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庭園日本一の足立美術館は進化し続けている

2019年02月02日 | 美術館・展覧会

庭園と横山大観のコレクションで名高い、島根県の足立(あだち)美術館を訪れました。新年早々に公式サイト上で「アメリカの日本庭園専門誌で16年連続日本一」と紹介されていたように、欧米人観光客の姿が確かに目立ちます。

  • 庭の大きさに加え、完璧に手入れが行き届いた状態に驚かされる
  • 大観以外にも竹内栖鳳ら近代日本画コレクションの幅は広く、所蔵品だけで展覧会が回せる
  • 日本の地方にある美術館としては最も成功している一つ、来館者対応がとても上手
  • 庭が綺麗すぎて逆に風情がないという声もある、時間の経過によってどう風情が出るかが楽しみ


今や来館者数が年間60万人を超える日本でも有数の美術館になっています。決して観光客が多いとは言えない山陰という不利な立地を考えると、驚異的な数字です。


枯山水庭をのぞむ

足立美術館は1970(昭和45)年、大阪で繊維・不動産業で財を成した地元出身の実業家・足立全康(あだちぜんこう)によって創設されました。5万坪に及ぶ庭園と美術館の敷地は、足立全康の実家があったところです。

足立全康は開館から亡くなるまでの20年間、庭づくりとコレクションの充実に情熱を注ぎました。完璧なまでの庭の手入れは「庭園もまた一幅の絵画である」という足立全康の信念に基づくものです。


足立全康の銅像

美術館では来館者への情報提供としてとても面白い取り組みをしています。庭園のライブカメラ映像をYou Tubeで流しており、四季の植生の様子を確認することができます。



庭園は美術館の展示室を移動する間の随所から鑑賞することができます。3か所の喫茶室・茶室が設けられており、格別の目の保養ができる環境が整えられています。

庭は表情の異なる4通りが造られていることも人気の秘密です。庭園全体を回遊することはできませんが、建物の近くの一部は散策することができます。「生の掛軸」と名付けられた、額縁のように壁に開けられた空間は絶好の写真撮影スポットになります。京都の禅寺でもよく見かける仕掛けですが、多くは写真撮影ができません。


生の掛軸

【美術館公式サイトの画像】 橋本関雪「唐犬図」
【美術館公式サイトの画像】 上村松園「娘深雪」

本館2Fが主な展示室で、四季毎の特別展と共に、横山大観作品専用の「大観室」もあり、幅の広い近代日本がコレクションを鑑賞できます。昨年2018年に京都と東京の国立近代美術館で開催された「横山大観展」には、代表作「紅葉」をはじめとする多くの作品が足立美術館から貸し出されていました。

大展示室では、2018年12月~2019年2月は、橋本関雪のコレクションが大々的に展示されています。「唐犬図」は舶来の犬を描いた作品で、関雪らしくどこか異国情緒が漂います。赤いボタンが構図を見事に引き締めている名品です。

小展示室では複数の近代日本画家の作品が展示されています。上村松園の「娘深雪」は少女が見せた一瞬の可憐な表情をとらえています。松園の代表作の一つと言えるでしょう。

本館1Fには木彫・工芸・動画の展示もあります。入口横の陶芸館では河井寛次郎と北大路魯山人の作品が鑑賞できます。新館では現代日本画家の作品を展示しています。


借景に亀鶴の滝

【美術館公式サイト】 ミュージアムショップ

本館と新館それぞれにミュージアムショップが設けられており、所蔵品や庭のポストカードのラインナップがとても充実しています。お菓子を始め、オリジナルグッズが豊富で見ているだけでも楽しめるほどです。

5万坪もある庭をここまで完璧に維持するのは巨額の費用がかかっていると推察されます。日本人では整いすぎていて落ち着かないと感じる人もいます。一方世界的には、庭や建物、陶磁器などの立体物には幾何学的な美しさが好まれます。

京都の庭に風情があると感じるのは、歴史の長さが生み出している部分もあります。その意味で足立美術館の庭園もこれから時間を積み重ねていくことになります。どのような風情が出てくるのかが楽しみです。

2020年には北大路魯山人専用の展示館もできるようです。足立美術館は常に進化し続けていると感じます。


入口

こんなところがあります。
ここにしかない「空間」があります。



ライフネット生命創業者が語る、日本の昔の大金持ちの豪放な生き方

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足立美術館
冬季特別展/2018
生誕135年 孤高の画家 橋本関雪
【美術館による展覧会公式サイト】

会期:2018年12月1日(土)~2019年2月28日(木)
原則休館日:本館なし、新館1/16(展示替え期間、年5回程度)
入館(拝観)受付時間:9:00~16:45(4-9月は~17:15)

※会期中に展示作品の入れ替えは原則ありません。
※この展覧会は、今後他会場への巡回はありません。
※この美術館は、コレクションを年4回の特別展で順次展示しています。



◆おすすめ交通機関◆

JR山陰線「安来」駅下車、駅構内バスターミナルから無料シャトルバスで20分
山陰道「安来」ICから車で10分

JR安来駅まで
JR山陰線普通で、松江から20分、米子から10分
JR伯備線特急「やくも」で、岡山から2時間20分
岡山まで
山陽新幹線「のぞみ」で、新大阪から45分、東京から3時間25分、博多から1時間45分

【公式サイト】 アクセス案内
【公式サイト】 無料シャトルバス

※鉄道やバスは本数が少ないため、事前にダイヤを確認の上、利用されることを強くおすすめします。
※この施設には無料の駐車場があります。
※現地付近のタクシー利用は事前予約をおすすめします。


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