京都・鹿ケ谷(ししがたに)の泉屋博古館(せんおくはっこかん)で「仏教美術の名宝」展が始まっています。住友コレクションの仏教美術に加え、根津美術館や大和文華館など他館所蔵品の鍍金仏を中心に銘品が揃いました。
泉屋博古館が所蔵する国宝2点の内の一つで、鏡に彫られた線刻の仏像がとても美しい「線刻仏諸尊鏡像」や、2017年に7cの朝鮮半島での制作と鑑定されて話題を呼んだ、京都・八瀬・妙傳寺(みょうでんじ)の微笑が美しい菩薩半跏思惟像も出展されます。
像高の小さい錬金や金銅仏が中心ですが、インド・中国・朝鮮半島・日本と製作地は多岐に渡っています。仏教美術が東に進むことで変化していった表現の個性を興味深く学べる展覧会です。
館の中庭から見える大文字山(右上の山)
展覧会は仏像の始まりであるガンダーラの石仏から始まります。続いて中国の仏像が現存する最古の時代である五胡十六国・南北朝時代(4-6c)の。まばゆい輝きを発する錬金仏が目に入ってきます。
【泉屋博古館 公式サイトの画像】 鍍金弥勒仏立像(重文)
鍍金弥勒仏立像(ときんみろくぶつりゅうぞう)は金メッキでできています。光背が仏の背中に付けられており、大きなマントを背負っているように見えるのが特徴的です。両脚はやや開いてお立ち台ような台の上に堂々と建っており、お顔も端正です。スーパーマンがほのぼのとポーズを決めているように見え、愛着を持てる作品です。
【根津美術館 公式サイトの画像】 釈迦多宝二仏並坐像(重文)
「しゃかたほうにぶつへびょうざぞう」もお立ち台のような台の上に造形されていますが、こちらは座っています。釈迦と多方仏の二人が並んでいて安定感がある一方、お顔の表情はほのぼのと見えます。北魏時代の仏像の特徴です。
【毎日新聞 公式サイトの画像】 妙傳寺蔵 鍍金菩薩半跏思惟像
半跏思惟像は妙傳寺に古くから伝わっていましたが、永らく江戸時代に日本で造られた仏像と考えられていました。金属の成分分析と作風が決め手になったようですが、スリムなボディラインなど確かに同時代の韓国にある仏像や日本の飛鳥仏とも作風が似ています。
独立ケース展示ですので360度鑑賞できます。後ろから見た方のラインがなでやかです。鑑定結果への信頼性が高まれば相当の文化財指定が行われる銘品と感じます。
【泉屋博古館 公式サイトの画像】 線刻仏諸尊鏡像(国宝)
展覧順の最後には、今度はプラチナのような輝きを発する鏡があります。鏡面の保存状態が良く、全く濁りや割れはありません。7体の仏様が宙に浮かんでいるように見え、とても幻想的です。鏡だと思って裏返すと仏様が宙に浮かんでいるように現れる、初めて見た人はさぞかし驚いたことでしょう。裏面の装飾もとても繊細で気品の高さを感じさせます。平安時代作の銘品中の銘品です。
蹴上駅近くのトンネル「ねじりまんぼ」から南禅寺へ向かう道
泉屋博古館は南禅寺から北へ、野村美術館、永観堂と続く鹿ケ谷通り沿いにあります。東山山麓の緑豊かな道で、車の通行は少なく、ゆっくり散策するには最適です。この道を北へ歩けば、地下鉄の蹴上駅から泉屋博古館まで20分ほどです。私はバスに乗らず、ほとんどこの道を歩いています。いつ訪れても空気が美味しい道です。
こんなところがあります。
ここにしかない「美」があります。
奥が深い仏教美術を今一度整理してみましょう
泉屋博古館(京都)
特別展「仏教美術の名宝」
【美術館による展覧会サイト】https://www.sen-oku.or.jp/kyoto/program/
主催:泉屋博古館、日本経済新聞社、京都新聞
会期:2018年9月8日(土)~10月14日(日)
原則休館日:月曜日
入館(拝観)受付時間:10:00~16:30
※この展覧会は、今後の他会場への巡回はありません。
◆マナー教室◆
◇室内を見学する場合、持ち物が無意識に壁や置物に触れ傷つけてしまいます。
手荷物は預ける、リュックは前に抱える、レンズの大きい一眼レフカメラは持ち込まない、など配慮しましょう。
◆おすすめ交通機関◆
京都市バス「宮ノ前町」バス停下車徒歩1分、「東天王町」バス停下車徒歩3分
地下鉄東西線「蹴上」駅1番出口からから徒歩20分
JR京都駅から一般的なルートを利用した平常時の所要時間の目安:30~40分
京都駅烏丸口D1バスのりば→市バス100系統→宮ノ前町
【公式サイト】 アクセス案内
※休日の午前中を中心に、京都駅ではバスが満員になって乗り過ごす場合があります。
※休日の夕方を中心に、渋滞と満員乗り過ごしで、バスは平常時の倍以上時間がかかる場合があります。
※この施設には無料の駐車場があります。
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