【ルサンチマン】
ルサンチマンとは、フランス語で「怨念感情」や「反感」という意味です。ニーチェは、ルサンチマンを社会的弱者が抱く、支配者に対する復讐心だとしました。ルサンチマンは、高貴なものを引きずり下ろそうとします。ニーチェは、それを弱者の復讐心だとました。大多数の人間は、一般大衆であり、社会においては、支配される弱い立場にあります。ニーチェは、ルサンチマンが、その大衆たちの精神世界で、一つの敵対運動として働いたとしました。それは、想像上の復讐にとどまり、実際に行動するわけではないとされています。
【価値の転倒】
ルサンチマンは、一般大衆の中で、創造的となり、価値を生み出すようになりました。人間は、自己保存の本能として、不幸に耐えるための手段を考え出すものです。そこで、これまでの価値観を根本的に転倒しようとしました。ルサンチマンは、高貴なものに対する一種の抵抗だとされています。例えば、古代ローマ時代の支配者は、ローマ人たちでした。ローマ人にとって「善い」とは、強くて優秀なことだったとされています。しかし、大衆が力を持つようになってからは、それが変わってきました。大衆によって、報復しない無力さが「善さ」に、臆病さが「謙虚さ」に変えられたとされています。そうした価値観を持っていたのは「キリスト教徒」でした。また、キリスト教には「同情」「平等」「博愛」と言う価値観もあります。ニーチェは、それを弱者が自分を正当化するために復讐心から生み出したものだとしました。
【キリスト教】
古代ローマ時代、大衆が力をつけた背景には、キリスト教の影響があったとされています。キリスト教とは、もともとユダヤ教から派生したものです。ローマ帝国時代、異民族のユダヤ人たちは、支配される側の人間でした。そのユダヤ人たちが信仰していたのがユダヤ教です。ニーチェは、そのユダヤ人たちが、ある種のルサンチマンを持っていたと考えました。キリスト教では、柔和で善良な弱者だけが、神によって救われると信じられています。しかし、ニーチェは、そうした考え方が、ルサンチマンから生まれたのではないかとしました。キリストでは、神に従う善良で従順な人間が「善い」とされます。しかし、それは支配者側のローマ人に対する反対運動にすぎないとしとしました。
【奴隷道徳】
キリスト教は、一般平民の道徳です。そのため、貴族的ではありません。キリスト教では、人間は、神の前で全て平等だとされています。しかし、現実社会の人間は平等ではありませんでした。その矛盾を解決するために作り出されたのが、精神的なもう一つの世界である「天国」だとされています。キリスト教は、肉体「生命」的なものより、精神的なものを重視しました。そのため、現世に対して否定的だとされています。キリスト教徒は、たとえ、現世では支配されていても、精神の世界では優位に立とうとしました。その精神の世界では、民衆が勝利をおさめたとされています。ニーチェは、それを道徳上の一揆と名づけました。その結果生まれのが、キリスト教や民主主義だとされています。
また、キリスト教は、きわめて禁欲的です。そのため、人間の本能的な部分に否定的だとされています。ニーチェは、それを反自然的だとしました。そもそも、自然というものは、道徳とは関係がありません。ニーチェは、人間の道徳化というのは、健全な生命に対する病気のようなものだと考えました。
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