江戸川教育文化センター

「教育」を中心に社会・政治・文化等の問題を研究実践するとともに、センター内外の人々と広く自由に交流するひろば

映画『日本原 牛と人の大地』を観て

2022-09-24 | 随想
この映画の監督は1980年東京生まれで、福島原発事故を契機に岡山に移住した黒部俊介さんです。

日本原演習場で自衛隊基地に反対して闘っている内藤秀之さんを主人公にして映画を撮った監督に感謝します。


内藤さんは、一見どこにでもいる優しそうな方です。
でもその生き方は、誰にでも真似できるものではありません。



陸上自衛隊日本原演習場(岡山県津山市、奈義町)は、住宅や田んぼが連なる那岐山の裾野に東西6キロ、
南北5キロの範囲に広がる中四国地区最大規模の自衛隊演習場です。


1909年、旧陸軍に強制収容されて、戦後は占領軍の演習場にもなりました。
戦後基地反対の運動が高まる中、1961年、奈義町は条件付で自衛隊を誘致する決議をあげました。

1970年、自衛隊は、着弾地に地元住民が座り込んでいるのを無視して、105mm榴弾砲を射ちました。
この頃から反対運動が高まりました。

内藤さんは、1960年代後半、岡山大学医学部の学生で学生としてこの運動に参加しました。
多くの学生が日本原に来なくなりましたが、内藤さんは、大学生の特権や医者になる道を捨て、
日本原で農民として、牛飼いとして生きることを決めました。

日本原演習場内の土地は、元々住民たちが農地や入会地として利用してきました。

演習場内で農業をするのは内藤さんのところだけとなりましたが、
農地や入会地として演習場内の土地が利用されていることが、映画を観ると分かります。



この映画は、内藤さんの日常生活を描いた映画です。
農民として、牛飼いとしての平穏な生活が、自衛隊や米軍による戦争のための訓練によって、
制限を受け、危険に晒されていることの問題を映画を通じて考えていただければと思います。


内藤さんの生活は苦労が多いと思います。
それでも内藤さんは、日本原での農業と牛の世話を続けています。


内藤さんに魅力を感じた黒部さんが、内藤さんの生活を見つめ撮影した映像には、内藤さんが何を大切にし、
何にこだわって生きているのかが描かれています。

なぜ低温殺菌牛乳にこだわるのか、なぜ精神障がい者に牛乳配達してもらっていたのか、
なぜ近所の人に頼まれれば無償で牛の糞尿を畑に肥料として撒きに行くのか。
なぜ日本原演習場内の農地で農業を続けるのか、生活のいろいろなところに内藤さんの思いが感じられます。

政治的な思想・信条を超えて、共感できるものがあります。

内藤秀之さんや内藤さんと繋がりのある方々も素敵な方々でした。


内藤秀之さんは、軍事国家ではなく福祉文化国家にすすむべきと訴えています。


コロナ禍に物価高も加わり、二重苦、三重苦の大変な生活を強いられている人たちが多くいるにもかかわらず、
それを無視して軍事費を倍増し、16.6億円もの莫大な税金を湯水のように注ぎ込んで「国葬」を強行しようとする日本政府のありようの対極に、
内藤さんたちの生活と闘いがあると思います。



日本原演習場をめぐる問題や歴史等は、「馬天嶺へようこそ」で検索するとホームページで知ることができます。
映画はポレポレ東中野で上映中です。ぜひご覧ください。









<映画好き>



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