川や海峡の両岸を結ぶ渡し船(わたしぶね、とせん)は、橋を利用するのが当たり前の現代ではかえって新鮮味があります。地域住民の生活の足として今も全国で数多く運行されており、大阪市では8本もの航路が現役です。
巨大水族館の海遊館のある天保山(てんぽうざん)とUSJのある桜島(さくらじま)を結ぶ「天保山の渡し」は、両岸に著名観光スポットがあることから観光客の利用が増えています。ほぼ水面の高さから見る天保山の観覧車やUSJのアトラクションは実にすがすがしい眺めです。
大阪市営で「橋の代わり」という建前で運行されているため無料です。わずか3分ほどのクルーズですが、とても風情を感じる3分間を過ごせます。
桜島側乗り場、正面の橋は阪神高速・天保山大橋
大阪市の中でも海沿いに位置する港区や大正区は、大きな川に囲まれており、大型船が頻繁に航行します。そのため日常生活に便利な低い橋を架けられず、無料の渡し船が8航路も運行されています。バイクとクルマはNGですが、自転車はOKです。
航路の性格上、近隣の住民や通勤・通学者以外にはほとんど知られていません。そんな中でも天保山の航路は、著名な観光地が近いこともあり、観光客の利用が増えています。自転車で街ブラを楽しんでいる人やUSJのスタッフと思われる外国人の利用が目立ちます。
航路となっている大きな水路は安治川の河口です。安治川は大阪の都心部を流れ、蔵屋敷が立ち並んでいた堂島川・土佐堀川と海を直線でつなぐために、江戸時代に大きく開削された川です。江戸時代から現代まで大型船の航行があり、乗り場の真上を横切る阪神高速道路の天保山大橋は水面からの高さが52mもあります。
天保山の観覧車と海遊館(右端の建物)
高速道路の巨大な橋、巨大な観覧車、USJと現代の人工建造物が青空に綺麗に映える姿を、水面の高さから眺めることができます。夜間にはもっと美しい光のアートを見せてくれるでしょう。これがこの渡し船の最大の魅力です。窓がなく、直接風を感じることができる旅はとても爽快です。しかも海の上です。海遊館やUSJの建物に徐々に近づいて大きく見えるようになると、とてもワクワクします。
船の中は大きな土間のようになっており、歩行者と自転車が自由に乗り込んでいます。揺れはほとんど感じません。あまりに水面が近いため少し波がある時に壁に手をついて海を眺めていると水しぶきがかかるかもしれません。それほど水面との距離が近いことも魅力の一つです。
天保山の渡しとほぼ同じ航路を民営の「キャプテンライン」という会社が10分の船旅で結んでいます。こちらの乗り場は海遊館とUSJにより近いので便利ですが、運賃が700円で1時間に1~2本の運行です。
【公式サイト】 キャプテンライン
天保山の渡しの乗り場は、海遊館から徒歩10分、USJ入口からは徒歩25分ほどかかります。USJ入口に行くにはJRゆめ咲線を1駅だけ利用した方がよいかもしれません。地域住民にしろ観光客にしろ自転車の人が目立つのも、徒歩での距離を考えているのでしょう。
快適さでは「キャプテンライン」、風情を求めるなら、自転車の旅なら「天保山の渡し」です。どちらの旅も水辺が魅力の大阪の街を楽しめます。
こんなところがあるのです。
ここにしかない「美」があるのです。
水辺を楽しめる空間に変えるにはどうすればよいか?
天保山渡船場(利用案内と運行ダイヤ)
【大阪市公式サイト】http://www.city.osaka.lg.jp/kensetsu/page/0000011249.html
運行時間:6:30~21:30、毎時00,30分に天保山を出発し、桜島到着後すぐ折り返し運行(朝夕ラッシュ時は増発)
運賃:無料
※運航ダイヤは天候に左右される場合があります。
おすすめ交通機関:
◆天保山側乗り場
大阪メトロ「大阪港」駅下車、2番出口から徒歩10分
JR大阪駅から一般的なルートを利用した平常時の所要時間の目安:35分
大阪駅(梅田駅)→大阪メトロ御堂筋線→本町駅→大阪メトロ中央線→大阪港駅
◆桜島側乗り場
JRゆめ咲線「桜島駅」下車、徒歩10分
JR大阪駅から一般的なルートを利用した平常時の所要時間の目安:30分
大阪駅→JR大阪環状線→西九条駅→JRゆめ咲線→桜島駅
※両施設に駐車場はありません。
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