オーディフィル公式ブログ (趣味の小部屋)

スピーカー工房「オーディフィル(AudiFill)」の公式ブログ。
リアルで心地よい音の【ひのきスピーカー】を製作中。

フルレンジスピーカーの長所と短所

2018年07月07日 08時22分55秒 | AudiFill 情報
ところにより強い雨が降っていますね。
週末はオーディオでゆっくり過ごすのも良さそうです。

さて、今日は
「フルレンジスピーカーの長所と短所」というお題で、お伝えしようと思います。

市販のスピーカーの多くは、2way以上の構成、
つまり「ウーハー」と「ツイーター」による2wayスピーカーが大半を占めています。

その一方で、オーディフィルのスピーカーは、
現在は「フルレンジ」方式のみとなっています。

そこで、フルレンジを作る身として、
その方式の良し悪しについて、書いてみようと思います。






フルレンジの長所 その1
「時間軸方向の正確さ」


フルレンジスピーカーは、2wayよりずっとシンプルな方式です。

音が出るユニットが一つ。
ネットワーク回路も入らないことが多いです。

そのため、特に時間軸方向で、
アンプから送られてきた信号を、そのまま音にする能力に優れていると言われています。

音の波形を忠実に再現するには、まずは時間軸を整えてやることが大切。
楽器のリアリティや、ボーカルの音像感は、まさに「時間軸」がしっかりしているかが勝負になってくるでしょうか。

フルレンジ方式は、そのシンプルさゆえに、
フォーカスの合った、リアルな音になりやすいのです。





フルレンジの短所 その1
「レンジが狭い」


一方で、短所としては、
「高音」と「低音」に専用のユニットをもつ2wayスピーカーと比べると、
低音、高音それぞれの音域が狭くなる、ということがあります。

古典的なフルレンジは、とくに顕著でして、
「声の帯域が再生できれば十分」という
割り切った使い方をされることもしばしばです。

ただ、最近のフルレンジユニット、
特に「PARC Audio」や「マークオーディオ」の製品は、
2wayにも匹敵するような、高域と低域の伸びを持っています。

これらのメーカーのフルレンジは、
かなり低音を出しやすい16cm口径クラスでも、
十分に伸びやかな高域特性を持たせており、
一般家庭で音楽を鑑賞するうえで、過不足のない帯域を確保できていると考えています。

とはいっても、やはりフルレンジはフルレンジ。
20kHz以上の超高域がもたらす、潤い感や、豊かな質感を求めると、
ツイーターを搭載する2wayに分があると感じています。



フルレンジの長所 その2
「点音源」


フルレンジスピーカーは、音が出るところが一つです。
それゆえに、「点音源」と呼ばれる、
ステレオ再生において理想的な状態に近づくことになります。



2wayのように、二つの音源から音が出てくるスピーカーは、
とくに近接試聴において、その違和感を感じやすいとされています。

また、2way派が主張する優れた周波数特性も、
垂直方向がズレると、一気に崩れてしまいます。
(2つのユニットからの距離が変わり、位相が合わなくなるため)

