大徳寺には一休の庭や襖絵といった文化財を持つ塔頭がたくさんあります。ほとんどが観光目的では常時公開されていませんが、全部で24ある塔頭の内、4カ寺だけは常時公開されています。龍源院・瑞峯院・大仙院と高桐院(2019年3月まで修理で拝観休止)です。
龍源院(りょうげんいん)は、趣の異なる5つの庭と静かに向き合えることが最大の魅力です。「洛北の苔寺」とも呼ばれるように、緑の絨毯が美しく維持されています。
京都の寺では数少ない庭の写真撮影が可能な寺でもあります。三脚禁止などマナーを守ってお楽しみください。
龍吟庭
大徳寺には「龍」の字が付く塔頭が龍源院・龍光院・龍泉庵・竜翔寺と4つありますが、竜翔寺以外は「りょう」と読みます。使い分けられると生粋の京都人と間違われるかもしれません。なお本当の京都人でも使い分けられない人はたくさんいます。
龍源院は、応仁の乱が終わって大徳寺伽藍や京都の街が少しずつ復興し始めていた1502(文亀2)年頃、開かれました。戦国時代真っただ中ですが、抗争の舞台は地方に移っており、毛利元就ら歴史に名を残す戦国大名たちが生き残るために奮闘していた時代です。龍源院の開基となったのも、能登・畠山義元や豊後・大友義長ら地方の戦国大名です。
方丈は、表門や唐門と共に重要文化財に指定されており、創建当初の頃の建築です。大徳寺の中では、大仙院と並んで最も古い方丈です。500年の時を経た建物の風合いは、四方の趣の異なる庭とそれぞれマッチしています。方丈の四方を庭が取り巻いていること自体がとても珍しく、ここにしかない方丈の空間の中で、庭を鑑賞できます。
方丈南側の一枝坦(いっしだん)はデザインが斬新です。この庭にはかつて樹齢700年のサザンカの木があり苔で覆われていましたが、1980年に枯死したことから現在の石庭に作庭しなおされました。楕円形の亀島が、大海原に浮かぶ船のようです。どのように進むのかを観る者に考えさせているのでしょうか。
方丈北側の龍吟庭(りょうぎんてい)は、室町時代に足利将軍家に仕えた芸術プロデューサー・相阿弥の作庭とも伝えられています。苔に覆われて青々とした大海原には何もなく、一枝坦以上にシンプルです。庭を囲む塀の黄色い壁が苔の緑とマッチしており、温かい印象を受ける空間です。ゆっくりと自分を見つめ直すよう導かれている気がします。
東滴壺
方丈東側の東滴壺(とうてきこ)は1960(昭和35)年に作庭された現代坪庭の名作です。廊下を歩いていると自然に目が向くような不思議なオーラを感じます。他の方の妨げにならないよう、廊下の隅に寄ってしばし眺めてみてください。
滹沱底
方丈とは別建物の書院前の滹沱底(こだてい)は、渦を巻いた不思議な砂紋が特徴的です。コンパクトな庭ですが、黄色い壁と白砂がとても上質な雰囲気を醸し出しています。大切なお客様をもてなす書院の前にふさわしい庭です。
大徳寺には確かに苔が多い
常時公開の龍源院では、庭の魅力をいつでも楽しめます。大徳寺では秋に、普段非公開の塔頭が少なからず特別公開されます。大徳寺ワールドをたっぷりとお楽しみください。
こんなところがあります。
ここにしかない「美」があります。
大徳寺の魅力は塔頭あってこそ
大徳寺 龍源院
【京都市観光協会サイト】
原則休館日:4/19
入館(拝観)受付時間:9:00~16:20
※公開されていない仏像や建物・美術品があります。
※靴を脱いで室内を見学します。床汚れ防止のため、裸足の場合は靴下を持参しましょう。
おすすめ交通機関:
京都市バス「大徳寺前」バス停下車、徒歩5分
JR京都駅から一般的なルートを利用した平常時の所要時間の目安:30分
京都駅→地下鉄烏丸線→北大路駅→北大路バスターミナル「青」のりば→市バス1/101/102/204/205/206/北8系統→大徳寺前
※京都駅から直行するバスもありますが、地下鉄とバスを乗り継ぐ方が、時間が早くて正確です。
※この施設には有料の駐車場があります。
※駐車場不足により、クルマでの訪問は非現実的です。
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