http://news.goo.ne.jp/article/sankei/entertainment/snk20131002552.html
2013年10月2日(水)17:23
産経新聞
全文転載
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宮藤官九郎さん「あまちゃん」への思い 自分の中で「終わっていない」
9月28日の放送で完結したNHK連続テレビ小説「あまちゃん」。
東日本大震災に見舞われた東北・岩手の「北三陸」を主な舞台にした物語は幅広い支持を集め、
社会現象にもなった。
原作と脚本を担当した宮藤官九郎さん(43)に、ドラマに込めた思いを聞いた。(三品貴志)
「(震災で)登場人物の誰かが亡くなるという描き方もあったと思う。
でも、やらなかった。スタッフとさんざん話し合って、悩んだ末の結論。
これ以外ないと思ったけれど、不安でした」
9月初旬の第23週から、平成23年に起きた東日本大震災と、その後を描いた。
視聴者もやがて訪れる「悲劇」を知り、予感していた展開だけに、重圧も大きかったようだ。
震災当日、東京で翌日のライブの準備をしていた主人公、アキ(能年玲奈)らは、
被害を伝えるテレビを呆然(ぼうぜん)と見つめる。一方、アキの親友、ユイ(橋本愛)は
「北鉄」のトンネル内で被災。
その外に出た瞬間、故郷の惨状を目の当たりにする…。
ただ、実際の津波映像や直接的な表現はほとんど登場せず、
自然の猛威は模型を使うなど、あくまで間接的に表現した。
「日本中の人がそれぞれの立場で体験した“大事件”だからこそ、みんなが納得する、
総括するような描き方はできないと諦めていた。
ただ、自分が覚えているあの時の『気分』を、正直に描こうと思ったんです」
◆希望描くために
宮藤さんが注力したのは、圧倒的な現実を一度にのみ込めない個人の戸惑いや心の揺らぎだった。
震災を機に結婚を決めた女優の鈴鹿ひろ美(薬師丸ひろ子)に、アキの母、春子(小泉今日子)は
「何でもかんでも(震災に結びつけて)」と毒づく。
北三陸に戻ったアキは、被災地で心の傷を負ったユイとすれ違う-。
海岸にがれきを運び直して撮影したり、「北鉄」のモデルとなった三陸鉄道が震災5日後に
一部運転を再開したことを再現したりと、リアルさも追求した。
「希望や、人々がどう立ち上がっていくかを描きたかった。
(震災描写は)正解だとは思っていないけれど、
今はあれでよかったと思っています」と晴れ晴れとした表情を見せる。
◆みんなが「主役」
放送前の「サラッと始まり、サラッと終わると思っていた」という予想とは裏腹に、
ドラマ人気は拡大し、アキたちが驚いた時に発する「じぇじぇじぇ」は流行語にもなった。
インターネットでは音楽や伏線、パロディーといった小ネタ探しや考察が数多く共有された。
小ネタのほとんどは脚本執筆前、スタッフとともに北三陸のモデルとなった岩手県久慈市を訪れた体験を
“原点”として広がっていったという。
「『じぇ』をはじめ、北鉄も、南部もぐりも、まめぶも、琥珀(こはく)も、その時にみんなで面白がったもの。
そこからエピソードや人物のカラーが広がっていった。
(小ネタが)功を奏したとすれば、スタッフが崩れそうなバランスをとってくれたからだと思う」
宮藤さんなりのアイドル観も込めた。
「自分にとってのアイドルがいれば元気になるし、頑張ろうと思う。地域へのエールにもなる。
でも、狭い『業界もの』にはしたくなかったから、アイドルを描くための壮大な前振りとして、海女があった」と明かす。
宮藤さんは能年さんを「アキを演じるために生まれてきたようだ」と激賞。
ほかの出演者についても「自分がワキ(脇役)だと思っている人はいない。
みんな主役として生きている。
役者さんがそういう風に演じてくれたから、僕の発想にも返ってきた」とたたえる。
◆あまロス深刻化
放送中、東北の知人や視聴者から作品を喜ぶ声が数多く寄せられたという。
「東北の人たちがゲラゲラ笑いながら15分見てくれたらいいなという思いはずっとあった。
この先どういう仕事をするにしても、その気持ちは忘れないようにしたい」
一方、ネットでは放送終了を悲しむ「あまちゃんロス症候群」を訴える視聴者が続出。
症状は深刻化しているようだ。では、宮藤さん自身は?