そうした観点から、
フルレンジは、小さな部屋での試聴に最適
と言えるかもしれません。

8畳未満のオーディオルームでの近接試聴では、
フルレンジの点音源メリットは大きくなると感じています。



フルレンジの短所 その2
「各種の歪み(ひずみ)」


フルレンジスピーカーは、その一つの振動板から全体域の音を出すため、
どこかしらで歪っぽい音が出ることがあります。

そして、どんなに優れたフルレンジユニットでも、
「ドップラー歪」からは逃れることができません。

ドップラー歪というのは、低域信号で大きく揺れ動く振動板から、
高域信号を同時に出した場合、低域信号の揺れによるドップラー効果で高域に歪が出ることです。

試聴会のような広い会場で、
パイプオルガン(低音)とバイオリン(高音)の入っているソースを鳴らすと、
耳ですぐに分かるぐらいのドップラー歪がでることがあります。

とはいっても、このドップラー歪は、
一般家庭で鳴らす音量では、まず耳にすることはありません。

振動板の振幅限界近くまで鳴らさなければ、
ドップラー歪は、まず問題になることはないと考えています。

一般家庭での音量で気になる歪があるとすれば、
「分割振動」に基づくものでしょう。

2wayのように帯域を分けているスピーカーに比べ、
フルレンジは、コーン紙の分割振動を積極的に使って、
高域を伸ばしてやる必要があります。

それゆえに、固有の音色が付くことがあり、
それとリスナーの好みが合わないと、「歪」と感じるようです。

逆に、その固有の音色と、リスナーの好みが一致すると、
「魅力的な再生音」だとか「音の旨味」とも感じられます。

真空管アンプは、計測値では歪が多いのですが、
その音色に魅了される人が多い、という話も、これと同じですね。

一概に【歪=悪】とはいえないというのが、
オーディオの奥深いところかもしれません。



フルレンジの長所 その3
「ユニットのクオリティ1」


これは余り議論されることはないのですが、
2wayとフルレンジでは、ユニット一つにかけられる予算が大きく異なります。

2wayの場合、「ウーハー」「ネットワーク」「ツイーター」の
三つに限られた予算を割り振ることになるのですが、

フルレンジの場合は、フルレンジユニット一つに、
すべての予算を投じることができます。



そのため、特に安価な部類のスピーカーでは、
下手に2wayにするより、フルレンジとして集中投資をする方が、
結果的にハイクオリティな音が手に入ることも多いのです。

ただ、残念なことに、量産型の市販スピーカーでは、
たとえ安価な製品でも「見た目」を重視した結果として、
2wayが選択される例も多々あるようです。

オーディフィルのスピーカーは、
音質本位で「フルレンジ」を選択しているので、
その値段や外見からは想像できない音に驚かれるかと思います。





フルレンジの短所 その3
「ユニットのクオリティ2」


これは、フルレンジか2wayのどちらが原理的に優れるか、という観点ではなく、
ある種の市場原理を含めた話になってきます。

「ウーハー」「ツイーター」の組み合わせが、現在のスピーカーの主流であり、
特に海外のユニットメーカーで、製品開発が積極的に行われています。

優れたハイエンドスピーカーに搭載されるために開発された技術が、
ウーハーやツイーター単品の設計にも展開され、
結果的に2way構成の場合のほうが、優れたユニットが豊富に存在する、ということがあります。

先ほど、「予算が限られる場合はフルレンジが有利」とお話ししましたが、
逆に「予算が十分に確保できる場合は、2wayが有利」とも考えています。

どの程度で、予算が十分というか...については、
左右のユニット合計で、3万円前後が境目になると考えています。

フルレンジなら、1本 1万5千円。
まあまあな高級フルレンジユニットが手に入りますね。

2wayなら、ウーハー7千円、ツイーター5千円、ネットワーク3千円(片チャンネル)でしょうか。
CP比に優れる新興国製のユニットと、緩急をわきまえたネットワーク構成で、ぎりぎり行けるところでしょう。




さて、こうして2wayとフルレンジを比べてみましたが、
まだまだ長所短所はあるかもしれませんね。

オーディフィルとしては、
価格・用途・製品コンセプトから、
今までフルレンジを選んできましたが...

いよいよ、待望の2way機の開発を行うことにしました!
今年の秋ごろの公開に向けて、少しづつ進めていこうと思います。

また進捗があれば、こちらのブログでも報告していく予定ですので、
ぜひともお楽しみに!




2021.03.17追記
記事投稿から3年が経ちましたが、フルレンジスピーカーの立ち位置は変わりませんね。 新しい潮流としては、イヤホンやヘッドフォンに親しんだ方が、デスクトップオーディオにフルレンジスピーカーを選ぶ姿を見るようになったことでしょうか。

フルレンジの1番の良さは、そのストレートな音色。 無色透明かどうかはさておき、音の魅力がポーンと飛んでくる魅力とでも言えば良いでしょうか。
制約の多いオーディオの場合、音の広がりやレンジ感を伸ばすのは至難のわざです。 そんなとき、フルレンジの気持ちいい鳴りっぷりに身を委ねてみるのも、一興なのではないでしょうか。

自作を含めフルレンジは、以前より新製品の発表ペースは落ちたように感じます。 しかし、そんな今だからこそ、お気に入りの逸品を見つけて、心ゆくまで堪能できるゆとりが生まれているかもしれません。

(追記 終 )








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2 コメント

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位相の変化は聴き取ることができます (磨仏)
2020-03-24 22:18:17
http://www.oyama-ct.ac.jp/tosyo/kiyou/kiyou40/009kobayashiyukio.pdf
返信する
Unknown (Unknown)
2019-11-17 19:22:30
人間の耳は波形を聞けるようにできてないから、
「波形
「(周波数の違う音同士の)位相
とかに考えを巡らせても無駄だよ。
返信する

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