日本男道記

ある日本男子の生き様

梅若礼三郎

2009年09月20日 | 私の好きな落語
【まくら】
七代目土橋亭里う馬の高座の記憶と円喬の速記を元に、六代目三遊亭圓生が1957年(昭和32年)にまとめ上げた。5、6回を掛ける連続物であったが、2回目以降はほとんどがそれまでの噺の粗筋であることから、無駄を省いて一席完結物としたのは圓生の手柄である。

【あらすじ】
梅若礼三郎は力のある能役者であったが、ある失敗から太く短く生きようと泥棒になってしまった。決して貧乏人をいじめるような事はせず、大名、大店から盗み困った人々に分け与え、これで助かった人が何人も居た。

 神田鍋町家主万蔵店の長屋に小間物屋利兵衛が住んでいた。人物は宜しいのですが、3年越しで腰が抜けて寝たきりであった。生活は苦しかったが女房おかのは貞女で、手内職をし、夜は鎌倉河岸の街頭に立って金銭を恵んで貰っていた。11月の寒い晩、立派な身なりの御武家様にずっしりと手応えのある金子を授かった。帰って、改めると懐紙の中に小粒で9両2分が入っていた。夢のような事であったが、誤解を恐れ亭主には黙っていた。1両だけは生活の為と別にし、残りを仏壇の引出にしまった。

 それを隣に住む博奕打ち魚屋栄吉、32歳になるが魚屋は表向きで真からの博打打ちで遊び人であった。バクチですってんてんになった栄吉は長屋の薄壁からこれを見ていて、寝静まったところを見計らって、仏壇から8両2分を盗み出した。

 翌朝、朝湯に入り、質物を請けだして茅町で雪駄を買い、天王橋から駕籠で大門口に乗り付け祝儀に威勢よく2朱渡し、大門をくぐりひょいと左に曲がり羅生門河岸の馴染みの吉原池田屋に入った。
 若い衆の喜助はまだ玄関先で掃除をしていたが、1分の小遣いを貰ってビックリしている。2朱の女郎を買って1分の祝儀は驚くのも無理はない。おばさんや女郎花岡にも1分の祝儀をきって、おけらの栄吉もまんざらではない。

 翌朝、勘定書1両3分2朱のところ、盗んだ金だから気前よく2両渡し釣りはあげるという。
 主人に、使い方が派手すぎるとご注進に及び、その現金を改めると山形に三の刻印がある盗まれた金であった。
 揚屋町お加役勘兵衛さんに来てもらい相談し、花岡女郎に手はずを決めさせ見世を出た所で御用という寸法にした。
 気持ちよく見世を出た所で、お召し捕りと相成りました。              
                                                   <序>

 田町の番屋に連れて行き、加役の岩倉宗左衛門の取り調べとなった。金の出所を聞き出されると深川で博打で儲けたと言い張ったが、聞き入れられず絞めてやろうかと言うところ、勘兵衛に十手でしごかれると白状し始めた。「盗んだのではなく、隣の利兵衛の家から(阿弥陀様に断って)持ってきた。」と。
 だとすると、利兵衛が持っていた。・・・と言う事は「利兵衛は病人に見せかけて、夜仕事に出ているのであろう。逃げられるとマズイから即刻捕縛をしてこい」。

 女房おかのは病人が寝ている間にお湯屋に出掛けた。その留守にお役人が踏み込んで「利兵衛、神妙にいたせ!」。
 長屋中大騒動。月番が聞きに行ったが、ラチが明かず、家守万蔵が立ち会う事になった。「利兵衛は3年来の寝たきりで、誰が見ても病人です」。おかのさんを呼び戻し聞くと「夫には内緒で鎌倉河岸でわずかながらの銭を恵んで貰っていたが、立派な御武家さんが『ウソで涙は出ない』と言って、これだけの金を恵んでくれた。それを栄吉さんが盗んだなんて」。「その金は盗まれたもので、恵んでくれた武士の風体はいか様か」。言おうとしたが一時でも情けをかけてくれた恩人、自分の口でお縄が掛かったら恩を仇で返す事になるからと心に誓い「夜の事で歳も人相も良く分かりません」。「立派な御武家だと先ほど言ったが・・・」、「分かりませんものは分かりません」、「この者を取り調べねばならぬ。縄を打て」。と役所に連行されてしまった。
 長屋連中も心配して、神仏にすがるより他無いからと、両国垢離場(こりば)に出掛ける事になった。
                                                   <中>

 両国垢離場に着いたが、12月の末であったから、水に入っただけでも寒く、身体の芯まで冷え切ってしまった。居酒屋両国という有名な縄ノレンに入って『サイ鍋』で暖まった。
 そこにクズ屋さんの一行が入ってきた。四方山話をしている話の中に「正直にしていれば『天道人を殺さず』だよ。」と言うのを聞きつけて「そんな事はない。貞女が病人の亭主を看病し、正直で通っている人にお縄を付けて引っ張って行くなんてどうゆう訳だ。」、「その話を聞かせてください」、「聞きたければ、一杯出しな」。
 一通りの話を言って聞かせていた。
 衝立の向こうで二六・七の色白のイイ男がチビチビとやりながら聞いていたが、「飲ませるからこちらに来て、話を聞かせてくださいよ」。女の風体を聞き出して、納得した様な顔で「その金をやったのはこの俺だよ」、「冗談でしょ。相手は御武家さんだと言ってました」、「私は役者だから、何にでも化けられる」、「ほぉ」、「傷のない金をやるから、飲み直そう」。と言う事で次の店に出掛けた。
 利兵衛には20両、この男には5両やって、これからすっかり支度をして、北の町奉行・島田出雲守様に訴え出て、貞女おかのを助け出すという梅若礼三郎です。

出典: 落語の舞台を歩く

【オチ・サゲ】
落ちナシ

【語句豆辞典】
【雪駄(せった)】竹皮草履の裏に牛皮を張りつけたもの。千利休の創意という。
【家守(やもり)】大家。長屋を守る管理人。

【この噺を得意とした落語家】
・六代目 三遊亭圓生

 




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2 コメント

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こう言うのもあるんだなぁ。 (地理佐渡..)
2009-09-20 07:38:15
おはようございます。

あらすじをご紹介いただいて、
そうかぁ、落語にもこんな感
じのものがあるんだなあと
見入りました。

さて、そちらはどんな天気でしょう。
当方は昨日仕事を少し早く切り上げ、
長岡へ来ています。今日はチト大き
な会に呼ばれていまして、そのために
長岡へ。雲はありますが、日差しもあっ
たりして気持ちの良い朝です。
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Re:こう言うのもあるんだなぁ。 (日本男道記)
2009-09-20 08:33:48
おはようございます。

当地も昨日から快晴の素晴らしい天気です。
日中はともかくも、朝晩はすっかり秋の感じです。

チト大きな大会、何の大会でしょうか?

我が家では、これから先祖供養の法事です。
子供たちも帰省しています。
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