所用で小倉市に行っていた。
小倉の地名から連想して、松本清張の芥川賞受賞作品「或る『小倉日記』伝」の話をしていたら、知人に隣の西小倉駅に松本清張記念館があることを教えてもらった。
一度は訪ねてみたいと思っていたのに、不明なことにこの地と結びついていなかった。
帰る前のわずかな時間だったが、早速記念館を訪れることに
した。
小倉城の敷地内にある記念館。
入館してまず圧倒されたのは、天井まで届くほどの高さの何
枚ものパネルに展示された清張の全著書。
約700冊と言われる著作のうち、わたしは、いったい何冊読
んだのだろうか。
これから、何冊読むことができるのだろうか、などと思いな
がら展示室へと進む。
1F展示室 「松本清張の世界」
テーマ1 ~松本清張とその時代~
明治から平成までの清張の生涯を年表で紹介。
ニュース映像などを映しだすモニターが設置され、当時の社
会背景や世相などを知ることができる。
テーマ2 ~松本清張全仕事~
現代小説、推理小説、歴史小説・時代小説、現代史、古代史
フィルモグラフィの6つの領域別に清張文学の全仕事を紹介。
たしかこのコーナーだったと思う。
映像の清張の語りに思わず聞き入った。
~マスメディアで流される情報をうのみにするな。
「かんぐり」、「邪推」、「憶測」でもなんでもよい。
「なぜだろう。なぜだろう」とそういう探索心をもって
自らの判断で主体的に調べていかなければなにも掴めない
清張が、そのようなことを語っていた。
40年以上も前の彼の言葉がウソと詭弁と隠ぺいで国民を
情報操作し、愚弄する安倍政権を告発しているようだった。
1F、2Fの「思索と創作の城」は書斎・書庫・応接室の展示。
杉並の高井戸の家を移したもの。
書庫には約3万冊の蔵書。
地下1Fには読書室や特別展示室があった。
特別展では、「砂の器」展が開催されていた。
1時間程度の駆け足での鑑賞。
もう少し滞在したかったのだが……。
清張の膨大な著作の中でわたしが親しんだのはほんの一部。
自伝的小説 ~ 或る『小倉日記』伝、半生の記、父系の指
近現代史 ~ 日本の黒い霧
近現代史 ~ 黒地の絵
推理小説 ~ 黒い福音、小説帝銀事件、張込み、点と線、
ゼロの焦点 (近現代史とも重なる)
「いま、再び清張が求められている」
と高橋敏夫さん(早稲田大・大学院教授)は言う。
「社会全体に陰鬱な雰囲気がひろがりつつあるこの時代に
松本清張が再び求められている。
…清張の作品をとおして、わたしたちが日常で感じる社会
や国家への「疑い」を称揚し、そこにひそむ秘密をみぬく
方法を明らかにする。」
(「松本清張『隠蔽と暴露の作家』」集英社新書)
まずは高橋敏夫さんの本を読み、社会や国家にひそむ秘密
をみぬく清張の方法をつかみたい。
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