◎ホンダN360とホンダCB450
あいかわらず、ホンダN360の話である。実は私も、ホンダN360のオーナーだったことがある。一九七〇年代の中ごろ、立川市内の中古屋で、シルバーのホンダN360のツインキャブ・タイプが売られているのを見て、衝動買いしたのである。ホンダN360は、当時すでに、「旧車」であったが、もちろん、旧車であることが気に入って買い求めたのである。
ボンネットを開けると、ヒレのついた空冷二気筒エンジンが直立している。それぞれの気筒の前方から、下に向かってエキゾートパイプが伸びている。まさに、オートバイのエンジンを載せた軽自動車という感じだった。
運転していて、ハンドリングなどで、問題を感じることは特になかった。むしろ、悪路を走ったときでも、座席にあまり衝撃が伝わらないのには驚いた。おそらく、サスペンションが優れていたのであろう。ただし、ツインキャブのせいか、燃費は良くなかった。
しばらく乗りまわしたあと、解体屋に赴いて、予備のボンネットを入手した。これを黒のツヤ消しスプレーで塗装し、オリジナルのものと付け替えてみたところ、精悍な外観に変貌した。
最近になって、インターネットで知った情報だが、N360のエンジンは、ホンダの高性能バイク、CB450のエンジンをベースにして開発されたものだったらしい。そのころ、ホンダから、CB360、通称「サブロク」という二気筒のバイクが出ていた。当時から最近まで、N360は、このCB360のエンジンを流用したものだろうと、勝手に思いこんでいた。今になって、その誤解を解くことができた次第である。それにしても、インターネット情報というのはありがたい。
CB450と言えば、当時、青梅〈オウメ〉市に住んでいた知人の愛車が、CB450の初期型(クジラ・タンク)であった。この知人から私は、初めて「ホイール・スピン」という言葉を聞いた。CB450は、発進の際など、アクセル操作に気をつけないと、ホイール・スピンが起こるという話だった。N360のエンジンは、このCB450のエンジンの排気量を落とし、DOHCをOHC(SOHC)に改めたものだという。
私のN360は、これといった故障もなく、よく走ってくれたが、一度、いちじるしく出力が落ちたことがあった。ボンネットを開けてみると、インテークマニホールド左右二本のうち、一方のゴムにヒビが入っており、これが不調の原因と思われた。エンジンの激しい振動に、ゴムが耐えきれなくなったのであろう。ヒビの部分を、テープで巻いたりしたが、改善が見られず、インテークマニホールドそのものを、新品と交換することにした。
今はもう営業していないと思うが、国立市のはずれに、多摩ホンダ部品という部品店があった。従業員がふたりしかいない、小さな店だった。そこに赴いて、左右の部品を注文した。交換のあと、アッケなく、エンジンは復調した。
四〇年も前の思い出だが、今、思い返してみると、こんなことで「苦労」していたころが、一番、平和であったのかもしれない。明日は、話題を変える。
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