかに何もすることはありません。」

六日目

速達で当地に自生している植物を一かご送ります。すぐに植えること。夜中にあかりをもって庭に行き、カタツムリを退治してください。路にはえている草を取っていただけるといいのだけれど。植物の見張りも大して時間つぶしにならず、小生の庭でたのしい時をお過ごしのことと存じます。」


親切な男は責任を感じているので、そのあいだ、水をやり、芝を刈り、土を耕し、草むしりをし、到着した
植物を手にもって、さてどこがよかろうかと、植え場所をさがして歩き回る。汗だくになって、頭から足までどろまみれになっている。そのうちに気がついてハッとする。小物が一本ここでしおれている。あそこでは花首が二つ三つうなだれている。むこうのほうでは芝生が黄色くなりはじめ、庭じゅうがまるでやけどでもしたように見える。親切な男は、なんだってこんな厄介な仕事を引き受けてしまったんだろうとくやしがり、早く秋になりますようにと、神さまにお祈りする
。」

結局、くだんの旅行に出かけた園芸家は庭が気がかりで、夜もろくに眠れず、親切な男が毎日庭の様子を
知らせてくれないのに腹をたて、毎日宿泊先で見つけた植物を送り、家に帰る日を指折り数えて待っている・・
そして家にかえって、庭にかけこみ、変わってしまった庭をみて、心の中で(「おれの庭をメチャメチャに~」)
と憤慨しながらも、

「「ありがとう」ぶっきらぼうそうにそう言うと、荒れはてた庭に水をまくため、当てつけがましくホースを
取り出す。(とんちきめ!)心の底で彼は考える。(こんな男を信用するなんて!避暑に出かけるなんて
馬鹿なことは、もう、一生涯やらないぞ!)」



以上。「8月の園芸家」の項から抜き書きし、要約をしました。

これを読んで、思わずうなずいたり、笑ったり、苦笑したり、それはダメでしょう~とダメだししたりしてました。


夏の水やり・・・結構同じようなこと考えてやってました。水やりの時間は、草取りの時間であり、黄変したり、
黒点の出たバラの葉を取ったり、枯れたものを取り去ったり、何かしら状態をみながらやってました。これが
習慣というか、当たり前の日常になっています。年がら年中きれいに庭を保ち、花を咲かせておきたいのは
やまやまですが、人も夏バテするようなこの暑さ、バラも夏バテしますので、出来るだけ自然に、伸び放題に
しているのはこんな理由からもあります。

  

そこでお盆すぎて、まだまだ暑いのですが、蕾をつけたり、咲いているものはそのままにして、
いよいよ伸び放題のものを切る時期がやってきました。夏剪定です。

切る目安は、

●木立性のものは、全体の3分の1の上の部分で、5枚葉のすぐ上でカットする。
●シュラブ等の半つる性のものは、全体の4分の1の上の部分をカットする。
●つる性の5月にしか咲かないものは、伸びたシュートの最先端だけをカットし、出来るだけ直立させておく。
(横倒しすると、それぞれの葉の付け根から芽が出てしまうことがあるので、私は直立させています。)

今、丈の低い位置で蕾をつけたり、咲いているものは、そのままにしているのですが、花が終わったら、
2つ目の5枚葉で切り戻しします。ものすごく伸びた先にさいたものは、そのバラが木立性か、半つる性かで
切る場所を上部の3分の1だけか4分の1だけをカットします。

なお、カットした直後の夕方に、液体肥料を通常よりもっと薄めたものをやりました。もう少し日が経って夕方の
気温が涼しく感じられるくらい下がったら、鉢の三か所に、植木鉢の深さの半分くらいまでスコップで穴を掘って、
固形追肥をやる予定です。

  


またあまり夏の間にぜんぜん伸びなかったもの、すっかり葉を落としてしまったものは、秋の花は望まずに、
カットせずにそのままにしています。

  

なお、例年8月の下旬から9月の上旬までに、夏剪定と施肥は終えるようにしています。
剪定後の8月19日の様子です。





追記

『園芸家12か月』(中公文庫)の訳者、小松太郎氏(1900-1974)の解説によると、

●カレル・チャペック(1890年~1938年)は、ボヘミアの田舎町で医者の家庭に育ち、プラーグ大学で
哲学を学び、ベルリンとパリに留学し、ジャーナリストとして出発したが、、1921年に戯曲「R・U・R」
(『人造人間』)を書いて一躍世界的に有名な劇作家になった。

●『園芸家12か月』には、果樹を除き、おそらくチェコの園芸好きが一般に愛培しているのだろうと思われる
いろんな種類の植物が、訳者の数えたところでは、少なくともに280種以上あげられている。

●アブラムシやウドンコ病には悩まされても、ブラック・スポット(黒点病)に対する悩みは訴えていない。
彼らがにくむのは、ブラック・フロスト(「黒い霜」といっても霜ではない。乾燥した猛烈な寒さが襲ってくると、
植物の葉や芽がくろくなるから)と、旱魃(かんばつ)と風と、どしゃぶりの雨、つまり自然の不可抗力に対して
だけだ。それでいて、なおかつエデンの園をうらやましがっている。等々。

この中公文庫の本には、ヨゼフ・チャペック(1887-1945)の挿絵が載っています。それは、カレルの
兄で、画家で詩人。ユーモラスな挿絵が描かれています。




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