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春日若宮おん祭 お渡り式&お旅所祭|美の五色 ~わざわざ行く価値あり

2018年12月04日 | 祭・行事・季節の花

奈良の年の瀬の一大イベント・春日若宮おん祭。前回に引き続き、お渡り式(おわたりしき)とお旅所祭(おたびしょさい)の様子をレポートします。12月17日の12:00から始まるお渡り式(おわたりしき)は時代装束が華やかな行列で、沿道は見物客で埋め尽くされます。続いて行われるお旅所祭では、田楽や舞楽と言った日本の伝統芸能を鑑賞することができます。

  • 京都の葵祭・時代祭と並ぶ、日本有数の時代装束の行列
  • ただ行列するだけでなく、田楽や競馬などのイベントが行列途中で行われる
  • お旅所で奉納される伝統芸能は、能・狂言より古い日本古来の芸能のフルコース
  • 一日で日本の古典芸能をあまねく鑑賞することができる


春日若宮おん祭は、何といっても日本の古典芸能を味わえることが祭見物の最大の目玉です。京都で葵祭・時代祭を見られた方は、若宮おん祭の「芸能」の素晴らしさにきっと納得されることと思います。


お旅所に置かれた鼉太鼓(だだいこ)

【春日大社公式サイト】 お渡り式のルートマップ、17日の日程

お渡り式は奈良県庁前を12:00にスタートします。登大路を下ってJR奈良駅に向かい、三条通からゴールのお旅所まで進みます。14:30までに全行列がお旅所に到着して終了します。行列とルートの長さは京都の葵祭・時代祭に比べて短く、先頭から最後までの通過に1時間もかかりません。

お渡り式は、芸能集団や武士ら、祭に参加する者がお旅所の神に参拝する行列です。山鉾や牛車といった乗り物はほとんど登場しませんが、平安時代から江戸時代にかけての時代装束や伝統芸能の装束が登場します。趣に富んだ行列を楽しむことができます。


野太刀

先頭は若宮おん祭を始めた関白・藤原忠通の使いである日使(ひのつかい)です。関白の格式を示す漆黒の束帯をまとって白馬にまたがる日使は、先頭を行くにふさわしい優雅さと威厳にがあふれています。例年、関西の大企業のトップが務める大役です。

行列は、以下の順で続きます。

  1. 巫女(みこ)
  2. 細男・相撲(せいのお・すもう):舞と相撲を奉納する
  3. 猿楽(さるがく):能楽を金春座が奉納
  4. 田楽(でんがく)
  5. 馬長児(ばちょうのちご):祭の主催者だった興福寺が出した稚児、日使と並ぶ行列の主役
  6. 競馬(けいば):一の鳥居とお旅所間で二頭が競争し、舞楽の順番を決める
  7. 流鏑馬(やぶさめ):競馬の後、三人の稚児が行う
  8. 将馬(いさせうま):神前に献上する白馬
  9. 野太刀(のだち):5.5mの大太刀を筆頭に太刀や槍が行列
  10. 大和士(やまとざむらい):興福寺に代わっておん祭を主宰するようになった地侍の行列
  11. 大名行列(だいみょうぎょうれつ):郡山藩などが江戸時代から行列に加わる


大名行列は、持ち物の箱や槍を振り上げる奴振り(やっこふり)を随所で行っており、見物客には大人気です。


競馬のスタート前

行列の途中、三条通りに面する興福寺の南大門跡地で、12:50頃から南大門交名の儀(なんだいもんきょうみょうのぎ)が行われます。行列の参加者が名を名乗りながら興福寺に敬意を表する古式ゆかしい儀式です。

13:00頃から一の鳥居そばで松の下式(まつのしたしき)が行われます。細男・猿楽・田楽はここで芸を披露しないとお旅所に入れないと定められており、順に1時間ほどかけて披露します。お旅所祭より先に鑑賞できるため人気で、参道はかなりの人手になります。

同じ頃、参道では競馬が行われます。間近を馬が駆け抜ける姿がとても迫力があり、こちらも人気です。お渡り式終了直前の14:30頃には稚児流鏑馬(ちごやぶさめ)が行われます。男の子が大人に支えられながら弓を放つ様子は愛くるしくもあります。