「僕自身、喪失感はありますが、まだ完全に自分の中で“終わっていない”。
これから別の作品を作る中で『あまちゃん』の影響を感じた時、実感がわいてくるのかな。
これほど自分の中に残る作品って、これまでにないですよ」
【プロフィル】宮藤官九郎(くどう・かんくろう) 昭和45年、宮城県出身。
脚本家、俳優、映画監督などで幅広く活躍。脚本の代表作にドラマ「木更津キャッツアイ」
「タイガー&ドラゴン」のほか、平成14年に映画「GO」で日本アカデミー賞最優秀脚本賞、
22年にドラマ「うぬぼれ刑事(デカ)」で向田邦子賞。
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宮藤官九郎さん「あまちゃん」への思い 自分の中で「終わっていない」
9月28日の放送で完結したNHK連続テレビ小説「あまちゃん」。
東日本大震災に見舞われた東北・岩手の「北三陸」を主な舞台にした物語は幅広い支持を集め、
社会現象にもなった。
原作と脚本を担当した宮藤官九郎さん(43)に、ドラマに込めた思いを聞いた。(三品貴志)
「(震災で)登場人物の誰かが亡くなるという描き方もあったと思う。
でも、やらなかった。スタッフとさんざん話し合って、悩んだ末の結論。
これ以外ないと思ったけれど、不安でした」
9月初旬の第23週から、平成23年に起きた東日本大震災と、その後を描いた。
視聴者もやがて訪れる「悲劇」を知り、予感していた展開だけに、重圧も大きかったようだ。
震災当日、東京で翌日のライブの準備をしていた主人公、アキ(能年玲奈)らは、
被害を伝えるテレビを呆然(ぼうぜん)と見つめる。一方、アキの親友、ユイ(橋本愛)は
「北鉄」のトンネル内で被災。
その外に出た瞬間、故郷の惨状を目の当たりにする…。
ただ、実際の津波映像や直接的な表現はほとんど登場せず、
自然の猛威は模型を使うなど、あくまで間接的に表現した。
「日本中の人がそれぞれの立場で体験した“大事件”だからこそ、みんなが納得する、
総括するような描き方はできないと諦めていた。
ただ、自分が覚えているあの時の『気分』を、正直に描こうと思ったんです」
◆希望描くために
宮藤さんが注力したのは、圧倒的な現実を一度にのみ込めない個人の戸惑いや心の揺らぎだった。
震災を機に結婚を決めた女優の鈴鹿ひろ美(薬師丸ひろ子)に、アキの母、春子(小泉今日子)は
「何でもかんでも(震災に結びつけて)」と毒づく。
北三陸に戻ったアキは、被災地で心の傷を負ったユイとすれ違う-。
海岸にがれきを運び直して撮影したり、「北鉄」のモデルとなった三陸鉄道が震災5日後に
一部運転を再開したことを再現したりと、リアルさも追求した。
「希望や、人々がどう立ち上がっていくかを描きたかった。
(震災描写は)正解だとは思っていないけれど、
今はあれでよかったと思っています」と晴れ晴れとした表情を見せる。
◆みんなが「主役」
放送前の「サラッと始まり、サラッと終わると思っていた」という予想とは裏腹に、
ドラマ人気は拡大し、アキたちが驚いた時に発する「じぇじぇじぇ」は流行語にもなった。
インターネットでは音楽や伏線、パロディーといった小ネタ探しや考察が数多く共有された。
小ネタのほとんどは脚本執筆前、スタッフとともに北三陸のモデルとなった岩手県久慈市を訪れた体験を
“原点”として広がっていったという。
「『じぇ』をはじめ、北鉄も、南部もぐりも、まめぶも、琥珀(こはく)も、その時にみんなで面白がったもの。
そこからエピソードや人物のカラーが広がっていった。
(小ネタが)功を奏したとすれば、スタッフが崩れそうなバランスをとってくれたからだと思う」
宮藤さんなりのアイドル観も込めた。
「自分にとってのアイドルがいれば元気になるし、頑張ろうと思う。地域へのエールにもなる。
でも、狭い『業界もの』にはしたくなかったから、アイドルを描くための壮大な前振りとして、海女があった」と明かす。
宮藤さんは能年さんを「アキを演じるために生まれてきたようだ」と激賞。
ほかの出演者についても「自分がワキ(脇役)だと思っている人はいない。
みんな主役として生きている。
役者さんがそういう風に演じてくれたから、僕の発想にも返ってきた」とたたえる。
◆あまロス深刻化
放送中、東北の知人や視聴者から作品を喜ぶ声が数多く寄せられたという。
「東北の人たちがゲラゲラ笑いながら15分見てくれたらいいなという思いはずっとあった。
この先どういう仕事をするにしても、その気持ちは忘れないようにしたい」
一方、ネットでは放送終了を悲しむ「あまちゃんロス症候群」を訴える視聴者が続出。
症状は深刻化しているようだ。では、宮藤さん自身は?
「僕自身、喪失感はありますが、まだ完全に自分の中で“終わっていない”。
これから別の作品を作る中で『あまちゃん』の影響を感じた時、実感がわいてくるのかな。
これほど自分の中に残る作品って、これまでにないですよ」
【プロフィル】宮藤官九郎(くどう・かんくろう) 昭和45年、宮城県出身。
脚本家、俳優、映画監督などで幅広く活躍。脚本の代表作にドラマ「木更津キャッツアイ」
「タイガー&ドラゴン」のほか、平成14年に映画「GO」で日本アカデミー賞最優秀脚本賞、
22年にドラマ「うぬぼれ刑事(デカ)」で向田邦子賞。
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