(記事より一部抜粋です。)
発がん性など健康への影響が懸念される有機フッ素化合物「PFAS(ピーファス)」が全国の河川や地下水などから相次いで検出されており、検出地点付近の住民の不安も高まっている。政府は事態を重視し、環境省を中心に対応策を進めている。同省では現在、PFASに特化した水道水の汚染状況調査を実施中で、専門家会議では水道水の暫定目標値の見直しに向けた議論を始めた。
環境省による全国の主な河川、地下水などの調査によるPFOS、PFOAの検出状況を示した地図(環境省提供)
PFASを巡る規制強化は世界の潮流だ。特に米政府は4月に飲み水に含まれる代表的2物質の上限はそれぞれ1リットル当たり4ナノグラムという世界一厳しい基準を設定して国際的に注目された。米国では以前は2物質合わせて70ナノグラムが基準値だったので大幅な強化だ。米EPAの発表では、ヒトの疫学データを基に規制値を検討した結果を受けての措置で、全米の水道事業者に基準値を下回るよう義務化した。
環境省と国土交通省は8月末現在、改めてPFASに特化した水道水の汚染状況調査を実施中だ。この調査は水道の小規模事業者にも対象を拡大した初の大規模調査で、47都道府県の担当者や国が認可する水道事業者などに文書で調査を要請している。調査期限は9月末で、結果は専門家会議での議論にも反映される。
PFASは人体には水のほか、魚介類や農作物を介しても消化管から吸収されると考えられている。その後徐々に排せつされるが、例えばPFOSの体内での濃度が半分になるには数年程度かかるとの指摘もある。
ただ、PFASが人体に与える詳しい健康への影響はまだ解明されていない。
WHO傘下の国際がん研究機関(IARC)はPFASのうちPFOAについては4段階ある発がん性評価のうち最も高い「発がん性がある」に、PFOSについては4段階の下から2番目の「可能性がある」に分類している。
米科学・工学・医学アカデミーも腎臓がんや胎児の成長抑制との関連について「十分な証拠がある」と評価している。一方、日本国内では健康への影響について今のところ慎重姿勢が目立つ。
海外の論文などを分析した結果で、PFOSやPFOAと、出生時の体重低下やワクチン接種後の抗体低下との関連については、「否定できない」としつつ、「影響は不明」「証拠は不十分」などとしている。
大手空調メーカーのダイキン工業は過去、摂津市の淀川製作所を含めてPFOAを取り扱っていた。検査は摂津市など大阪府と兵庫県内の住民のほかダイキンの元従業員ら1190人が対象で、2府県の約30の自治体で実施した。PFOSやPFOAなど4種類のPFASの血中濃度を米国などが定める指針値と比較した結果、米国の値(1ミリリットル当たり20ナノグラム)を超過した人が約30%いた。米国の指針値の約30倍もの高値を示した元従業員も1人いたという。
血液検査については高濃度のPFAS検出地点周辺の住民や自治体のほか、東京民主医療機関連合会など医療団体や医療関係者らも公費による広範な検査実施を求めている。だが、公費による血液検査については環境省内から「むやみに調査すると不安をあおる」「血中濃度を測っても個人の健康リスクは特定できない」といった声も聞かれる。
健康への影響が顕在化して被害が広がる事態は絶対に避けなければならない。実際に被害が出てからでは手遅れになる。京大の原田准教授は「健康影響リスクが起きないよう対策すること、あるいはリスクを早く見つけて対処するといったリスク予防が大切だ」と強調している。
「PFAS対策」といってもさまざまだ。健康被害リスク予防のための規制基準強化のほか、場合によっては水源の切り替えも検討対象になる。活性炭などに吸着させて除去する方法は既に何カ所かで実証実験が行われている。将来「除染」が必要と判断された場合は有力な方法になる。
内城喜貴/科学ジャーナリスト、共同通信客員論説委員
(感想)
極めて重要な記事だと感じます。
科学ジャーナリストの内城喜貴さんに感謝すると同時に、
不遇を受けることがないように祈ります。。。。大袈裟かな?
このニュースもすぐに
こうなっちゃうかもと思い、残しておきます。