14:30頃に全行列がお旅所に到着し、お渡り式は終了します。行列途中にイベントがとてもたくさんあることがお分かりいただけると思います。


お旅所

ここからが若宮おん祭のメインイベントで、芸能を神に奉納するお旅所祭になります。お旅所には高さ3mを超える鼉太鼓(だだいこ)がペアで置かれています。中世を強く感じさせるデザインの鼉太鼓は、若宮おん祭のシンボル的存在です。

お旅所祭は14:30に鼉太鼓が打ち鳴らされて始まります。神職による儀式や行列参加者の拝礼が続いた後、15:30頃から以下の順で芸能が始まります。最初の神楽が終わるとかがり火に火が灯され、一層厳粛な雰囲気になります。

  1. 神楽(かぐら):美しい巫女が歌に合わせて舞う
  2. 東遊(あずまあそび):白装束の男の子が舞う、子供の舞は珍しい
  3. 田楽(でんがく):赤装束の男性がダイナミックに舞う
  4. 細男(せいのお):白装束で顔を隠して優雅に舞う、とても神秘的
  5. 神楽式(かぐらしき):新年や大切な行事で披露された能の演目・翁(おきな)の略式
  6. 和舞(やまとまい):奈良で古くから行われてきた風俗舞
  7. 舞楽(ぶがく):赤と緑の装束が交互に10曲を舞うロングラン



東遊

中世に行われていた日本の伝統芸能のフルコースです。現在目にすることができる能や狂言よりもさらに古い芸能であることがわかります。能や狂言の原始の姿はこうだったと思えるほどです。いにしえの伝統を見事に継承しています。それらをまとめて鑑賞できる機会はここにしかありません。

【春日大社公式サイトの画像】 舞楽

闇夜に包まれフィナーレに行われる舞楽は幻想的で圧巻です。舞楽は、飛鳥時代から朝鮮半島や中国大陸から伝えられた音楽である雅楽(ががく)に舞を加えたもので、大陸の文化が島国・日本でアレンジされた見事な芸能です。今に伝わる最古の芸能でもあります。

舞楽は装束の色が異なる二つのグループが交互に舞います。赤い装束のグループは「左舞」と呼ばれ、中国や東南アジアに起源をもつと考えられる演目を、一方緑の装束のグループは「右舞」と呼ばれ、朝鮮半島や沿海州に起源をもつと考えられる演目を担当します。仮面をつけて舞うため、実に神秘的です。


12/17の猿沢の池の周囲は屋台でぎっしり

これだけの伝統芸能を参道であれば自由に無料で鑑賞できますが、やはり写真撮影や見やすさには十分な環境ではありません。そのため松の下やお旅所など、ベストビュースポット三か所に有料観覧席が設けられています。写真撮影や伝芸能のじっくりした鑑賞にはこちらをおすすめします。

【奈良市観光センター公式サイト】 春日若宮おん祭特別桟敷(さじき)席

こんなところがあります。
ここにしかない「空間」があります。



奈良にある平安美術の宝庫のヒミツ

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春日大社
若宮おん祭 お旅所祭
【神社による祭公式サイト】

会場:春日大社表参道(三条通)一の鳥居付近 お旅所
会期:中心神事は毎年12月15日~18日
   お旅所祭は毎年12月17日14:30~22:30

※小雨は決行、荒天は中止の場合があります。
※進行時間は当日の神事の進行や天候に左右される場合があります。

春日大社
【公式サイト】http://www.kasugataisha.or.jp/



◆おすすめ交通機関◆

近鉄奈良線「近鉄奈良」駅下車、東改札口C出口からお旅所(一の鳥居付近)まで徒歩15分
JR大阪駅から一般的なルートを利用した平常時の所要時間の目安:1時間15分
JR大阪駅→JR環状線→鶴橋駅→近鉄奈良線→近鉄奈良駅

【公式サイト】 アクセス案内

※この施設には駐車場はありません。
※道路の狭さ、渋滞と駐車場不足により、健常者のクルマによる訪問は非現実的です。


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