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気ままに生活してるシニアの残日録

山本文緒「無人島のふたり」を読む

2024年11月29日 | 読書

他の方のブログを読んで山本文緒著「無人島のふたり(120日以上生きなくちゃ日記)」(新潮社、2022年10月刊)という本があることを知り読んでみた、ページ数が少ないので2時間くらいで読了できる

本の題名は著者が夫君と一緒に闘病中の自分たちがまるで無人島で暮らしている感じがしたことによるもの、また、120日は余命宣告された日数である

女性作家の山本文緒さん(2001年「プラナリア」 で直木賞受賞受賞)は2021年4月に膵臓がんと診断され、その時既にステージ4bだった、治療方法はなく、抗がん剤で進行を遅らせることしかできない状態になり、余命4か月と言われる

本書は著者がこのような状況で作家として出版を前提に5月24日から亡くなる直前の10月4日までの日々を綴った記録(小説)であり、読者に対するお別れの挨拶である

著者は2006年に軽井沢に引っ越して夫君と一緒に暮らしていた、東京で暮らしていた時と比べ健康的でストレスのない生活、酒もたばこもやらないのに「何で私が?」の思いがあるだろう、しかも母親はまだご存命中だ

病気になった方の闘病記などはあまり読む気がしてこなかった、読めば自分の体の諸症状がすべて悪い病気ではないかと心配になってくるし、暗い気持ちになるからだが、わずかに「わたし、ガンです、ある精神科医の耐病気」(頼藤和寛、文藝春秋)、「がんと闘った科学者の記録」(戸塚洋二、文藝春秋)の2冊だけ読んで良い本だと思った

今回、なぜ山本さんの本を読む気になったのかはっきり思い出せないが、自分がシニア世代になり、いつ同じ境遇になってもおかしくないという思いがあったのかもしれないし、その時の心構えも必要だと思ったのかもしれない

3冊目となる体験記であるが、いずれの本も死を前にしてきちんと記録を残すということができる凄さにただただ感銘するだけである、本だけではなくブログなどで同じようなことをしている普通の人々も少なくないだろうが本当の頭が下がる

本書を読んでわずかな救いは、著者には支えてくれる夫君がいたことだ、これは大きいと思う

山本文緒さんは2021年10月13日に軽井沢の自宅で永眠された、享年58才、安らかにお眠りください



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